父ちゃんと呼ばれるまで

ナカムラ

新しい生活

 彼も、子供達もゼーゼーいいながら、帰ってきた。
彼は、言った。「お前達の親は、どんな奴だ?名字は、なんていうんだ?」
長男らしき男の子は、言った。「僕は、長男の雄太(ゆうた)、次男の広太(こうた)三男の和太(かずた)に、末っ子の花子(はなこ)。親は、男と逃げたとおり、とんでもない奴だ。」
彼は、また、いらいらしながら、聞いた。「お前達の名字はなんだって聞いてるんだ。」
長男の雄太は、言った。「名字は、絶対に、言わない。調べて親に返すつもりだろう。絶対に言わない。あんな親こっちから捨ててやる。」
そういうと、雄太は、目に涙が滲んだ。末っ子の花子は、わーんと、泣き出した。
彼は、困ったように、慌てて言った。「わかった。わかった。もう、聞かないよ。それより、このアパートは、壁が、薄いんだ。そんなわんわん泣くな。」
すると、雄太は、花子をなだめた。花子は、しくしく泣いたが、しばらくして、泣き止んだ。
彼は、また、聞いた。「お前達、それぞれ何歳だ?」
雄太が、説明した。「僕は、14歳、広太は、13歳、和太は、12歳、花子は、10歳だよ。」
こうして、孤独だった男、忠と、子供達の新しい生活が、始まった。

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