ひざまずけ、礼

ko-suke

第1章87話 ただ1つの解決策を




不審者騒動から数日後。学校での不審者の噂は、僕が襲われた日からパッタリとなくなった。ポストにはお礼の手紙が入っていた。

だが、ヤツは退治されたわけでも、ましてや改心したわけでもない。ただ見境なしに目をつけるのをやめただけにすぎないのだ。

その証拠に・・・あれから毎日ヤツに狙われている。学校の帰り道、1人になった瞬間を見計らってヤツは現れる。実際のところ、それで被害にあったことは1度もないのだが、こうも毎日となると、めんどくなってくる。

退治しようにも、あの変態に佐和さんを近づけたくないのもあるし、ましてや紅き街が開くのが一瞬で、2人で入る余裕などない。現状、毎日撃退するしか手立てがないのだ。

僕は放課後の秘密基地で、そのことを佐和さんに相談した。

佐和「毎日じゃあ、比影くんも気が休まらないでしょ。なんとか退治できるといいんだけど・・・」

比影「そうなんだけどね・・・なかなか現実は厳しいよなぁ。」

佐和「今は撃退できてるからいいけど、もし撃退に失敗なんかしたら・・・その・・・」

比影「一巻の終わりだろうね。今までのこともあるから、恨みもすごいだろうし。紅き街へ乗り込むのも一苦労だしなぁ・・・」

そう、そこも心配の種だ。今まで撃退出来てるからって、これからもずっと上手くいくとは限らない。

油断しているところを襲われたり、武器を使われたり、家を特定されて寝てるところを襲われたり・・・そんなことがあれば、文字通り骨抜きにされるだろう。

だからこそ、早めに手を打たなければならない・・・が、そう上手くいかないのが現実。ヤツは僕1人の時に、ある区間でしか現れない。誰かが一緒だったりすると、出てこないのだ。

だから、出てきたところを捕らえて、佐和さんと一緒に紅き街へ乗り込み退治する、という方法は取れない。どうしたものか・・・。

比影「なんとか長時間、紅き街にヤツがいる状態を保てないかなぁ。一瞬かつ短時間じゃあ、あの言葉すら唱えられないし・・・」

佐和「そうよねぇ・・・うん?」

と、佐和さんが何かに気づいた様子。

比影「佐和さん?どうしたの?」

佐和「・・・確認なんだけどさ、その不審者は瞬間的に紅き街を出現させて、こっちの世界で襲ってくるんだよね?いわば、紅き街を一種のポータルのように使ってると。」

比影「う、うん。」

佐和「で、いつも返り討ちにあって、また紅き街に消える、と。」

比影「うん、合ってる・・・けど、それがどうしたの?」

佐和「・・・ならさ」

佐和さんはなんとも言えない顔で言った。

佐和「こっちの世界で退治すりゃいいんじゃない?」

比影「・・・あ」

佐和さんの一言により、場から音が消えたような感覚に陥った。


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