ひざまずけ、礼
第1章25話 親に勝るものはなし
佐和さんと一緒に勉強を始めて、早2時間半が経とうとしている。15分くらい休憩したけど、それを加味しても2時間以上勉強を続けていることになる。
勉強を始めたのが9時半くらいだから・・・つまり今の時間は。
ぐー・・・ぅ。
佐和「ひゃっ・・・あ、あうう・・・。」
佐和さんが顔を俯かせる。どうやら、さっき聞こえたのは、佐和さんのお腹の音らしい。
・・・ただ、この状況どうフォローすべきか。本人は相当恥ずかしいだろうし、そっとしておくべきか?いや、ここは勇気をだして声をかけようそうしよう。
比影「・・・もうそんな時間かぁ、時が経つのは早いね。」
佐和「そんなおじいちゃんみたいな・・・って!私のお腹の音を時計代わりにするな!」
はい、失敗。怒らせちゃったよ・・・。
比影「ごめんごめん、ついね。僕もお腹すいてきたし・・・あ」
ふと、あることを思いつく。ここは僕の家で、下には親がいる。どうせバレてるんだ、今更関係あるか。
それに、母さんは佐和さんのことを彼女かなにかと思ってるみたいだし、佐和さんのためにもちゃんと本当のことを言っておかないと。
比影「ちょっとここで待っててもらえる?」
佐和「え?えぇ、いいけど・・・」
僕は佐和さんを部屋に残し、ひとり1階へと降りる。・・・いや、正確には降りようとした。そこで、お盆を持って2階へと上がってこようとする親と遭遇したのだ。
母親「比影?飲み物か何か?」
比影「あぁ、いや・・・それなに?」
母親「なにって、お昼ご飯だけど?親子丼作ったの。」
比影「僕の目の錯覚かな、お盆の上には2個あるように見えるよ?」
母親「あんたは何を言ってるの?2個置いてるんだもの、2個に見えるに決まってるでしょう?」
比影「・・・ぼく、佐和さんの分頼んだっけ?」
母親「頼まれなくても作るわよ、比影の彼女さんだもの。まずは姑として料理の腕を見せてあげようって、ね?」
比影「ね?じゃないよ!そもそも僕と佐和さんはそんな関係じゃ・・・!」
母親「はいはい。それを抜きにしても、お客さんにだけご飯を出さない訳にも行かないでしょう?」
ほんと、よくできた母親だこと。我が母なから末恐ろしいほどの状況把握能力である。出来ることなら見習いたいな、紅き街攻略に役立ちそうだし。
母親「で、食べるの?食べないの?」
比影「食べるよ。どの道、佐和さんの分まで作ってもらおうと思ってたんだ。もう作ってあるなら僕持ってくよ。」
母親「ほんと?じゃあお願いね。・・・彼女さんによろしくね?」
比影「だから彼女じゃねーよ!」
母親「はいはい、ふふふ・・・」
幾つになっても母親には勝てそうにないと、つくづく思った僕なのだった。
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