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金髪騎士はオレの嫁

オンスタイン

6話 「異世界」

  ちょうど2人とも夕飯を食べ終えた頃のこと。俺は誤解がとけたことを機に、彼女のことを色々と聞こうと思った。

「ラルちゃんって外国人だよね? なんでこの街に来たの?」

「わ、私は自分でここに来たわけじゃない!」

  いきなり怒鳴るラルちゃんに俺は肩を震わせた。反射的に「ごめん!」と謝罪の言葉が飛び出る。

「いや……いきなり怒鳴りつけて悪かった」

  意外にもラルちゃんは素直に謝ってくれた。が、しかし二人の間にはなんとも言えない気まづい空気が流れつつあった。

「真、1つ聞いてもいいか……?」

「えっ? う、うん!」

  深刻な顔をしたラルちゃんを前にして、体中になんともいえない緊張がはしる。

「ここはどこなんだ? なんという国でなんという街だ?」

「ど、どこって……日本の首都、東京だよ? 東京・渋谷区」

  あまりに予想外の質問で唖然としたが、俺はしっかりと答えた。それなのに、ラルちゃんの顔は一層暗くなった。

「なるほどな……やっと確証がもてた」

  彼女はひとりでにそう呟いた。

「なぁ、もし私が異世界から来た人間だと言ったら、お前は信じるか?」

「い、異世界……!?」

  思わず、同じ言葉を返してしまった。異世界から来たってそんな……でもこの子がこんなとこで嘘をつくとも思えない。

「異世界って、どんな?」

「どんなって……こことは何もかも違うところだ」

「それじゃあ、ざっくりしすぎてて分からないよ」

  そんなに説明の仕方が難しいのか、彼女は困り果てたような顔を浮かべている。

「い、一から説明した方が良さそうだな……長くなるが、聞いてくれるか?」

  俺は黙ってうなずいた。正直いきなりこんな話になって、少し混乱しているが、ラルちゃんが話してくれるなら、真剣に聞くとしよう。




  そこは、人々が魔物という脅威に支配された世界だった。いつ、どこから現れたか分からない魔物という存在。やつらの圧倒的な力に生態系のバランスは崩れ去り食物連鎖の頂点であるはずの人間もその力の前には為す術がなかった。私の故郷であるブルタニアもかつては魔物に支配されていたという。

  そして時は流れ、人々は残された隠れ蓑の中で、徐々に魔物に対抗しうるすべを見つけていった。中でも火・水・木の自然の三大元素を自身の体を媒体にして操り超越した力を生み出す『魔法』というものは魔物の力にも対抗できる人類の強力な武器となり、希望となった。
人類はそれらを駆使して、魔物に対して徐々に優勢となっていき、自分たちの領域を広げていった。今まで平和とは無縁だった人々たちがようやく少しの平穏を手にすることが出来たのだ。

  だが、そんな中で人々の間にはある噂がながれていた。魔物たちを指揮する王のような存在がどこかにいると。
当時、ブルタニアの騎士団にいた私は根も葉もないその噂を信じ、追い続けた。

  そして結果的に王は存在した。驚いたのは、魔王の正体がブルタニアの北にあるデルカ国の王子へリオスであることだった。長く人を苦しめた魔物の親玉は人そのものだったのである。

  私は迷わず魔王を倒すことを選んだ。安易な考えだが、やつを倒せばすべての魔物が消滅すると勝手に思い込んでいたからだ。自分の手で、魔物という脅威に終止符を打てるなら命も惜しくないと思い上がっていた。

  それが結果的にこのザマだ。私は魔王に敗れ、命も取られないまま、このよく分からない世界に飛ばされてしまったわけだ。



「な、なるほど。すごい壮大な話だね」

  異世界と聞いてなんとなくそういう設定なのかと予想していたが、改めて聞いてみるとスケールのでかい話だ。

「ありえない話だったか? この世界はどうにも勝手が違うようだからな」

「まぁ確かに、非現実的ではある……かな。でも__」

  魔物がどうとか、超越した力だとか、どれもこの世界とは無縁のものだ。でもきっと作り話じゃない、彼女が話すからそう思える。

「俺は信じるよ、ラルちゃんの話。見ての通り、俺は頼りない男だけど……君が困ってるなら、力になりたい!」

  そう言うと、彼女はなんだか照れくさそうにそっぽを向いてしまった。

「い、意外と話のわかるやつなんだな……! 餌付けしたかいがあったというものだ……」

「えっ? 餌付け……?」

  もしかして、さっきの夕食のことを言っているのだろうか?

「ちょっと待った! 確かにさっきの料理はすごく美味しかったけど、別にそれで贔屓ひいきしてるわけじゃ……!」

「そ、そんな事は分かっている! 冗談が通じないやつめ……」

「ご、ごめん」

  ラルちゃんは本日何度目かも分からないため息をつく。しかし、その顔はどことなく笑っているように見えた。

「私は、なんとしてでも元の世界に帰りたい。しかし、今はその手立てがまったく見つからないのだ……。い、一緒に、探してくれるか?」

  心配げに尋ねる彼女に、俺は大きく頷いた。断る理由なんてない。

「もちろん探すさ。大好きな君のためなら、喜んで」

「……!! ひ、一言余計だ!」

  これが俺の思い描く理想に近づいているのかは分からない。それでも、俺と彼女の出会いは、これまでの平凡な日常を少しずつ変えようとしていた。

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