魔力ゼロの天才、魔法学園に通う下級貴族に転生し無双する
第十話【四重理論複合魔法】
「君。正気かね?」
「何がです?」
「……まぁ、いい。では、やってみたまえ」
俺はリチャードがやったようにゆっくりと魔法陣の中心へと進む。
その間に周囲から失笑が漏れ、嘲笑が聞こえてきた。
その笑いを無視し、中央に立った俺は教師のメルビンに一声かける。
「ところで、この壁はどのくらいの魔法に耐えられるんだ? 六方に書かれた魔法陣が、中の魔法の効果を打ち消しているんだろう?」
「うん? 何の心配をしているのかね? 君たちみたいな初年度の学生にこの壁を壊すだけの魔法は扱えん。さっきのフレア君の魔法を見ただろう? あの魔法でも見たまえ、傷の一つどころか煤もついていない。そもそも不出来な君が心配することじゃない」
「なるほど。もう一つ。俺の杖が無いようだが、知らないか?」
「なんだね! さっきから君は! その口調、その態度! 頭でも打っておかしくなったのかね 君の杖などない! 前に折れてそのままだろうが 」
「そうか。それならそれで問題ない。好きな魔法を唱えていいんだったな?」
「ああ。さっさとしたまえ。どうせいくらデカい口を叩こうが、何も起こらんよ」
肩をすくめるメルビンなど、意識からすでに外れ、俺はこの瞬間にワクワクしていた。
家の中でいくつかの魔法を唱えて確認はしたものの、さすがに部屋の中や屋敷をめちゃくちゃにするわけにはいかないので、周囲に影響がないものや、威力を極力抑えたものしか試していない。
正直、自分でも今の自分がどれくらいの魔法を扱うことができるのかは未知数なのだ。
しかし、試してみたい理論はごまんとある。
メルビンの言葉を信じれば、そうそうこの競技場の壁は破壊されないらしい。
俺は思う存分、自分の思いつく限りの魔法を頭の中で想像し、その中から一つの魔法を選んだ。
「何をやっているのかね? やはり無理だというなら、それでいい。どうせ無駄な時間だ。では、次の者――」
「天の霊王、地の覇王。その身を焦がすは炎姫フレイア。イークス・エクス・マグナ・フレイム――」
メルビンの言葉が終らぬ間に、俺は詠唱を始めていた。
詠唱に合わせて両手をそれぞれ別に動かし、空中に複雑な幾何学模様を刻み込む。
俺が今しているのは、様々な国で学んだ魔法理論を一つに結び付けた複合魔法。
一つ一つでもそれなりの効果が得られるが、相乗効果によりさらにその効果が倍増されるはずだ。
おっと……やはり机上の理論と実践では若干の不具合が生じるらしい。
俺は計四つの理論の複合までで、それ以降を諦めることにした。
この修正は時間があるときにするとしよう。
「フィリオ君……凄い……」
アムレットの声が聞こえ、ふと自分の姿を客観的に見る。
両腕によって刻まれた幾何学模様に挟まれるように、二つの詠唱によって形成された魔力から魔法へと変換する中間体、魔障が溢れ、周囲の空間を大きく歪めていた。
俺はアムレットの方を向き、一度頷くと、右手をまっすぐ壁の方へ向け、魔障から魔法へと昇華させる最後の言葉を唱える。
「燃やし尽くせ、灼熱の業火よ!」
瞬間、全ての視界が真っ白に染まった。
周りからは様々な悲鳴が聞こえる。
轟音、爆発、熱風。
粉塵が舞い、周囲の悲鳴はさらに増す。
「な、何事かね いったい何が起こったというのかね 」
メルビンが見えない視界の中を搔い繰るように腕を必死に動かしながら叫ぶ。
俺は放った瞬間の高揚感を味わいながらも、目の前に広がる惨状に、少しだけ冷や汗をかいていた。
そんな中、リチャードがメルビンに声をかける。
「あの……メルビン先生……」
「何かね 」
「この競技場の壁は壊れないはずなんですよね?」
「そうだ! その声はフレア君だね? 君からそんな当たり前の質問が来るとは思わなかったよ! それがどうしたというのかね 」
いまだに視界が改善しないためか、メルビンの声は荒い。
しかしリチャードはなおも言葉を続けた。
「それじゃあ、メルビン先生……あそこの壁に開いている大きな穴はなんでしょうか……?」
「なんだと な、なんだね これは 」
リチャードの言う通り、俺が魔法を放った壁には、人が三人並んでもまだ余裕のある大きさの穴が開いていた。
不幸中の幸いは、壁の向こうに誰もいなかったし、他の建物もなかったことだろうか。
「何がです?」
「……まぁ、いい。では、やってみたまえ」
俺はリチャードがやったようにゆっくりと魔法陣の中心へと進む。
その間に周囲から失笑が漏れ、嘲笑が聞こえてきた。
その笑いを無視し、中央に立った俺は教師のメルビンに一声かける。
「ところで、この壁はどのくらいの魔法に耐えられるんだ? 六方に書かれた魔法陣が、中の魔法の効果を打ち消しているんだろう?」
「うん? 何の心配をしているのかね? 君たちみたいな初年度の学生にこの壁を壊すだけの魔法は扱えん。さっきのフレア君の魔法を見ただろう? あの魔法でも見たまえ、傷の一つどころか煤もついていない。そもそも不出来な君が心配することじゃない」
「なるほど。もう一つ。俺の杖が無いようだが、知らないか?」
「なんだね! さっきから君は! その口調、その態度! 頭でも打っておかしくなったのかね 君の杖などない! 前に折れてそのままだろうが 」
「そうか。それならそれで問題ない。好きな魔法を唱えていいんだったな?」
「ああ。さっさとしたまえ。どうせいくらデカい口を叩こうが、何も起こらんよ」
肩をすくめるメルビンなど、意識からすでに外れ、俺はこの瞬間にワクワクしていた。
家の中でいくつかの魔法を唱えて確認はしたものの、さすがに部屋の中や屋敷をめちゃくちゃにするわけにはいかないので、周囲に影響がないものや、威力を極力抑えたものしか試していない。
正直、自分でも今の自分がどれくらいの魔法を扱うことができるのかは未知数なのだ。
しかし、試してみたい理論はごまんとある。
メルビンの言葉を信じれば、そうそうこの競技場の壁は破壊されないらしい。
俺は思う存分、自分の思いつく限りの魔法を頭の中で想像し、その中から一つの魔法を選んだ。
「何をやっているのかね? やはり無理だというなら、それでいい。どうせ無駄な時間だ。では、次の者――」
「天の霊王、地の覇王。その身を焦がすは炎姫フレイア。イークス・エクス・マグナ・フレイム――」
メルビンの言葉が終らぬ間に、俺は詠唱を始めていた。
詠唱に合わせて両手をそれぞれ別に動かし、空中に複雑な幾何学模様を刻み込む。
俺が今しているのは、様々な国で学んだ魔法理論を一つに結び付けた複合魔法。
一つ一つでもそれなりの効果が得られるが、相乗効果によりさらにその効果が倍増されるはずだ。
おっと……やはり机上の理論と実践では若干の不具合が生じるらしい。
俺は計四つの理論の複合までで、それ以降を諦めることにした。
この修正は時間があるときにするとしよう。
「フィリオ君……凄い……」
アムレットの声が聞こえ、ふと自分の姿を客観的に見る。
両腕によって刻まれた幾何学模様に挟まれるように、二つの詠唱によって形成された魔力から魔法へと変換する中間体、魔障が溢れ、周囲の空間を大きく歪めていた。
俺はアムレットの方を向き、一度頷くと、右手をまっすぐ壁の方へ向け、魔障から魔法へと昇華させる最後の言葉を唱える。
「燃やし尽くせ、灼熱の業火よ!」
瞬間、全ての視界が真っ白に染まった。
周りからは様々な悲鳴が聞こえる。
轟音、爆発、熱風。
粉塵が舞い、周囲の悲鳴はさらに増す。
「な、何事かね いったい何が起こったというのかね 」
メルビンが見えない視界の中を搔い繰るように腕を必死に動かしながら叫ぶ。
俺は放った瞬間の高揚感を味わいながらも、目の前に広がる惨状に、少しだけ冷や汗をかいていた。
そんな中、リチャードがメルビンに声をかける。
「あの……メルビン先生……」
「何かね 」
「この競技場の壁は壊れないはずなんですよね?」
「そうだ! その声はフレア君だね? 君からそんな当たり前の質問が来るとは思わなかったよ! それがどうしたというのかね 」
いまだに視界が改善しないためか、メルビンの声は荒い。
しかしリチャードはなおも言葉を続けた。
「それじゃあ、メルビン先生……あそこの壁に開いている大きな穴はなんでしょうか……?」
「なんだと な、なんだね これは 」
リチャードの言う通り、俺が魔法を放った壁には、人が三人並んでもまだ余裕のある大きさの穴が開いていた。
不幸中の幸いは、壁の向こうに誰もいなかったし、他の建物もなかったことだろうか。
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