ダンジョン・ザ・チョイス
8.ブーメランの骸骨
「また分かれ道」
○右:罠がいっぱい。でも見返りも大きい!
真ん中:モンスターがいっぱい。経験値とスキルならここ!
左:お金、魔法スキルが欲しければここしかない!
今回は三つの選択肢。
「左は無いかな」
魔法攻撃が無いのは不安だけれど、戦士の俺が手に入れる意味がどれだけあるのか。金もあるし。
真ん中はモンスターが単純にたくさん出て来るってだけだろう。その結果、経験値とスキルカードが手に入るとも考えられる。
「現状ではスキルの最大修得数が分からないのに、スキルを増やしてもな。やっぱり右かな?」
サブ職業の”盗賊”があるから、罠を回避出来る可能性は高い。
こういう時、仲間が居ると意見の擦り合わせが面倒だよな。
「肉だけだけれど食糧はあるし、やっぱり右だな」
自分一人の責任で済むって、最高ですよね!
右を選択し、洞窟を進む。
また横幅が狭く、天井が低い通路。
入り口からして、どれを選んでも狭い場所で戦わねばならなかっただろう。
「大剣一本だと、こういう時不便だな」
こんな状態でモンスターが居る方に進んで居たら、それだけで詰んでたかも。
最初から選択肢なんて無かったな。
ゴブリンから手に入れた“粗雑な石ナイフ”を左手に隠し持ち、”グレートソード”を右手で水平に掲げながら進んでいく。
”片手持ち”のおかげか、大剣を片手で、それも負担のある持ち方をしていても、大して重く感じない。
さて、この先なにが待ち受けて居るのか。
○盗賊の力で罠を感知しました。
「早速か。罠解除」
ガコンと音が鳴り、床の一部が沈んで、壁の横から複数の槍が突き出し……カランカランと落ちて消えた。
「モンスターに対処して居るときに罠に掛かったら……死ぬな」
HPは無いようだし、急所に当たれば助からないと思った方が良い。
死ななかったとしても、怪我なんざしたくないし。
○盗賊の力で罠を感知しました。
「へ、もう?」
まだほんの数歩しか歩いてないのに……。
「罠解除」
数メートル先の壁から斧のような、ギロチンのような刃が飛び出して消えた。
即死レベルばっかり。
「”盗賊”が無かったら死んでないか?」
この分だと、TPが足りるかどうか。
取り敢えず、TPが半分以下にならないように気を付けよう。
●●●
「フイーっと……どこ行きやがった、アイツ?」
男が、襲い掛かってきたオーガをあっという間に仕留めた。
「隠れるスキルでも持ってんのか?」
クソが!
目付きの悪い槍使いの男が、しつこく私を捜している!
「一発ヤりたかったのになー」
こんなことになるなら、一人で苦しむ方を選べば良かった!
「目障りな男共を先に始末したのは失敗だったかな? まっ先に女の方を拘束するべきだったぜ」
悪魔め! 当たり前のように人を殺しやがって!!
「あの地味な眼鏡女、乳だけは良かったのによ~……やっぱ諦めきれねー!」
男がマントを靡かせて、来た道を引き返す。
「早く……進まなきゃ」
男の足音が聞こえなくなってから岩陰から出て、怪我をした脚を引きずりながら音を出さないように歩く。
フレンドリーに近付いてきたあの男に、パーティーメンバーの二人をあっという間に殺された。
あの手際――今回が初めてじゃない。
「どうしてこんな事に……」
震える手脚に怒りを覚えながら、私はひたすら先を急いだ。
●●●
「罠解除……お!」
ここに来るまでに幾つもの宝箱を見付けたけれど、こんなに高級そうな宝箱は初めてだった。
「強力そうな……杖?」
○”炎のステッキ”を手に入れました。
「俺には合わないか」
ようやく使えそうな物を手に入れたと思ったのに。
「それにしても、罠ばっかりだな」
この二時間程、モンスターはまったく現れず、三十以上の罠を解除していた。
不幸中の幸いは、広い場所に出られた事か。
「全然良さげな物が手に入らないぞ?」
今更、“木の盾”とか“鉄の槍”とか手に入っても困る。
「見返りも大きいって書いてあったけれど、具体的な見返りが分からないんだよな」
見返りが、モンスターと出くわさずに済むとかだったら完全に損だ。
「ッ!?」
妙な気配を感じて、無様に飛び退く!
『キキッ!』
「角が生えたウサギ?」
特徴から判断して、アルミラージって所か。
「面倒だな」
大きさが普通のウサギと大して変わらない。
「フン!!」
『キキッ!?』
アルミラージの脚目掛けて“粗雑な石ナイフ”を投げ、跳び上がった所に大剣による一薙ぎ。
アルミラージは簡単に真っ二つになり、消滅した。
「あれだけ小さいのがたくさん出て来たら、ちょっと厄介だ」
TPが無くても倒せるから、まだマシだけれど。
水を飲んで、罠解除で消費したTPが回復するのを待つ。
とても静かな空間。
静謐な空気に、呑み込まれそうになる。
常に誰かと騒いでいる人間は、この呑み込まれそうになる感覚から目を背けようとしているように思えてしまう。
実際、この空気に浸りすぎると頭がおかしくなってしまいそうだ。
だけど、この空気と向き合っているときほど、ちゃんと生きているって気がして来る。
「行くか」
張り巡らされた罠を解除し、襲い来るアルミラージの集団を退けて、進み続けた。
「……随分大きいな」
台座のような石段の上に、巨大な宝箱が置いてあった。
「罠は……無しか」
チョイスプレートによる罠感知の報告が無い。
「ん? 開かない?」
○鍵が掛かっています。
「こういう時のための鍵開けか」
”盗術”の鍵開けを使用。
「巨大な……ブーメラン?」
○ビッグブーメラン。
○ブーメラン系統の武器を装備するには、特殊なスキルが必要です。
その特殊なスキルを知りたいんですけどね!
「能力グラフを見る限り、グレートソードの数段下か」
どの方面にどれくらい優れているのか、全然分からないけれど。
「鉄の武器よりはかなり強力みたいだし、悪くは無いかもな」
装備出来なかったけれど。
★
本日、四度目の鍵開け。
「今度は斧か」
○豪奢な斧:高く売れます。
ゴッテゴテに、宝石やらが鏤められた斧。
全然実用的じゃない。
「斧って言うよりは鈍器だな」
申し訳程度に刃が生えているようなデザイン。
なぜか能力グラフの一点だけが突き抜けている。
その一点に関しては、グレートソードよりも上だった。
「おもっ!」
全然持ち上げられない。
「この一点は重さを表しているんだな」
この情報が手に入っただけでも儲けものだと思っておこう。
「鉄製よりも上で、予備武器になりそうな剣が欲しいんだけど、まったく手に入らないな」
弓や矢筒なんかは手に入ってるんだけれどなー。
探索を続けると、より一層広い場所に出た。
『盗人が、また現れたか』
ボロボロの黒マントを身に付けた骸骨が、俺を睨みつけてくる。
骨の中に、黒い靄が渦巻いているよう。
「別に盗人では……」
『ここにある物は、わしら獣人から奪い取っていった物であろう! 平和に暮らしておったわしらを殺してな!! 渡さん! 渡さぬぞ!! 貴様らのような盗人に、侵略者に、我等の財宝は渡さぬ!!』
骸骨がマントの下から取り出したのは――ブーメラン。
『くたばれい!!』
グレートソードで切り上げ、威力が落ちたタイミングで掴み取る。
「スティール」
――ダメだ。所有権を奪えない。
『無駄じゃ、盗人!!』
ブーメランが輝き、奴の手に瞬間移動してしまう!?
『フハハハハハハは!! 見たか! これが我等とブーメランの絆なのじゃ!!』
再びブーメランを投げてくる骸骨。
「”壁歩き”」
左にあった壁を水平に駆けながら、ブーメランを躱す。
『ベクトルコントロール』
ブーメランが不可解に軌道を変えたうえ、速度を上げて俺を狙ってきた!?
『なに!?』
大地の盾を作り出し、回転させながら弾く!
「ヒール!」
良い機会なので、”僧侶”の”回復魔法”でアンデッドを葬れるのか試してやる!
『ぐああああああああああああ!!』
ヒールの光に当てられ、骸骨が光に変わっていく。
『許さん! 許さんぞ、侵略者共!!』
「デルタ?」
襲ってきた骸骨は、完全に消滅する瞬間まで……怨嗟の声を発し続けた。
○右:罠がいっぱい。でも見返りも大きい!
真ん中:モンスターがいっぱい。経験値とスキルならここ!
左:お金、魔法スキルが欲しければここしかない!
今回は三つの選択肢。
「左は無いかな」
魔法攻撃が無いのは不安だけれど、戦士の俺が手に入れる意味がどれだけあるのか。金もあるし。
真ん中はモンスターが単純にたくさん出て来るってだけだろう。その結果、経験値とスキルカードが手に入るとも考えられる。
「現状ではスキルの最大修得数が分からないのに、スキルを増やしてもな。やっぱり右かな?」
サブ職業の”盗賊”があるから、罠を回避出来る可能性は高い。
こういう時、仲間が居ると意見の擦り合わせが面倒だよな。
「肉だけだけれど食糧はあるし、やっぱり右だな」
自分一人の責任で済むって、最高ですよね!
右を選択し、洞窟を進む。
また横幅が狭く、天井が低い通路。
入り口からして、どれを選んでも狭い場所で戦わねばならなかっただろう。
「大剣一本だと、こういう時不便だな」
こんな状態でモンスターが居る方に進んで居たら、それだけで詰んでたかも。
最初から選択肢なんて無かったな。
ゴブリンから手に入れた“粗雑な石ナイフ”を左手に隠し持ち、”グレートソード”を右手で水平に掲げながら進んでいく。
”片手持ち”のおかげか、大剣を片手で、それも負担のある持ち方をしていても、大して重く感じない。
さて、この先なにが待ち受けて居るのか。
○盗賊の力で罠を感知しました。
「早速か。罠解除」
ガコンと音が鳴り、床の一部が沈んで、壁の横から複数の槍が突き出し……カランカランと落ちて消えた。
「モンスターに対処して居るときに罠に掛かったら……死ぬな」
HPは無いようだし、急所に当たれば助からないと思った方が良い。
死ななかったとしても、怪我なんざしたくないし。
○盗賊の力で罠を感知しました。
「へ、もう?」
まだほんの数歩しか歩いてないのに……。
「罠解除」
数メートル先の壁から斧のような、ギロチンのような刃が飛び出して消えた。
即死レベルばっかり。
「”盗賊”が無かったら死んでないか?」
この分だと、TPが足りるかどうか。
取り敢えず、TPが半分以下にならないように気を付けよう。
●●●
「フイーっと……どこ行きやがった、アイツ?」
男が、襲い掛かってきたオーガをあっという間に仕留めた。
「隠れるスキルでも持ってんのか?」
クソが!
目付きの悪い槍使いの男が、しつこく私を捜している!
「一発ヤりたかったのになー」
こんなことになるなら、一人で苦しむ方を選べば良かった!
「目障りな男共を先に始末したのは失敗だったかな? まっ先に女の方を拘束するべきだったぜ」
悪魔め! 当たり前のように人を殺しやがって!!
「あの地味な眼鏡女、乳だけは良かったのによ~……やっぱ諦めきれねー!」
男がマントを靡かせて、来た道を引き返す。
「早く……進まなきゃ」
男の足音が聞こえなくなってから岩陰から出て、怪我をした脚を引きずりながら音を出さないように歩く。
フレンドリーに近付いてきたあの男に、パーティーメンバーの二人をあっという間に殺された。
あの手際――今回が初めてじゃない。
「どうしてこんな事に……」
震える手脚に怒りを覚えながら、私はひたすら先を急いだ。
●●●
「罠解除……お!」
ここに来るまでに幾つもの宝箱を見付けたけれど、こんなに高級そうな宝箱は初めてだった。
「強力そうな……杖?」
○”炎のステッキ”を手に入れました。
「俺には合わないか」
ようやく使えそうな物を手に入れたと思ったのに。
「それにしても、罠ばっかりだな」
この二時間程、モンスターはまったく現れず、三十以上の罠を解除していた。
不幸中の幸いは、広い場所に出られた事か。
「全然良さげな物が手に入らないぞ?」
今更、“木の盾”とか“鉄の槍”とか手に入っても困る。
「見返りも大きいって書いてあったけれど、具体的な見返りが分からないんだよな」
見返りが、モンスターと出くわさずに済むとかだったら完全に損だ。
「ッ!?」
妙な気配を感じて、無様に飛び退く!
『キキッ!』
「角が生えたウサギ?」
特徴から判断して、アルミラージって所か。
「面倒だな」
大きさが普通のウサギと大して変わらない。
「フン!!」
『キキッ!?』
アルミラージの脚目掛けて“粗雑な石ナイフ”を投げ、跳び上がった所に大剣による一薙ぎ。
アルミラージは簡単に真っ二つになり、消滅した。
「あれだけ小さいのがたくさん出て来たら、ちょっと厄介だ」
TPが無くても倒せるから、まだマシだけれど。
水を飲んで、罠解除で消費したTPが回復するのを待つ。
とても静かな空間。
静謐な空気に、呑み込まれそうになる。
常に誰かと騒いでいる人間は、この呑み込まれそうになる感覚から目を背けようとしているように思えてしまう。
実際、この空気に浸りすぎると頭がおかしくなってしまいそうだ。
だけど、この空気と向き合っているときほど、ちゃんと生きているって気がして来る。
「行くか」
張り巡らされた罠を解除し、襲い来るアルミラージの集団を退けて、進み続けた。
「……随分大きいな」
台座のような石段の上に、巨大な宝箱が置いてあった。
「罠は……無しか」
チョイスプレートによる罠感知の報告が無い。
「ん? 開かない?」
○鍵が掛かっています。
「こういう時のための鍵開けか」
”盗術”の鍵開けを使用。
「巨大な……ブーメラン?」
○ビッグブーメラン。
○ブーメラン系統の武器を装備するには、特殊なスキルが必要です。
その特殊なスキルを知りたいんですけどね!
「能力グラフを見る限り、グレートソードの数段下か」
どの方面にどれくらい優れているのか、全然分からないけれど。
「鉄の武器よりはかなり強力みたいだし、悪くは無いかもな」
装備出来なかったけれど。
★
本日、四度目の鍵開け。
「今度は斧か」
○豪奢な斧:高く売れます。
ゴッテゴテに、宝石やらが鏤められた斧。
全然実用的じゃない。
「斧って言うよりは鈍器だな」
申し訳程度に刃が生えているようなデザイン。
なぜか能力グラフの一点だけが突き抜けている。
その一点に関しては、グレートソードよりも上だった。
「おもっ!」
全然持ち上げられない。
「この一点は重さを表しているんだな」
この情報が手に入っただけでも儲けものだと思っておこう。
「鉄製よりも上で、予備武器になりそうな剣が欲しいんだけど、まったく手に入らないな」
弓や矢筒なんかは手に入ってるんだけれどなー。
探索を続けると、より一層広い場所に出た。
『盗人が、また現れたか』
ボロボロの黒マントを身に付けた骸骨が、俺を睨みつけてくる。
骨の中に、黒い靄が渦巻いているよう。
「別に盗人では……」
『ここにある物は、わしら獣人から奪い取っていった物であろう! 平和に暮らしておったわしらを殺してな!! 渡さん! 渡さぬぞ!! 貴様らのような盗人に、侵略者に、我等の財宝は渡さぬ!!』
骸骨がマントの下から取り出したのは――ブーメラン。
『くたばれい!!』
グレートソードで切り上げ、威力が落ちたタイミングで掴み取る。
「スティール」
――ダメだ。所有権を奪えない。
『無駄じゃ、盗人!!』
ブーメランが輝き、奴の手に瞬間移動してしまう!?
『フハハハハハハは!! 見たか! これが我等とブーメランの絆なのじゃ!!』
再びブーメランを投げてくる骸骨。
「”壁歩き”」
左にあった壁を水平に駆けながら、ブーメランを躱す。
『ベクトルコントロール』
ブーメランが不可解に軌道を変えたうえ、速度を上げて俺を狙ってきた!?
『なに!?』
大地の盾を作り出し、回転させながら弾く!
「ヒール!」
良い機会なので、”僧侶”の”回復魔法”でアンデッドを葬れるのか試してやる!
『ぐああああああああああああ!!』
ヒールの光に当てられ、骸骨が光に変わっていく。
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