Fantaz Mate World-ファンタズメイト・ワールド-

水定ユウ

■1 季節外れの・・・

 まず初めにこのタイトルに意味はない。だけどせっかくだからこんな一文から始めてみた。そう真白粉雪ましろこなゆきはもの凄く悩んでいた。そこそこ考える性格の粉雪だが、今回はちょっとしたことである。

「どうしようコレ……」

 淡々と時間だけが流れる。
 ベッドの上で正座をして今自分の目の前に置かれた黒くて四角い機械を覗き込んでいる。さらにはヘッドホンみたいな形をしたゴーグル。それから一本のゲームカセットのコード。そう。粉雪が手にしているのはVRドライブを始めとしたVRゲームの機材だった。

「なんでこんなのあるんだろ。私買った覚えないんだけど……」

 正直VRドライブとゴーグルのセットは両親からの高校入学祝いで貰ったものだ。
 そんな二人は今海外にいるけれど、日本で一人暮らし中の私に「友達と思いっきり遊んでねー」と軽いノリで渡されたのだ。
 だけど粉雪。何処にでもいるちょっと友達の少ない・・・・・・高校一年生にはちょっぴりハードルが高く、今の今まで放置してきた。
 
 で、あれから三週間。もうそろそろ5月はゴールデンウィークを迎えようとしているではないか。
 そんな時ふと粉雪の元に予想外のものが送られてきた。それは鮮やかな文字に気合の入ったパッケージを合わせたVR専用ゲーム。〈Fantaz Mate World〉。通称〈FMW〉と呼ばれる粉雪でも知ってる人気のVRMMO?だ。

 何でも広大なファンタジーな世界を自由に冒険して遊べる大型のゲームらしいけど。私はよく知らない。せいぜい名前ぐらいのものだった。
 だけど粉雪自身はそんなゲーム購入した覚えはない。だから頭を悩ませていたのだ。
 そんなゲームが如何いう経緯で粉雪の名前で送られて来たのかはわからないけど、そんな怪しさ満載の経緯のあるけれどゲーム自体に罪はない。粉雪は悩みに悩んだ結果、そう思い切ることにした。

 それで如何するのか。粉雪は溜息を一緒に吐きながら独り言を言う。

「はぁー。いい機会かも。やってみよ」

 粉雪は早速VRドライブにゲームコードを入力してゲームをインストールする。
 さっき一応ペタペタと自分の体を触ったり色々と初期設定を加えたのですぐにでも遊べる。おまけにこのドライブ自体がWi-Fiとおんなじなのでいちいちネット回線を引っ張らなくてもいい。
 無駄な手間を全て省いた粉雪は意を決してゴーグルを装着すると、ベッドの上に横になった。

「どんなところなんだろ」

 不安混じりの言葉。それをダダ漏れに呟くと、粉雪はゲームの世界にログインした。

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