ひざまずけ、礼
第1章28話 一か八か
比影「はぁっ!はあっ!・・・はぁぁぁ・・・」
佐和「ひ、比影くん!?大丈夫?」
何とか紅き街を脱出した僕は、肩で息をするような状況だった。まさか、ラジコンが破壊されるとは思わなんだ。
佐和「い、いったい何があったの!?どんな化け物だったの!?」
佐和さんが心配そうに聞いてくるが、答えられるほどに体力が残っていない。僕は息も絶え絶えの状態で、あるものを佐和さんに差し出した。
佐和「え?これ・・・小型のカメラ?」
比影「・・・映像・・・一応・・・これでも見れるから・・・」
僕はスマホのケーブルをカメラに差す。カメラの映像が、スマホに映り出した。
佐和さんが動画を見ている間、僕は休憩。いやぁ、普段あんなに全力疾走する場面なんてないから、めっちゃくちゃ疲れちゃったよ。普段からもうすこし、スタミナをつけるトレーニングするべきかもなぁ。
1分程度で動画は終了したようで、佐和さんは僕にカメラとスマホを返した。・・・その手は、震えていた。
佐和「なに・・・?あの化け物・・・。」
比影「おそらく、イノシシと闘牛を掛け合わせた化け物かな。突進にステ全振りしたみたいな見た目だったし、実際にその突進でラジコンがこんなだからね。」
佐和「ありゃりゃ・・・これは新しいやつ考えなきゃだね。」
比影「だね。だけど今はそれより、やつをどう倒すか考えないと・・・」
佐和「うん、そうだね。・・・と、比影くんすごい汗だね、ちょっとまってて。」
佐和さんはそう言い、身につけていたポシェットのようなものから、ハンカチを取りだした。
佐和「これ使って。」
比影「あぁ、ありがと・・・」
そう言って、赤のハンカチを受け取り・・・いや、待てよ?赤のハンカチ・・・これは。
比影「ねぇ、このハンカチ佐和さんの大事なものだったりしない?」
佐和「え?あぁ、気にしてくれてるの?大丈夫、100均の安物だし、同じやつあと何個か持ってるから。」
比影「そっか・・・これなら」
佐和「・・・?どういうこと?」
比影「佐和さん、僕に1つ作戦があるんだけど。しかも、上手く行けばこの場で倒せる程のね。」
佐和「えっ、ホントなのそれ!?教えて教えて!」
僕は即興で考えた作戦を、佐和さんに伝える。ただそれは、危険も伴うものだった。
今までのように確実性のあるものでは無いうえ、下手すれば死も覚悟しなければならない作戦。まぁ、もう半分死んでるんだけどさ。
だけど、それくらいの覚悟で挑まなければならない、そんなものであることは確かだった。
佐和「でもそれじゃあ、失敗したら・・・!」
比影「重症、酷ければお陀仏。」
佐和「そんな危険な賭けしなくても、もっと確実な案が出るって!今は帰ろう!?」
比影「確かにそうかもしれない。だけど、前のゴリラと違って、永遠に暴れてる感じだから、いつ消えるか分からない。そんな状態で放っておいたら、もしかしたら犠牲が出るかもしれない。」
佐和「でも、それじゃあ・・・!」
比影「大丈夫、佐和さんに危険な目は合わせない。危険な役目は全部僕が担うよ。」
佐和「だから心配なの!貴方1人にだけ苦しい思いなんて、させたくない!」
比影「佐和さん・・・」
佐和さんは、本当に優しい人だ。こんな僕でも、本気で心配してくれる。だけど・・・僕にも、譲れないものはある。僕自身のためにも、みんなの為にも。
比影「僕を、信じて。」
佐和さんを真っ直ぐに見て、そう言う。佐和さんは少し考える仕草をしたあと、ため息をついて言った。
佐和「・・・止めても無駄みたいだね。わかった、私も全力でサポートする。2人で、攻略しよう。」
比影「・・・うん!」
僕達は準備もそこそこに、紅き街へと入っていくのであった。
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