魔力ゼロの天才、魔法学園に通う下級貴族に転生し無双する
第八話【友達第一号】
特に向こうから名乗らなかったので、アムレットの爵位が何なのか今まで知らなかったが、まさか平民だったとは。
いつもの癖ですでにアムレットの魔力量についても、俺は確認済みだった。
その量は優にリチャードのものを超える。
なるほど。
平民たちの中にも特異的に魔力量の多い人物が生まれることはゼロではない。
間違ってもそいつらが力を付け、平民たちの味方にならぬよう、才能のあるものはこっち側に引き込む、というわけか。
この国の支配権力の成り立ち、維持の方法を考えれば、国の政策としては非常に理にかなっていると思うが、きっとリチャード達はそういうことを全く理解できないのだろう。
「おい! 聞こえているのだろう! なんか言ったらどうなんだ? 青虫。それとも、威勢が良かったのは今朝だけで、いつもの自分をやっと思い出したか?」
無視するつもりだったが、リチャードは本当にめんどくさいやつらしい。
俺にかまってもらいたいのか、高貴な自分が自分より劣ると思っている人間に蔑ろされるのが許せないのか、わざわざさらに絡んできた。
仕方がないので、少しだけ返事をしてやることにする。
俺は再びリチャードたちに顔を向けた。
「なんだ、リチャード。俺に話しかけていたのか? 今朝も言ったけど、俺はフィリオ。フィリオ・ペイルだ。ティターニアは一度で覚えられたのに、お前には難しかったのかな?」
「なっ ふ、ふざけるな! お前など青虫で十分だ! それにティターニア様を呼び捨てにするとは何事だ!」
「おかしいな。この学園内では爵位によらず対等。俺が淡爵でティターニアが金爵だろうが、そこは同じなはずだが」
「はっ! さすがの青虫。頭に詰まっているのは脳ではなく草なんだな。建前が本質なわけなどないだろう! この学園でも爵位、もとい魔力量や魔法の実力が高いものが偉いのだ! つまり、金爵に次ぐ赤爵である俺は、青虫なんかよりずっとずーっと偉いってわけだ 」
リチャードの言葉に俺は目を細める。
爵位はどうしようもない。
魔力量も生まれたときから変わることはない。
それは俺の長い人生で証明済みだ。
しかし……魔法の実力は何も魔力量だけで決まるわけではない。
現に俺より魔力量の多いリチャードの放つ火球は、俺が作り出すことのできる火球から見たらゴミみたいなもんだ。
リチャードの態度の図々しさは、自分の魔力量の多さに起因しているのだろうが、それがいつまで保てるものか見ものだな。
「そうか。わざわざ教えてくれてありがとう。見かけによらずいい奴なんだな。そんな偉いリチャード様は、今朝と服装が違うようだが、どこかで汚しでもしたのか? そういえば、高いところは苦手だと助けを求めていたが……」
「う、うるさい! こ、この服はあれだ! 今朝の服は気に入らなかったから、別の服に着替えただけだ!」
「そうだぞ。リチャード様がおもらしするわけないだろう! ちゃんときれいにばれないように始末したわ!」
「ば、馬鹿 い、行くぞ 」
リチャードは顔を真っ赤にしながら食堂から去っていく。
どうでもいいが、リチャードは連れにする相手を少し考えた方がいいんじゃないだろうか。
再び平穏が訪れた俺は、視線をアムレットの方に戻す。
そして、自分がやらかしたことに気がついた。
リチャードがいる間、ずっとアムレットと手を握ったままだったのだ。
「あ、いや。ごめん。なんか変なタイミングであいつらが絡んできたから」
「え? あ、うん。大丈夫。気にしてないから。それよりも……」
俺は慌てて握っていた手を放し、その場を取り繕うとしたが、アムレットはあからさまに落ち込んだ表情をしている。
このくらい感情を明確にしてくれると、人付き合いが苦手な俺でも、相手がどんな気持ちなのかすぐにわかっていいなと思ってしまった。
ただし、相手の感情がわかったからといって、気の利いた言葉をかけられるかは別問題だ。
俺はありきたりな言葉をアムレットに投げかけた。
「どうした?」
「やっぱり私、そんな風に思われてたんだなぁって。知っている? 私達平民が魔力量を測られるのは十六歳の誕生日なの。それまでは、他の子たちと変わらない生活をしていたんだけど、私の魔力量が平民としては凄い量だってわかったとたん、家から連れ出されていきなりこの学園に通えって。家にはもう二度と戻ることはできないし、学園を卒業したら顔も知らない貴族の子供になるんだって」
「ああ、そうみたいだな」
「正直期待と不安で胸がはちきれそうだったんだ。今日朝一番に来たってのもそのせいだし。それで、私を避けるようなそぶりをする人たちを見て。あぁ、私やっぱり場違いなところに来ちゃったんだなぁって。そう思ってたの。やっぱり平民の私が貴族の通う学園にいるなんて変だよね?」
俺はこの国の実情などほとんど知らない。
しかし、今度はアムレットに投げかける言葉はこれしかないと自信をもって言うことができた。
午前中の魔法に関する授業を受けていた彼女の表情を隣で見ていた俺は、すでに答えがわかっている質問をした。
「アムレット。君は魔法は嫌いかい?」
「え? そんなまさか! 魔法は大好きだよ 私が住んでた村では大人も含めて私が一番上手に魔法を使えたの! えへへ。みんな凄い凄いって褒めてくれて嬉しいんだぁ。今思えば、魔力量が人より高かったおかげで、私が凄いわけでもなんでもなかったんだけど」
「それは違うぞ。魔力量はあくまでタンクに過ぎない。魔法を唱えるために必要なのものはむしろもっと他にたくさんある。ここにいれば大好きな魔法が学べるぞ。それだけで、居る理由になるだろう。変だと言うやつがいたら実力を見せつければいい」
「あはは。まさかフィリオ君からそんな言葉が出てくるなんて思いもよらなかったよ。うん。私はもっと魔法について知りたい」
「よく言った。ならばいい方法を知っているぞ。さっき学園のことを教えるのは無理だと言ったが、魔法については言ってなかっただろう?」
「え? まさか、フィリオ君が教えてくれるの? 魔法」
「もちろんだ。だって俺らは『友人』だろ?」
こうして、俺は復帰、アムレットは編入一日目にして、互いに記念すべき友人第一号を作ったのだ。
いつもの癖ですでにアムレットの魔力量についても、俺は確認済みだった。
その量は優にリチャードのものを超える。
なるほど。
平民たちの中にも特異的に魔力量の多い人物が生まれることはゼロではない。
間違ってもそいつらが力を付け、平民たちの味方にならぬよう、才能のあるものはこっち側に引き込む、というわけか。
この国の支配権力の成り立ち、維持の方法を考えれば、国の政策としては非常に理にかなっていると思うが、きっとリチャード達はそういうことを全く理解できないのだろう。
「おい! 聞こえているのだろう! なんか言ったらどうなんだ? 青虫。それとも、威勢が良かったのは今朝だけで、いつもの自分をやっと思い出したか?」
無視するつもりだったが、リチャードは本当にめんどくさいやつらしい。
俺にかまってもらいたいのか、高貴な自分が自分より劣ると思っている人間に蔑ろされるのが許せないのか、わざわざさらに絡んできた。
仕方がないので、少しだけ返事をしてやることにする。
俺は再びリチャードたちに顔を向けた。
「なんだ、リチャード。俺に話しかけていたのか? 今朝も言ったけど、俺はフィリオ。フィリオ・ペイルだ。ティターニアは一度で覚えられたのに、お前には難しかったのかな?」
「なっ ふ、ふざけるな! お前など青虫で十分だ! それにティターニア様を呼び捨てにするとは何事だ!」
「おかしいな。この学園内では爵位によらず対等。俺が淡爵でティターニアが金爵だろうが、そこは同じなはずだが」
「はっ! さすがの青虫。頭に詰まっているのは脳ではなく草なんだな。建前が本質なわけなどないだろう! この学園でも爵位、もとい魔力量や魔法の実力が高いものが偉いのだ! つまり、金爵に次ぐ赤爵である俺は、青虫なんかよりずっとずーっと偉いってわけだ 」
リチャードの言葉に俺は目を細める。
爵位はどうしようもない。
魔力量も生まれたときから変わることはない。
それは俺の長い人生で証明済みだ。
しかし……魔法の実力は何も魔力量だけで決まるわけではない。
現に俺より魔力量の多いリチャードの放つ火球は、俺が作り出すことのできる火球から見たらゴミみたいなもんだ。
リチャードの態度の図々しさは、自分の魔力量の多さに起因しているのだろうが、それがいつまで保てるものか見ものだな。
「そうか。わざわざ教えてくれてありがとう。見かけによらずいい奴なんだな。そんな偉いリチャード様は、今朝と服装が違うようだが、どこかで汚しでもしたのか? そういえば、高いところは苦手だと助けを求めていたが……」
「う、うるさい! こ、この服はあれだ! 今朝の服は気に入らなかったから、別の服に着替えただけだ!」
「そうだぞ。リチャード様がおもらしするわけないだろう! ちゃんときれいにばれないように始末したわ!」
「ば、馬鹿 い、行くぞ 」
リチャードは顔を真っ赤にしながら食堂から去っていく。
どうでもいいが、リチャードは連れにする相手を少し考えた方がいいんじゃないだろうか。
再び平穏が訪れた俺は、視線をアムレットの方に戻す。
そして、自分がやらかしたことに気がついた。
リチャードがいる間、ずっとアムレットと手を握ったままだったのだ。
「あ、いや。ごめん。なんか変なタイミングであいつらが絡んできたから」
「え? あ、うん。大丈夫。気にしてないから。それよりも……」
俺は慌てて握っていた手を放し、その場を取り繕うとしたが、アムレットはあからさまに落ち込んだ表情をしている。
このくらい感情を明確にしてくれると、人付き合いが苦手な俺でも、相手がどんな気持ちなのかすぐにわかっていいなと思ってしまった。
ただし、相手の感情がわかったからといって、気の利いた言葉をかけられるかは別問題だ。
俺はありきたりな言葉をアムレットに投げかけた。
「どうした?」
「やっぱり私、そんな風に思われてたんだなぁって。知っている? 私達平民が魔力量を測られるのは十六歳の誕生日なの。それまでは、他の子たちと変わらない生活をしていたんだけど、私の魔力量が平民としては凄い量だってわかったとたん、家から連れ出されていきなりこの学園に通えって。家にはもう二度と戻ることはできないし、学園を卒業したら顔も知らない貴族の子供になるんだって」
「ああ、そうみたいだな」
「正直期待と不安で胸がはちきれそうだったんだ。今日朝一番に来たってのもそのせいだし。それで、私を避けるようなそぶりをする人たちを見て。あぁ、私やっぱり場違いなところに来ちゃったんだなぁって。そう思ってたの。やっぱり平民の私が貴族の通う学園にいるなんて変だよね?」
俺はこの国の実情などほとんど知らない。
しかし、今度はアムレットに投げかける言葉はこれしかないと自信をもって言うことができた。
午前中の魔法に関する授業を受けていた彼女の表情を隣で見ていた俺は、すでに答えがわかっている質問をした。
「アムレット。君は魔法は嫌いかい?」
「え? そんなまさか! 魔法は大好きだよ 私が住んでた村では大人も含めて私が一番上手に魔法を使えたの! えへへ。みんな凄い凄いって褒めてくれて嬉しいんだぁ。今思えば、魔力量が人より高かったおかげで、私が凄いわけでもなんでもなかったんだけど」
「それは違うぞ。魔力量はあくまでタンクに過ぎない。魔法を唱えるために必要なのものはむしろもっと他にたくさんある。ここにいれば大好きな魔法が学べるぞ。それだけで、居る理由になるだろう。変だと言うやつがいたら実力を見せつければいい」
「あはは。まさかフィリオ君からそんな言葉が出てくるなんて思いもよらなかったよ。うん。私はもっと魔法について知りたい」
「よく言った。ならばいい方法を知っているぞ。さっき学園のことを教えるのは無理だと言ったが、魔法については言ってなかっただろう?」
「え? まさか、フィリオ君が教えてくれるの? 魔法」
「もちろんだ。だって俺らは『友人』だろ?」
こうして、俺は復帰、アムレットは編入一日目にして、互いに記念すべき友人第一号を作ったのだ。
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