Break it down

ピンクッティ

米軍の下見

 今、福岡県で起きている暴動事件に関して日本に駐留している在日米軍は表向きは内戦扱いと言うことで内戦不干渉として軍の派遣をしない姿勢でいた。しかし、自衛隊側から見せられたゾンビ化した市民の写真を見せられてから日本駐留の軍部達は完全に興味を示している。
 今回は正規の部隊ではない秘密部隊を送り込むことを検討していた。
 日米混同で絡む事件の証拠隠滅を図るなど悪事に手を染めてでも任務を遂行していた害虫駆除部隊を送り込むことを決意する。
 ほとんど東アジア系の男性で編成されており、薄かれ濃いかれ、大陸や半島の血が入っていることを告げれば闇応募出来る非合法部隊だった。
 害虫駆除部隊の要員であるオ・チンティンは通名は蛙永蛸彦と名乗っており、実際はモンゴルや華人の血が薄く混じっている在日朝鮮人だった。思想が共産にも資本にも囚われない無政府主義な性格だったためにエントリーできた一人である。
 軍での脱走未遂事件も起こすとんでもないぐらいにぶっ飛んだ思考回路を持ったチンティンは一般社会で底辺生活を満喫しているところ、エージェントに呼び込まれて今回の任務に参加することになった。
 今回の任務は凶暴化した化け物の姿を写真撮ったり動画を撮ることで最悪な状況になれば戦闘も可能ということになっている。
 他のメンバーは韓国系アメリカ人や米韓ハーフ、日系アメリカ人、朝鮮系日本人などがいて彼らは日米両国の社会に通用できない俗に言う社会不適合者の集まりだった。
 中には軍刑務所から高額報酬と釈放条件に入隊をさせられた者までいる。
 土台人(工作員の協力者)が用意したアジトに連れ込まれていくが場所は旧教団施設でその中で装備のチェックをしていた。
 チンティンはM4A1アサルトライフルにアタッチメントを付けて、照準しやすいようにT1ドットサイトを装着する。ハンドガンはCZ75を装備してホルスターに仕舞った。
 身体に身につける装具は米軍放出品のサスペンダーやピストルベルト、米軍払い下げマガジンポーチでリュックサックはアリスバックパックと呼ばれる代物でそれもやはり90年代米軍スタイルの物ばかりだった。
 「よく作戦を頭に叩き込んでおけよ。理解できないならメモを取るようにしろ。」
日本人の士官はチンティン達に念押しに言う。
 「作戦を果たすのも大事だがまず、奴らの特徴からだ。基本的に身体中に紫色の血管が浮き出ているから分かりやすい。それから表情はまるで薬物中毒者だな。ドローンで観察した限り、噛まれた奴は有無言わさず奴らの仲間入り。噛まれないようにしておけ。」
日本人士官はさらに隔離されている場所にいる凶暴化した奴らについての説明を始めた。
 今回の任務は生存者の救出及び現場の情報収集である。同僚であり日系人のヤマト・タイガと日韓混血の山森アトリ、米韓混血のマーク・ロー・ハグリッドと共に現地へ向かうことになり、それぞれ自分が使いやすい装備を携帯して装備点検を始めた。
 アジトは軍の基地にあるわけでもなくペーパー工場であるため軍人達もスーツやつなぎの作業着姿になっている。士官は黒いスーツで訪問営業員を装っており、中にいる仲間達は汚れて良い私服姿だった。
 他にもアジトがあり、別の班も存在しているが全員、鉢合わせていない。工場も面積が限られているため、流石に呼び寄せるのも無理があったからだった。
 「それとあんな悲惨な地獄だと人間の本性が出るからな。職務を放棄して逃げようとか略奪者側に寝返ろうなんて馬鹿な事を考えるなよ。」
中国系アメリカ人の士官はニヤつきながら言う。
 「日韓のアジアハーフのこいつとあの大陸系が足引っ張って死にそうだな。完全に死亡フラグだし。」
白人よりの混血であるマークはチンティンとアトリを小馬鹿にして皮肉めいたことを言って茶化す。
 「そのアジアンが死んでもお前も死ぬかもだぞ。明日は我が身だ。準備終わったからには危機感を持て。」
日本人士官はマークに忠告をした。
 人が見てないうちにメンバーはすぐにバンに乗り込んで現場へ向かうことにする。
 全員、体力温存のために寝ていて完全にゲーム感覚気分だった。
 それからしばらくしてチェックポイントに到達して全員、裏通路から潜伏してからアトリが消音器付きのUZIサブマシンガンで警察官を仕留めた。
 そしてチンティンもM4A1を構えながら進んで他も後に続いていく。
 「福岡有数のうちのこの町もだいぶ荒れ果てているな。他もそうなんだろうけど。」
アトリはチンティンに話しかけた。
 「間違いねえ。」
チンティンも一言を返す。
 通りを進むと乗り捨てられたパトカーがあり、中を調べるためにガラスの中を覗き込んだ。特にこれと良いものはなく、運転席には警察官の自決死体が座席に横たわるようにしているのが見つかった。
 「車もどっちにしろ移動距離もだが車種代も値段がかかるし、何よりも保険会社儲かるんじゃないか?」
マークは笑いながら話した。
 「いや、払う奴いなくなってむしろ赤字だろ。」
アトリはそう答えた。
 そして建物の中に入って安全確認をする。
 進み方は市街地戦のように死角に気をつけながら動いて凶暴化した奴らがいないことを確認した。
 「まだゾンビと出くわしてないな。まあ、接近戦はごめんだが。」
チンティンはそう言って無人の空間にある扉を閉める。
 それから飲み屋街になっている場所に向かい警戒していると遠くから人影が見えてきた。
 チンティンは双眼鏡で確かめると明らかにドローンで見た化け物と同様の姿だった。
 とりあえず動画を支給されたビデオカメラで撮影して近づいて来たところをマークがM45ハンドガンで頭を撃ち抜く。
 ハンドガンは消音器付きだったため他の化け物は気づいていない。
 死体の写真も撮ってから通路を進んでいき、アトリが報告のメッセージを送った。
 世界においてアメリカ合衆国内において「福岡ゾンビ事件」と呼ばれる事件が起きていると話題になっており、一部ではワクチン打つとゾンビ化が発生するという噂が立っているほどだった。
 パイデン大統領は在日米軍を本格的に動かして自衛隊の支援をすべきかどうか悩んでいた。
 アメリカ一部の州ではワクチンを義務化させたことにより暴動が起きていてデモ隊と警官隊が衝突して隠密に動いていたSWAT隊員にも多くの殉職者が出ている。そしてしまいには州軍が暴動鎮圧に向かわなくてはならなくなった。
 在日米軍は召集をかけて万が一、米軍にも被害が及ぶ可能性が出て来た時に備えて外出中の兵士に基地に戻るように命令して待機させることを優先させている。
 その一方でチンティン達は日本在住で問題がなく、高い報酬に引き寄せられて任務を遂行していくだけなのでアメリカ本国の情勢など知ったこっちゃなかった。
 チンティンが送り込まれた現場の繁華街は犯罪多発が目立つようになっており化け物より脅威なのが略奪者の存在になっている。阪神淡路大震災の話を聞いたことあるが日本人はコンビニや飲食店、アパレル店で略奪行為をしなかったと高評価を得ているが今回において実際はコンビニや出店が荒らされている形跡を目にしていた。
 「あの頃の日本はよかった。その当時はまだ生まれてもないけどな。」
チンティンはそう独り言を言う。
 軍情報部は衛星カメラを活用して彼らの安否を確認するが途中でチンティン達の姿が見えなくなった。いや、厳密には繁華街の様子が見れなくなっている。
 繁華街の封鎖は本格的に進んでいき、自衛隊が厳重に警備している所では医療用のテントが建てられてワクチン接種者はしばらく隔離されることになった。
 

「現代アクション」の人気作品

コメント

コメントを書く