魔女伝〜天才魔女ヨキのリアルはちゃめちゃ人生

風乃音羽

魔女が結婚?


実は、ヨキは、結婚を約束し、その準備まではしたことがあった。
それは、ツヨシとお別れをした後で、こうちゃんと出会う前だ。

その頃、音羽とヨキは、あまり会っていなかった。
だから、音羽は、SNSで、ヨキがどうやら結婚するらしい、ということを知った。

写真の中でヨキは婚約者と一緒に笑顔で写っていたし、周りから祝福されて、幸せそうな様子がうかがえた。

音羽は、すごく意外だと思った。
何か違和感すら感じていた。
けれど、幸せそうに笑っているヨキの姿をSNSで見た。
ヨキは、常々、自由でいることが大切だから、結婚はする気がないと言っていた。

でも、その頃から、少しずつヨキは体調を崩していた。
弱ると誰かに支えて欲しいと少しは思うのかもしれない、と音羽は思った。
それは、人である限り、当たり前のことだし、どんなにすごい人でも、強い人でも、パートナーはいるに越したことはない。

音羽自身も、独身の頃は、結婚は、自由の翼がもがれるものと思っていたから、結婚願望ゼロだったけれど、結婚したいと思えるパートナーの登場と、子どもを身篭ったときの深く広い愛を知り、結婚は、自由を奪うものではなく、また違う幸せを運んでくれたものとなった。

きっと、ヨキにも転機があったのだろう、と勝手に納得する音羽だった。

それから2〜3ヶ月後に、音羽は久しぶりにヨキに会うことになった。

「ヨキ、結婚おめでとう。ビックリしたけど、幸せそうで、わたしも嬉しい。
引っ越しも済んだみたいだね。」

「それがさ、、、、、結婚、、、やめることにした、、
実家を出て、新居に2人で住み出して、初めて知ったことがいくつかあったの。
一つは、婚約者の澤田くん、ものすごく優しくて良い人なんだけど、実はADHDで、感情がコントロール出来ないと、壁に穴があくの。
ADHDであることは、全然いいの。
でも、そのこと、一度も話してくれたことないのが問題。
これから、一生を共にするっていう相手に、隠してたってことがね。
それに気がつかないわたしも問題よね。
相手のことちゃんと見てないのに、結婚とかって、、、
あと、極め付けが、そのお母さんが、信仰宗教の信者で、そのお札を魔除けのためにって、バンバン送ってくるの。
わたしの実家にまで送って来て、ママがビックリして、どういうこと?って、、、
それで、詳しい話を聞きに来るって、ママがうちまで来たら、壁に穴空いてるから、またビックリしてた。
うちって、歴代受け継いでる事業もあって、守らないといけない財産もあるから、そんな信仰宗教にどっぷりの家と縁を結ぶことはありえない!って激怒して、
結婚やめなさい!って、なってさ、、、」

「そもそも、どうして結婚とかになったの?」

「うん、、、わたしも30代になって、事業も安定して来たし、人並みに落ち着きたいな、って。
結婚するのも悪くないって初めて思った。

それと、、、彼ね、わたしの会社のイベントスタッフだったんだけど、、あるイベントの後に、他のスタッフまで巻き込んで、人前プロポーズだったのもある、、、
流れに沿ってみるのもいいのかもって、その時は思っちゃって。

実は、本心を言うと、実家を出るいいきっかけにもなるなって思ったの。
わたしとママって、関係が特別濃いのよね。
パパとママが離婚してるから、シングルマザーと、一人っ子ってこともあるけど、、、、
もの心ついた時から、わたし、ずっと、ママを助けなきゃって思って生きてるの。
10代で家を出て、ずっと外国にいて離れてた時は、ある意味ホッとするというか、いい距離感なのよね。
でも日本に帰ってきて、実家に戻ってからは、家を出る理由が無くって、、、、わたしのオフィスも近いから。

要するに、流れに沿って、結婚の準備を進めていったけど、結婚自体は、ダメになって、で、念願の一人暮らしになったわけ。

それに、そんな結婚は、澤田くんにも失礼だから、よかったと思う。

あの人、ほんと、純粋でいい人だから、わたしじゃなくって、もっと彼に相応しい人ときっと出会うと思う。

彼のお母さんが送ってきた、魔除けのお札のせいで、わたしが払えたのかもね。」
と言いながら、ヨキは苦笑いしていた。

音羽は、その時は、ヨキが魔女とは知らなかったから、ちょっとしたジョークだと思っていた。

今となって、ヨキの正体を知っている音羽は、あの時のことを思い出して、
「魔除け、魔女よけか、、、そのお札効いたのかもね。」
と、苦笑いするしか無かった。

お札のことはさておき、絶対に想いは叶う。
本音で思っていること、潜在意識にある想いは、ちゃんと宇宙が、それを叶える。
その方法は、宇宙に任せて仕舞えば、どうやってでも、その結果になる。
それが、この宇宙のシステムだから。

ヨキは、ママと少し距離を置いて、見守りたかった。
距離を置いて、ママの想いを自分が叶えたい。
それがヨキの母を大切にするやり方だ。
だから、実家を出たかった。
これが、ヨキの潜在意識に、しっかり存在する想いだ。
だから、それを叶えるために、宇宙が、ヨキを少し遠回りさせたのが、ヨキの結婚話だった、というわけだ。

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