第4話　授業中

ここは九木礼町立中学校の敷地内にあるテニスコートである。

現在体育の授業が行われており、体操服を着た九木礼中学校三年一組の生徒達が順次テニスコートで試合を行っていた。

そして試合を終えた少女達が座って話をしていた。

麻衣子が七緒(なお)に言った。

「あーあ、また晴南に負けちゃった！」

すると七緒が麻衣子に言った。

「私なんて晴南にストレート負けだったよ。」

麻衣子が七緒に言った。

「七緒、晴南のレシーブは全力で追いかけないと返せないよ。もっとやる気を出して試合しないと！」

彼女は九良平七緒(くらひらなお)という名前で、九木礼中学三年生である。

黒髪のロングヘアーでぱっちりとした目をしており華奢な体つきだった。

七緒が麻衣子に言った。

「うーん、麻衣子まで晴南みたいな事言わないでよ。私は無駄な事はしない主義なの。相手はあの晴南だったんだよ？勝てる訳ないよ。」

麻衣子が七緒に言った。

「でも試合後半はずっと棒立ちしてただけじゃん。いくらやる気がないって言っても棒立ちはないんじゃない？」

七緒が麻衣子に言った。

「どうせやる気出したって負けるだけ。だったら無駄な体力使わない方がいいよ。」

麻衣子が七緒に言った。

「いや流石にそこまで手を抜いちゃダメよ。晴南にもちゃんとやってて言われたでしょ？」


「ごめん、ごめん。次はちゃんとやるから。・・・・」

七緒そう言うと、うたた寝を始めてしまった。

すると美咲が麻衣子のもとにやって来た。

そして麻衣子に言った。

「ねえねえ、麻衣子。次の試合、拓也(たくや)君と晴南だよ。」

麻衣子が美咲に言った。

「拓也君と晴南か？あの二人だとどっちが強いのかな？」

美咲が麻衣子に言った。

「さすがに拓也君じゃない？確か前回の対戦は拓也君が勝ってたよ。それに拓也君テニス上手いし。」

麻衣子が美咲に言った。

「そうだね、やっぱり拓也君かな？」

テニスコートでは拓也と晴南の試合が始まろとしていた。

晴南の対戦相手は同じクラスメートの松浦拓也(まつうらたくや)であった。

彼は黒髪の長身でがっしりとした体格をしており、顔立ちが良い少年であった。

晴南が拓也に言った。

「拓也、全力できてちょうだい！女だからって手加減しないでよね！」

拓也が晴南に言った。

「晴南、安心しろ。全力で相手をさせてもらう。」

晴南が拓也に言った。

「そうこなくっちゃ！」

二人の激闘が始まった。

晴南がラケットを振り上げて鋭いサーブを打った。

晴南が打ったサーブはラインギリギリの所に入った。

そして拓也も負けじと鋭いレシーブを返した。

更に晴南もそのレシーブを鋭く返した。

拓也はレシーブを返し損ねてボールが外に転がっていった。

先制は晴南だった。

だがすぐに拓也も激しいラリーの末に点を取り返した。

晴南がリードするとすぐに拓也が取り返し、拓也がリードするとすぐに晴南が取り返した。

二人の激しい打ち合いも度々起こり、シーソーゲームの白熱した試合展開が続いた。

そしてどちらもワンゲームづつとり、三ゲーム目の40ー40までやって来た。

その後もアドバンテージを取っては取り返してが続いた。

晴南がアドバンテージを取った。

二人とも全身が汗だくで息も切らしていた。

すると拓也が晴南に言った。

「はあ、はあ、流石は晴南だな。」

晴南が拓也に言った。

「はあ、はあ、拓也も流石ね。」

そして拓也が鋭いサーブを放った。

すると息を切らせながらも晴南が鋭いレシーブを返した。

またしても激しい打ち合いとなった。

しばらく打ち合いが続いた後で、拓也が打ち方を変えてテニスボールをネットの付近に打ってきた。

晴南が慌ててネット付近に全力で駆け寄る。

そしてギリギリのタイミングで駆け寄るとラケットに力を込めて全力でスマッシュを打った。

拓也はこのスマッシュを返す事が出来ずに勝負が決した。

審判をしていた優斗が言った。

「ゲームセット、ツーゲーム先取で晴南の勝ち！」

試合を終えた拓也が、全身汗だくになりながら晴南に言った。

「いやはや、完敗だ、流石は晴南だな。」

こちらも全身汗だくの晴南が拓也に言った。

「ううん、拓也も凄かったよ、負けちゃうかと思った。」

これを見ていた美咲が麻衣子に言った。

「ありゃ、晴南ったらあの拓也君に勝っちゃったよ。」

麻衣子が美咲に言った。

「晴南は凄いわ。」

少女達がそんな話をしていると、授業終了のチャイムが響くのだった。