ひざまずけ、礼
第1章82話 その者、奇妙につき
それから1時間近く経ち、最終下校時間10分前を示唆する音楽が鳴り出した。
僕は読んでいた本を閉じ、図書館を後にする。佐和さんと別れたあと、まだまだ時間があったため、図書室で本を読んで時間を潰すことにしたのだ。
いやぁ、本読んでると時間忘れるね。周りなんて見えなくなるし。いいものだねほんと。
と、余談はそのくらいにして、本題に入ろう。玄関口から出て正門に向かうと、正門の外のすぐそばに、人影が見えた。
正門から出ていく生徒をじっと見つめている。間違いない、奴が報告のあった不審者だ。見た感じ、性別は男性、オタクっぽい若者といったところか。
だが、ここである違和感に気づいた。生徒のほとんどが、その目線を気にしていないのだ。
不審者のほうは、それはもう獲物を見定めるかのごとく、ジーッと見つめてきている。そんな場面に遭遇したなら、普通ならメモ用紙をくれた人のように気味悪がるか、避けようとする人が多いだろう。
だが、普通に不審者のそばを通るし、見られている側も全然気にも止めていない。みんなスルースキル完凸済みなのかな?ある意味、異常な光景だった。
というかそもそも、何故こんなに目撃してそうな人が多いのにも関わらず、学校で報告もなければ、ウチへの依頼も1件だけだったのだろうか。これなら、もっと居てもいいはずだし、大事になってるはず。
変に思いながらも、ずっと玄関口にいる訳にもいかないため、そのまま正門へと歩く。その不審者を観察しながら。その結果、もうひとつの違和感に気づくことになる。それは、不審者の目線。
この時間に下校する人の男女比は、ほぼ五分と言ったところ。つまり、女子もそれなりにいるのだが・・・やつの目線は、明らかに「男子生徒」を見ていた。この時点で嫌な予感がしたのだが、とりあえずそのまま正門へと歩く。
すると、不審者の目線が僕へと移った。で、運の悪いことに、奴と目が合ってしまった。やつは目を光らせた。どうやら、ターゲットロックオンされてしまったらしい。
正門を出ると、不審者は後ろをついてきた。最初は遠くからだったが、ドンドンと近づいてきているのがわかった。
さすがに家に案内はしたくなかったため、ある程度のところで立ち止まる。すると物陰に隠れてしまったため、声を上げた。
比影「後ろついてきてるのはわかってますよ、不審者さん。いい加減、正体現したらどうです?」
すると、不審者は物陰から出てきた。・・・が。
不審者「ふ、ふへ、ふへへへへ・・・」
比影「」
無視してればよかったと、ここにきて後悔した。
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