水月のショートショート詰め合わせ

水月suigetu

ネオングリーンのWで進め

ネオングリーンカラー一色の、翼を生やしたライオンのマーク。



遥か遠くの東の島に住む友達から、毎年一通届く手紙には、いつも風変りなライオンの封蝋が押されている。

島は珍しい生き物や植物の宝庫で、大抵はそのことがびっしりと書いてある。しかし、今回はかなり短い内容だった。

”島は丸ごと進化し続けてるんだ。最近は、本当にそう思う。霧に満ちた林の中で、想像を超えた変化が毎日起きてる。その要素を、いつも夜寝る前に考えるんだ。それで、三つのWという結論が出た。当ててみて”

ふー、と息を吐き、電線に区画された晴天を仰ぎながら考える。


苔に覆われた木々と岩。奇妙な泣き声の鳥。風が吹いて、届く微かな潮の匂い。

一度も訪れたことのない島の風景を思い浮かべる。



あ、ウインド。

波の、ウェイブ。

なるほど。

あともう一つは?



長期戦になりそうな気がして、ベランダから家の中に戻り、コーヒーを淹れた。

椅子に座って、ニュース番組を観るふりをしながら考える。ひたすら、考える。視界の隅に、あのネオングリーンのライオンが入り込む。

翼を生やしたライオンなんて、無敵だろう。




あ。


ウイング。


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