【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ

第29話 後悔先に

 目が覚めるとオルガさんの顔が横にあった。
 そして俺達は、服を着ていなかった。

 や、やってしまった。
 後悔先に立たず、と言うが。

 屋敷を創った、それは覚えている。
 今までこんなに魔力を使ったことがなかったからか、意識が朦朧としていた。

 意識が断片的になり、宿屋のベッドに横になっているのは分かった。
 その時、オルガさんの顔がとても近かった。
 いつもの幻想だと思い、つい思っていたことをしてしまった。

 尻尾を掴み猫耳を噛みことだ。

 昔飼っていた猫は茶トラ模様で可愛かったな。
 オルガさんも茶トラ模様だった。

 そして転生の時に精神年齢も亡くなった時の35歳から、徐々に15歳になるようお願いしていたが。
 まさかこんなにも、この年齢の時は欲望が強かったとは思わなかった。

 そしてオルガさんの顔を見るとまた、可愛くなりおでこにキスをした。
 耳をモフモフし脚を絡め、ほっぺもグリグリする。

 そんなことをしていると、オルガさんが目を覚ました。
「お、おはよう」
 俺はつい、言ってしまった。
「おはよう」
 オルガさんも答える。
 顔が赤くなって可愛い。

「可愛い」
「エ、エリアス君の馬鹿!」
 オルガさんは照れている。

「ねえエリアス君」
「なあにオルガさん」
「私のこと嫌いになった?」
「なんで?」
「だって私、鍛えているから筋肉質で…」
「い、いや。そんなことないよ。筋肉質な女の人は好きだよ」
「ほんと、嬉しい~」
 その言い方だと俺がフェチみたいだけど。
 オルガさんは、嬉しかったのか抱き着いてきた。

「冒険者ギルドに行ってみないか。もうアバンス商会からの依頼があると思うから」
「そうね、行ってみましょうか」

 そう言えば、今は何時だろう?

 俺達は服を着て2階の部屋から1階に降りて来た。
 受付にはこの宿屋『なごみ亭』の主人ビルさんが居た。

「ビルさん。今、何時くらいですか?」
「そうだな、エリアス君達が10時過ぎに戻ってきて、2時間くらいの間は物凄い大きな声がして、それから2時間くらい静かだったから今は14時くらいかな」
「え??」
 ゴ~~ン!ゴ~~ン!
 大聖堂の14時の鐘が鳴る。
「ほらな」

 聞こえていたのか。
 俺とオルガさんは2人して赤くなった。

「まあ、夜中よりは良いがここには10歳の子がいるから、ほどほどに頼むぜ」
 アンナちゃんの事ですね。
 分かりました。

 そしてビルさんに、小声で言われた。
「しかし、若いっていいよな。俺なんて2時間ぶっ続けなんて、もう無理だからな」
 あぁ、そんなにしていたのですね。
 みなさん、すみません。



 俺達は冒険者ギルドに向かっている。

 ギルドに入ると、俺は受付のアリッサさんのところに並んだ。
 もちろんオルガさんも一緒だ。

「こんにちは、アリッサさん」
「こんにちは、エリアス君。ところで、その腕に付けている重りはな~に?」
 言われて見ると、オルガさんと腕を組んでいた。

『やったわね、あなた達』
『え、何の事かしら?』
 一度そう言う関係になると、普通にしているつもりでも周りは気付くものらしい。

『この、筋肉女が!!』
『なによ、おばさん。早い者勝ちよ』

 オルガさんはなぜか、勝ち誇ったような顔をしている。
 どうしたんだろう?
 
「俺達2人に指名依頼が来ているはずですが」
「ええ、あるわよ。アバンス商会からの指名依頼ね」
「『赤い翼』も一緒でしょうか?」
「そうよ。彼らはもう先に受けたわ。6日後の朝、アバンス商会に集合よ」
「報酬はおいくらでしょうか?」
「ギルドで手数料を2割引かれるから。凄いわエリアス君。Eランクで1日8,000円なんて」
 へ?
 8,000円ですか?
「オルガさんは、隣のコルネールの所で受付してくださいね」
 なぜかオルガさんには、冷たい感じで言う。
「わかったわ」
 オルガさんはそう言って、隣の受付のコルネールさんの所に移動した。

「こんにちは、オルガさんはAランクの指名依頼なので1日15,000円です」
 コルネールさんは、とても凄いことのように言う。
 確かに平均日給3,000円のこの世界なら、高いと思うけど。

 それなら果物を採取して売っていた方がいいのでは?
 普通にこの前、果物を売って17,000円だったけど。

 俺が不満そうな顔をしているのが分かったのか、オルガさんに言われた。
「エリアス君、Eランクで1日8,000円なら破格値よ」
「そうなんですか?」
「えぇ、よく考えてみて。私達、冒険者はなんの後ろ盾もなく、働くところが無いからやっているのよ。ある意味、後が無いの。その後が無い仕事で平均日給3,000円の、倍以上の金額がもらえるなんて凄いことなのよ」

 俺は勘違いをしていた。
 生前の考えが残ってたのだ。
 前にいた世界では、贅沢さえ言わなければ働くところはあった。
 そして似たような給料の会社が多く、嫌なら辞めて他に行くこともできた。

 だがこの世界は違う。
 産業が発達していない分、仕事が少ないのだ。
 そして就職してもその雇用先が、5年後にあるかどうかも分からない。
 そんな世界なんだ。
 そ、それなのに、俺は…。

「分かったよ、オルガさん」
 俺はそう言うと笑ってみせた。

 冒険者ギルドを出ようとすると、オルガさんはまだ用事があるようだ。
 先に行って、と言われ俺はギルドを出た。

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