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金髪騎士はオレの嫁

オンスタイン

9話 「正体」

「ここなら、積もる話も出来そうね」

  赤髪の美人ことエナさんに連れられて、俺とラルちゃんはビルの屋上へとたどり着いた。日はもうすっかり落ちてしまっている。

「ほんとに良かったんですか? 虎姐置き去りにして」

「いいのよ、虎子はそういう扱い慣れてるから」

  カジノでの一件のあと、久々に友人と会えたことが嬉しかったのか、虎姐が『みんなで飲もう』と言い出した。そんな事をしにきたんじゃないと断りたかったのだが、肝心のエナさんが誘いを受けてしまったが故に、俺とラルちゃんも付き合わざるを得なくなってしまった……。

  しかし、それからおおよそ1時間が経ったころに状況は変わった。虎姐がお手洗いに行くと席を離れたのをいいことに、この隙に3人で抜け出さないかとエナさんが提案をしてきたのだ。断る理由もなくその案にのった俺たちは、今こうして屋上まで逃げてきたわけである。

「虎姐には申し訳ないが、ようやくこの時が来た。真、お前のおかげだ」

  満足そうに呟くと、ラルちゃんはこちらに優しく微笑んでくれた。あぁ、嫌々定例会に参加したかいがあった……。

「あとは任せてくれ」

「うん、頑張って……!」

  あとは当事者同士の話。ラルちゃんに協力しているとは言っても俺はあくまで部外者だ。黙って2人の行く末を見守るとしよう。

「エナ殿といったか。あなたはこの国の人間ではないのだな?」

「ええ。あなたと同じ境遇よ、ラルちゃん」

  初対面だというのに、この馴れ馴れしい感じ。虎姐にそっくりだ……。

「どうやってこちらの世界に来た? 魔王にやられたのか?」

「いいえ、自分で来たのよ。あの世界から逃げ出すためにね」

「に、逃げ出す……? なぜだ?」

「別に大した理由はないの。この世界の方が、居心地がいいと思っただけ。───ねぇ、1つ聞いていい?」

  女が突然、声のトーンを低くして言った。

「君のとなりにいるその男の子、誰だかわかってるの?」

  瞬時にラルちゃんがこちらを見る。なんというか……すごく嫌な予感がする。

「エナ殿は真をご存知だったのか?」

「知ってるもなにも、───そいつ魔人よ?」

─────魔人?

俺が……?

「ふっ、なるほど。たしかにこの者は魔王に似た容姿をしているが、魔人と呼ぶには程遠い存在だ。心配する必要はないぞ」

  それを聞いたエナさんは、怪訝そうに眉をひそめていた。俺をかばってくれているラルちゃんに対して、不信感を抱くように。

「……信じてないのかしら? いいわ、今ここで証明してあげる」

  女はそう告げると、腕の先をこちらに向けそのまま一度だけ指をパチンと鳴らしてみせた。

  一瞬なにか光のようなものが彼女の指先から飛び出してきたように見えた途端、俺の左胸にとんでもない激痛がはしった。

「うぐっ……! あぁぁーッッ!!」

「真っ!?───貴様、魔術師だったのか……!!」

  絶叫しながら崩れこむ俺を見て、ラルちゃんが強く女を睨みつける。

  なんだよこれ……銃かなんかで撃たれたみたいだ……!

  経験したことのない痛みに、体は恐怖で支配され、呼吸も満足にできなかった。しかし、それだけの傷を負っているというのに、なぜか血は一滴も流れていない……。

「今私が放ったのは、三元素の中では最弱の風属性魔法。魔物に対して効果はあるけど、ただの人間なら赤子に撃っても影響はほとんどない。騎士でもそれくらいは知っているでしょ?」

  痛みに耐えかねながらも、その話を聞いてゾッとする。こんなものを赤子に撃ったら間違いなく死んでしまうだろう。なのに、影響はほとんどないだと……?

「要するに君は人間じゃないの。あっちの世界で生まれた、デルカ国王子ヘリオス=デュークの双子の兄。それが君の正体なんだから」

「……ちょっと待てよ。なんなんだよその話……意味わかんねえよ!!」

  俺が人間じゃなくて、魔王の双子の兄だなんて……そんなことあるはずがない!

「───真、やはりお前は……私を騙していたのだな」

  まったく頭の理解が追いつかない状況の中で、ラルちゃんはいつぞやに見た憎悪の眼差しで俺を睨んだ。

「ち、違うよっ!! ラルちゃん、これはあの人が意味のわからない嘘をついてるだけで__」

「嘘ではない!! あいつが語ったことは、今のお前を見ればすべて合点がいく……! 結局お前は、私の敵だったのだ」

「───なんでだよ……? 一度は信じてくれたのに、なんでそうやって裏切るんだよ!?」

「……っ! 裏切ったのは、お前の方だろう……!」

  憎悪から悲しみに変わる彼女の顔を見て、俺はいつの間にか涙を流していた。大好きな君との関係が、目に見えて崩れていくことに耐えられなかった。

「───今度こそ終わりだ……憎き魔人め」

  髪の毛を鷲掴みにされて強引に上へと引っ張られる。視界の先には、重く据えられた彼女の拳があった。

  死ぬのか……俺。

  不思議と怖くはなかった。あまりの絶望に体が死を受け入れていた。魔人は死んだあと、ちゃんと天国にいけるのだろうか? こんな悪そうな名前だと、地獄行きになってしまうのだろうか?

  死ぬ間際にしてはあまりに呑気な考え事をする自分に嫌気がさし、俺は迫り来る拳を前に目を閉じた。


「───その子を殺せば、厄災が起こるわよ?」

 
 
  俺の顔を打ち抜かんとする拳が、その言葉でピタリと止まる。

「なに……?」

「魔人はその体内に魔力を宿してるの。内蔵量は個人差があるけど、肉体が死ねば宿主の体を抜け出してさまよい始める。厄災が起こるのは、死んだ魔人から抜け出た魔力に釣られて、魔物が大量に集まってくるからよ」

「……もしその話が本当なら、4年前に起こった厄災も、魔人の死によってもたらされたものということか……?」

「ええ。逆に言えば、魔人が死なない限りあの惨劇は起こらない」

「……ふざけた話だ」

  2人の間でそんな会話が流れたあと、ラルちゃんは躊躇う様子を見せながらも、ゆっくりと俺を解放した。

「今だけは生かしておいてやる……。だが、事情が変われば容赦なく殺すからな。そのときは覚悟しておけ」

「____」

  何も言葉は出なかった。恐怖と悲しみが入り混じった感情に心が支配され、俺はただ首を縦に振った。
  
「あなた達が向こうの世界に戻りたいというのなら、私が力を貸してあげる。でもその代わり、絶対にこっちの世界を危険にさらすようなことはしないで。私にとっての居場所はもう、ここしかないの」

「───分かった」

  少女が頷くと、赤髪の女は踵を返して俺たちの横を通っていく。

「それじゃあまたね2人とも。初対面なのに、こんな話をして悪かったわ。特に真くん、痛い思いさせてごめんなさいね」

  そう言い残して、エナさんはビルの階段を降りていった。

  










  

  









  






























  

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