【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ

第30話 屋敷

 私はエリアス君がギルドを出て行くのを見送った。
 そして残ったオルガさんが声を掛けた。

「ねえ、アリッサさん」
「なんでしょうか?オルガさん」
「エリアス君のことなんだけど」
「エリアス君のこと?」
「えぇ、そうよ。彼の事が気になる?」

「な、なにを言っているのよ。あなたとお付き合いしているのでしょう?」
「う、うん。そうだと思うよ。でもまだ言葉では、言ってもらってないけど」
 えっ!言葉は無いって、どこから始まったの?普通逆じゃないの?
「獣人の私は助けられた恩に報い、強さに引かれるけど独占したいとは思わない」
「そ、そうなの(それで、したのね?エリアス様君て、案外…)」
「変なこと考えてない?口に出さなくても、気持ちは分かるものよ」
「い、いえ、別に」

「それじゃあちょっと聞くけど、今日は何時に仕事は終わるの?」
「17時だけど、なぜそんなことを」
「仕事終わりにちょっと付き合わない?」
「どう言うこと?」
「魔法に興味があり追及している人なら、良いものが見れるわよ」
「良いものて?」
「長生きの森妖精エルフでも、見たこともないような魔法よ」
「な、なぜエルフだとわかったの」

「虎猫族の私の鼻を侮らないで。種族によって匂いが微妙に違うのよ」
「そ、そうなの。でもこのことは黙っていてね」
「誰に?エリアス君に?おばあちゃん超えだと、分かると困る??」
「ち!違うわよ。でもエリアス君絡みの話しみたいね」
「えぇ、そうよ」
「分かったわ、付き合うから。帰りに待ってて」


 私にそう言うと、オルガさんはギルドを出て行った。
 エルフ族は比較的、何かに没頭する種族だ。
 多分それは長生きな分、探求心が強いのだろう。
 他の仲間も薬草などの研究に没頭して、何百年も森の奥から出て来ない人もいる。
 時間があり余り過ぎている。
 だから没頭できる何かが無いと。

 そして魔法の鍛錬、習得も欠かさない。
 でもこうして街中に住んで仕事をしていると、時間に追われ最近では魔法の鍛錬できないのが事実ね。
 腕が鈍ってしまうわ。



 17時になり私は冒険者ギルドのドアを開けた。
 すると建物の壁に寄り掛かったオルガさんが待っていた。

「ごめんね、待った?」
「いいや、今来たところさ」
 こ、これはデートじゃないよね?

 そして私達は歩き出す。

 オルガさんは獣人だけって、締まった筋肉質の体をしている。
 動きも俊敏そうだ。
 髪は茶色のショートカット。
 頭の上にちょこんと茶色の耳が載っている。
 ボーイッシュで女性の冒険者からの人気は高い。

 なにを思っているんだ私は?

 そして繁華街を過ぎ、宿屋の前に立ち止まった。
「ここが私とエリアス君が泊っている宿屋よ」
 宿屋を教えて何の意味があるのだろうか?

「6日後の指名依頼までここに滞在しているの」
 はあ?
 そう言ってオルガさんはまた歩き出した。
 少し歩くと立派な大きな宮殿の様な豪邸が見えて来た。

 あれ?
 こんなところにあったかな?
 時々この道を通るけど、数日前はなかったはずだわ。
 どこの公爵様の別邸?
 塀も3m以上あり高く立派な作りだ。
 でも門番が居ない。

「さあ、中に入りましょう」
 そう言ってオルガさんは、その豪邸を指差した。

 え?

 門は鉄製らしく片門で、幅2mくらい高さ3mくらいの大きさだ。
 オルガさんは、門のところに鍵を入れ回した。

 なぜオルガさんが、この家の鍵を?
 カチ!と音がして門の鍵が開く。

 片手で門を押して中に入る。
 門は静かに開いた。

 庭も整備されており、門から屋敷まで石畳が引かれている。
 そしてその建物は、見たことも無いような作りの3階建てだった。

 1階から3階までの各部屋には、ガラス窓になっている。
 いったいどれほどのお金が掛かっているのだろう?
 ガラスは加工が難しくとても高価だ。
 私が両手を広げた幅くらいでも、眼が飛び出るくらいのお金は掛かるはず。
 それをこんなにふんだんに使うなんて。


「オルガさん、ここは…」
「まあ、それより屋敷の中を見て」
 そう言われ私は屋敷の中を案内される。

 正面は大きな階段があり、左右はフロアになっている。
 一階はホール、大階段、食堂、客間、台所、洗濯場、風呂場。
 そして各水場には蛇口と言う物があり、捻ると水とお湯が出た。
 これで毎日、お風呂に入れるそうだ。

 二階、三階は部屋が七部屋ずつと各階にもトイレが付いている。
 驚くのはトイレで陶器で座れるような作りになっており、後ろにタンクがおり水か流れるようになっている。
 その中にフロートを浮かせ水が無くなると、水属性の魔石から水が出てタンクを満たすようになっている。
 そして水圧を利用しノズルが出て、水が出るようなっていた。

 アウッ!
 不覚にも初めて使った時に、私は声を出してしまった。
 ウォシュレットの素晴らしさをこの日、知ってしまったのだ。

 各部屋には照明の魔道具が付いている。
 こんな贅沢なお屋敷は見たことない。

 どこの皇族のお屋敷なの?
 いいえ、お金を出せば建てられる限度を超えて言うわ。
 そんなところの建物の鍵を、どうしてオルガさんは持っているの?
 実は獣人世界の令嬢?
 それ以前に、どうして私をここに案内したの?

 オルガさんが口を開く。
「依頼が終わり戻ってきたら、私とエリアス君はここに住むのよ」

 えっ?!

 そして耳を疑うような言葉を更に聞いた。

「ここはね、エリアス君が魔法で作った建物なの。信じられる?」

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