【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ

第34話 商談

 俺達3人はアバンス商会に寝具を買いに行った。

 アバンス商会に入ると丁度、アイザックさんがいた。
「これは、これはエリアス様にオルガ様。そ、それに疾風…」
「ウゥッン!!」
 アリッサさんを見て、アイザックさんは驚いたように何かを言おうとした。
 しかしアリッサさんの咳払いが、それを遮った。

「こ、これは冒険者ギルドのアリッサ様まで、本日はどの様なご用件で」
「寝具を3人分、買いに来ました」
 俺が代表して言った。

「3人分でしょうか?」
 アイザックさんが、怪訝そうな顔をしている。
「3人で住むことにしたのさ」
 オルガさんが答える。

「さ、3人でですか?それは、それは…」
 それは驚くだろう。
 冒険者でEランクの俺がAランクのオルガさん、受付のアリッサさんと住むというのだから。

「これは皆様、先見の目がおありで。きっとエリアス様は、いずれ名を残されるでしょう」
 何を言っているんだアイザックさん?
 
「あぁ、そうだな。エリアスは、それまで私達で大事に守って行かないと」
 オルガさんが、力強く言う。
 あぁ、やっぱり。
 俺は誰かに守られないと、やって行けないくらい弱いという事か…。

「そうだ、エリアス。アイザックさんに見てもらいなよ。お前が造った木工家具を」
「木工家具でしょうか?」

「あぁ、こう見えてもエリアスは、木工家具が作れるんだ。ほら家にあるやつと同じものを1セット持っているだろう、エリアス見せてあげて」

 なにを言っているんだオルガさんは?
 仕方なく俺はアイザックさんに背を向け、見えない様にストレージの中で『創生魔法』を使い家具を創って行く。

 ストレージ内で作業をしている時は、パソコン画面の操作と同じになる。
 目の前の空間をタップしながら目を動かしている。
 傍から見たら『壊れた』と思われるからだ。

 俺はベッド、4人掛けのテーブル、椅子4つ、タンス、三面鏡ドレッサーと椅子のセット空いているスペースに出した。

「こ、これは…」
 アイザックさんは、家具に驚いている。

「この家具の表面の艶は、なんという見事さか…」
 家具をストレージ内で創る時に、風魔法で表面をツルツルに削っているんだ。

「そしてこの鏡は…」
 するとアリッサさんが自慢げに話し始める。

「これは三面鏡と言って、鏡が前と左右の板に三面に付いているの。そして左右に板を出すと前と左右から、髪型が見えてとても分かりやすいのよ」

「こ、これをぜひ、私に売ってください!!」
 は?なにを?

「分かりました。交渉はエリアス君の秘書である、私アリッサが対応いたします」
 いつから、俺の秘書に?

「私も入るよ」
 そうオルガさんも言いながら、3人で話始めている。

「この家具を定期的に卸して頂けませんかな?」
「いいですよ、それなら柄を少しずつ変えシリーズ化しましょう」
「良いですね、オルガさん。同じものは無いということね」

「そうよアリッサさん、その方が価値があるでしょ?」
「どのくらいのペースで卸して頂けますかな?3~4ヵ月に1度くらいでしょうか?」
「そうね、エリアスは手先が器用だから、月に1度、いいえ2度でも納入可能よ」
「そ、そうですか、それだと値段に困りますな」
「どういうことかしら」
 アリッサさんが聞く。

「3~4ヵ月に1度と、月に2度では付加価値が違うのです」
「あぁ、数が作れない方が高く売れるのね」
「ええ、その通りです」
「それなら、売れたら次を作るのでも良いわよ」
 オルガさんも、それに答える。

「では、そう致しましょう。それで買取の値段ですが…」
「それはないでしょう!」
「では、これくらいで…」
「あと、もう一声!」
「もう、これが限界ですよ」

「「 わかりました!! 」」

 どうやら買取金額が決まったようだ。

「エリアス君、買取金額が決まったわよ。50万で良いわよね?」
 へ?
 アリッサさんが何事も無いかのように言う。

 そんなにもらえるなら、冒険者辞めようかな…。
 今度の指名依頼は王都まで14日くらいで、1日8,000円だから112,000円だし。
 この世界では人件費が安いから、仕方ないけど。


 そして家具は売れたら次を作って納品することになった。
 
「エリアス様達は、どちらの宿にお泊りで?今後の連絡もありますからな」
「あぁ、それなら明日から宿屋ではなく、屋敷に移るから」
 オルガさんが、すかさず答える。
「屋敷を買われたと?」
「『なごみ亭』の並びの屋敷跡だよ」

「あぁ、あの屋敷跡ですか!土地代は安そうですが、改築費が大変そうですな」
「それが改築は、もう終わったよ」
「ええっ、もう終わったと?」
「エリアスは大工仕事が得意で、1人で改築したのさ」

 1人で?

「そ、それは凄いですな。落ち着かれたら、お邪魔してよろしいでしょうか?」
「もちろんよ、いつでも来てくれよ」

 アバンス商会のアイザックさん、オルガさん、アリッサさん3人の間で、話が進んで行く。

 俺は家具を出してから『へ?』しか、声を出していない。
 翻弄される人生か…、なんて。
 この世界に疎い俺の為に、オルガさんやアリッサさんはよく面倒を見てくれる。
 良い出会いがあって良かった。
 



 アバンス商会で寝具を買い、俺達はアリッサさんとそこで分かれようとした。
「これから2人はどうするのかしら?」
「俺とオルガさんは時間があるので、これから果物採取に行こうと思ってます」
「く、果物?!私も行くわ、弓と防具を着るから私の宿屋まで来て」

 そんなに果物が好きなんだ。
「でもアリッサさん大丈夫ですか?森に行くんですよ」
「ギルド職員を侮らないで、みんなAランクレベルだから」
「そ、そうなんですか?凄い!」
 冒険者ギルドに勤めていれば荒くれ者も多い。
 だから受付をするにもレベルが高くないと出来ないのか。
 凄いな!

 それならいいだろうと思い、アリッサさんの泊っている宿屋に寄った。
 すると宿屋と言うより、立派な高級ホテルの様なところだった。

「冒険者ギルドは、よほど給料が良いんだな」
 オルガさんがアリッサさんに言う。
「昔、貯めたお金であって、そのお金で泊っているのよ」
「へ~、豪華なもんだな」
「まあね。じゃあ、ここで少し待っててね」
 そう言われ俺達はロビーで待つことにした。

 しかしアリッサさんはスタイルが良い。
 身長は163~5cmくらいかな。
 そして胸が…。


 しばらくすると銀色の髪を束ねた、アリッサさんが戻って来た。
 レーザーアーマーを着て、やや大ぶりな弓を持ちいかにもエルフて感じだ。

「お待たせ!さあ行きましょうか!」

 そういうアリッサさんは、とても凛々しく見えた。

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