高校二年生、魔討士乙類7位、風使い。令和の街角に現れるダンジョンに挑む~例えば夕刻の竹下通りにダンジョンが現れる。そんな日常について~
学園祭の来訪者・結婚は死亡フラグかもしれない
10月になって学園祭の時期がやってきた。
去年はクラスのたこ焼き屋を手伝っていただけだったけど。
「どうだね、片岡君。講堂で特別講演をしてくれないかね」
「それは……いやです」
校長室の向こうに座っている校長先生が渋い顔をした。
「しかしだね、数少ない高校生5位として、なにか言ってくれないか?目標に向かって進む心構えとかだね」
去年に比べるとずいぶん変わったな、と思う。
でも、そんなに偉そうに話すことなんてない、というのが正直なところだ。
5位に上がったのは八王子ダンジョンでの戦いの功績によるということになっているけど、ミノタウロスを倒したのは宗片さんだし、その後のことは話すわけにはいかない。
「そんな立派なものじゃないですよ」
僕が強くなれたのは……多分檜村さんに並びたいという気持ちが一番大きかったと思う。
でも、講演会でそんなことを言うのは流石に恥ずかしい。
「なら、せめて魔討士として何かしてほしい。君のクラスは……」
「カフェらしいです」
クラスの料理好き男女がケーキを作るとか聞いたけど。
「それよりだね、彼ら……そう放課後退魔倶楽部と一緒に何かしてほしい」
「ああ、それくらいなら」
クラスでにぎやかにカフェをの屋台をやるのもいいけど……そっちでもいいかな。
◆
「さあ、先輩。何をするか考えましょう」
その話から数日後の放課後、篠生さんと藤村がやってきた。
三田ケ谷も誘われたそうだけど、クラスの手伝いといって来ていない。うまく逃げたな
「何をするんだ?」
「僕は去年いなかったのですが……放課後退魔倶楽部としての文化祭の出し物は、活動報告とか屋台をやってたこともあるようですね」
藤村が活動記録のファイルをめくりながら言う。
活動報告はともかく、屋台は全然魔討士と関係ないだろうと思うけど。
「今年ですが、2年前にやったエキジビションの試合をやってみようか、と」
「なにそれ?」
「来た人から参加者を募って試合をするんです」
「……それをやるのは僕だけなのでは?」
エキジビションで戦うためには武器が使えなければ話にならない。
そして藤村も篠生さんをはじめとした放課後退魔倶楽部のメンバーはみな魔法使い系だ。
「いえいえ、そんなことは無いですよ。先輩の活躍に触発されまして、1年生で2人新入部員が入ったんです。しかもどっちも乙類。まだ9位ですけどね」
「へえ、それはよかったじゃない」
藤村が嬉しそうに教えてくれた。
確か全員が丙か丁で前衛不足だったって話だったからバランスが取れてよかったな
「なので、その三人でエキジビションをやるってことでどうでしょう」
まあ出ずっぱりにならないならいいか。
それに偉そうに演説とかさせられるよりはこっちの方がいい。
「当日までに用意することはある?」
「先輩にももちろんエキジビションに出てもらいますからね、模擬刀は準備しておいてください」
◆
学園祭当日になった。
放課後退魔倶楽部の方に参加することになったから、特に準備に参加しなくてよかったんだけど、クラスの出し物の準備には参加しておいた。
みんなが準備しているのになにもしないで帰るのはなんかハブられているようで微妙だし、まだエキジビションまで間もある。
「本当は片岡君に接客してほしいんだけどね」
クラスメイトの高木さんが言う。
学級委員で責任感のある彼女はてきぱきと場を仕切っていて、普段の教室がちょっとしたカフェのように改装されていた。
コーヒーのいい匂いが漂ってくる。なんでもクラスに実家がカフェの家があってそこが協力してくれてるらしいけど
「絶対に君目当てで来てる人いると思うわよ」
そういって眼鏡越しにまじまじと僕を見る。
なんとなく生真面目な雰囲気が檜村さんと似ている気がするな。
「こうしてみると全然有名人って感じしないんだけどね」
慣れた手つきでテーブルをセットしながら高木さんが言ってくる。
「その点は僕も自覚あるよ」
「でも有名人は有名人だからね。居れる限りはいてね。あなたもクラスメイトなんだからね、片岡君」
そういって高木さんがケーキの準備をしているクラスメートの方に歩き去っていく。
「さ、皆、頑張りましょうね」
高木さんが呼び掛けたちょうどその時、時計が10時のチャイムを鳴らして花火が上がった。
◆
「やあ、片岡君」
「カタオカ様」
開場してすぐにお客さんが結構来て、写真撮影とかも求められた。案外見ている人はいるもんだな。
しばらくして接客が一区切りしたところで檜村さん達が声を掛けてきた。
今日は檜村さんは初めて会った時に来ていた青地に幾何学模様の入った魔術師っぽいワンピース。
ルーファさんは前と同じくアオザイのような感じの服だ。
学園祭は入り口で入場手続きをすれば入っていい。首からゲストのカードを二人とも下げている。
「もうすぐルーファの転校の手続きが整うらしくてね、一度見ておきたかったんだそうだ」
「はい」
元気よくって感じでルーファさんが答えてくれる。
興味深そうに教室をのぞき込んでその表情がぱっと明るくなった
「ミタカヤ様!」
そういってルーファさんが三田ケ谷に駆け寄っていった
周囲がどよめく……そりゃエキゾチック美少女だし当然だろう。すぐにクラスメートの男女が彼女を取り囲んだ。
「ねえ、君は誰?」
「三田ケ谷の友達?名前、なんていうの」
「すっごい可愛いわ、どこの国の人?」
ルーファさんが周りを戸惑ったように周りを見回した。
「いえ……あの、私はミタカヤ様と共に戦うものです」
「へぇ、魔討士なんだ……女の子なのにすごいね」
「片岡君だけかと思ってたけど、こんな可愛い子と一緒に戦ってるなんて意外ね」
「やるじゃん、どこで捕まえたの?」
「普段はしれっとしてるのにね」
周りのクラスメイトの女の子が三田ケ谷を冷かしている。
それをルーファさんが何か言いたげに見つめた。
「あの……私は魔討士として共に戦っておりますが」
そう言ってルーファさんが口を開いて、皆がルーファさんを見る。
「いずれはミタカヤ様の妻として迎えていただく身です」
◆
当然のごとく周りからどよめきが上がった。
そこまで具体的な話になっているのか、それとも彼女が勢い余ったのか、と思ったけど。
三田ケ谷が慌てているところを見ると、あいつとしても予想外だったっぽいな。
「どういうことよ、三田ケ谷君」
「まさかの学生結婚か?年齢的にダメだろ」
「つーか結婚するって死亡フラグじゃねぇの?」
「あの……違うのでしょうか?」
ルーファさんが真剣な感じで三田ケ谷を見つめる。
三田ケ谷と彼女が見つめ合って沈黙した。
これはなかなかの修羅場だ。正念場というべきなのか。
正直言うと、あの立場になったら僕だったら逃げ出すな。三田ケ谷が意を決したように彼女を見つめ返す
「勿論そのつもりさ、ルーファ」
「おお、マジかよ!」
「不順異性交遊はダメよ、三田ケ谷君」
「ルーファちゃん?男は狼だからね、気をつけて」
「早くここでご一緒したいです」
ルーファさんが三田ケ谷の胸に縋りつくように身を寄せて、ひときわ大きな歓声が沸いた。
周りのクラスにいる奴らまで集まってくる。
これはしばらく騒ぎになるだろうな……大げさな話にならないといいんだけど。
しかし。
「どうするんです、あれ」
「私が知るわけないだろう」
檜村さんがやれやれって感じで首を振ったところでポケットの中でスマホが鳴った。
藤村だ。
「先輩、そろそろ始めます。来てください」
去年はクラスのたこ焼き屋を手伝っていただけだったけど。
「どうだね、片岡君。講堂で特別講演をしてくれないかね」
「それは……いやです」
校長室の向こうに座っている校長先生が渋い顔をした。
「しかしだね、数少ない高校生5位として、なにか言ってくれないか?目標に向かって進む心構えとかだね」
去年に比べるとずいぶん変わったな、と思う。
でも、そんなに偉そうに話すことなんてない、というのが正直なところだ。
5位に上がったのは八王子ダンジョンでの戦いの功績によるということになっているけど、ミノタウロスを倒したのは宗片さんだし、その後のことは話すわけにはいかない。
「そんな立派なものじゃないですよ」
僕が強くなれたのは……多分檜村さんに並びたいという気持ちが一番大きかったと思う。
でも、講演会でそんなことを言うのは流石に恥ずかしい。
「なら、せめて魔討士として何かしてほしい。君のクラスは……」
「カフェらしいです」
クラスの料理好き男女がケーキを作るとか聞いたけど。
「それよりだね、彼ら……そう放課後退魔倶楽部と一緒に何かしてほしい」
「ああ、それくらいなら」
クラスでにぎやかにカフェをの屋台をやるのもいいけど……そっちでもいいかな。
◆
「さあ、先輩。何をするか考えましょう」
その話から数日後の放課後、篠生さんと藤村がやってきた。
三田ケ谷も誘われたそうだけど、クラスの手伝いといって来ていない。うまく逃げたな
「何をするんだ?」
「僕は去年いなかったのですが……放課後退魔倶楽部としての文化祭の出し物は、活動報告とか屋台をやってたこともあるようですね」
藤村が活動記録のファイルをめくりながら言う。
活動報告はともかく、屋台は全然魔討士と関係ないだろうと思うけど。
「今年ですが、2年前にやったエキジビションの試合をやってみようか、と」
「なにそれ?」
「来た人から参加者を募って試合をするんです」
「……それをやるのは僕だけなのでは?」
エキジビションで戦うためには武器が使えなければ話にならない。
そして藤村も篠生さんをはじめとした放課後退魔倶楽部のメンバーはみな魔法使い系だ。
「いえいえ、そんなことは無いですよ。先輩の活躍に触発されまして、1年生で2人新入部員が入ったんです。しかもどっちも乙類。まだ9位ですけどね」
「へえ、それはよかったじゃない」
藤村が嬉しそうに教えてくれた。
確か全員が丙か丁で前衛不足だったって話だったからバランスが取れてよかったな
「なので、その三人でエキジビションをやるってことでどうでしょう」
まあ出ずっぱりにならないならいいか。
それに偉そうに演説とかさせられるよりはこっちの方がいい。
「当日までに用意することはある?」
「先輩にももちろんエキジビションに出てもらいますからね、模擬刀は準備しておいてください」
◆
学園祭当日になった。
放課後退魔倶楽部の方に参加することになったから、特に準備に参加しなくてよかったんだけど、クラスの出し物の準備には参加しておいた。
みんなが準備しているのになにもしないで帰るのはなんかハブられているようで微妙だし、まだエキジビションまで間もある。
「本当は片岡君に接客してほしいんだけどね」
クラスメイトの高木さんが言う。
学級委員で責任感のある彼女はてきぱきと場を仕切っていて、普段の教室がちょっとしたカフェのように改装されていた。
コーヒーのいい匂いが漂ってくる。なんでもクラスに実家がカフェの家があってそこが協力してくれてるらしいけど
「絶対に君目当てで来てる人いると思うわよ」
そういって眼鏡越しにまじまじと僕を見る。
なんとなく生真面目な雰囲気が檜村さんと似ている気がするな。
「こうしてみると全然有名人って感じしないんだけどね」
慣れた手つきでテーブルをセットしながら高木さんが言ってくる。
「その点は僕も自覚あるよ」
「でも有名人は有名人だからね。居れる限りはいてね。あなたもクラスメイトなんだからね、片岡君」
そういって高木さんがケーキの準備をしているクラスメートの方に歩き去っていく。
「さ、皆、頑張りましょうね」
高木さんが呼び掛けたちょうどその時、時計が10時のチャイムを鳴らして花火が上がった。
◆
「やあ、片岡君」
「カタオカ様」
開場してすぐにお客さんが結構来て、写真撮影とかも求められた。案外見ている人はいるもんだな。
しばらくして接客が一区切りしたところで檜村さん達が声を掛けてきた。
今日は檜村さんは初めて会った時に来ていた青地に幾何学模様の入った魔術師っぽいワンピース。
ルーファさんは前と同じくアオザイのような感じの服だ。
学園祭は入り口で入場手続きをすれば入っていい。首からゲストのカードを二人とも下げている。
「もうすぐルーファの転校の手続きが整うらしくてね、一度見ておきたかったんだそうだ」
「はい」
元気よくって感じでルーファさんが答えてくれる。
興味深そうに教室をのぞき込んでその表情がぱっと明るくなった
「ミタカヤ様!」
そういってルーファさんが三田ケ谷に駆け寄っていった
周囲がどよめく……そりゃエキゾチック美少女だし当然だろう。すぐにクラスメートの男女が彼女を取り囲んだ。
「ねえ、君は誰?」
「三田ケ谷の友達?名前、なんていうの」
「すっごい可愛いわ、どこの国の人?」
ルーファさんが周りを戸惑ったように周りを見回した。
「いえ……あの、私はミタカヤ様と共に戦うものです」
「へぇ、魔討士なんだ……女の子なのにすごいね」
「片岡君だけかと思ってたけど、こんな可愛い子と一緒に戦ってるなんて意外ね」
「やるじゃん、どこで捕まえたの?」
「普段はしれっとしてるのにね」
周りのクラスメイトの女の子が三田ケ谷を冷かしている。
それをルーファさんが何か言いたげに見つめた。
「あの……私は魔討士として共に戦っておりますが」
そう言ってルーファさんが口を開いて、皆がルーファさんを見る。
「いずれはミタカヤ様の妻として迎えていただく身です」
◆
当然のごとく周りからどよめきが上がった。
そこまで具体的な話になっているのか、それとも彼女が勢い余ったのか、と思ったけど。
三田ケ谷が慌てているところを見ると、あいつとしても予想外だったっぽいな。
「どういうことよ、三田ケ谷君」
「まさかの学生結婚か?年齢的にダメだろ」
「つーか結婚するって死亡フラグじゃねぇの?」
「あの……違うのでしょうか?」
ルーファさんが真剣な感じで三田ケ谷を見つめる。
三田ケ谷と彼女が見つめ合って沈黙した。
これはなかなかの修羅場だ。正念場というべきなのか。
正直言うと、あの立場になったら僕だったら逃げ出すな。三田ケ谷が意を決したように彼女を見つめ返す
「勿論そのつもりさ、ルーファ」
「おお、マジかよ!」
「不順異性交遊はダメよ、三田ケ谷君」
「ルーファちゃん?男は狼だからね、気をつけて」
「早くここでご一緒したいです」
ルーファさんが三田ケ谷の胸に縋りつくように身を寄せて、ひときわ大きな歓声が沸いた。
周りのクラスにいる奴らまで集まってくる。
これはしばらく騒ぎになるだろうな……大げさな話にならないといいんだけど。
しかし。
「どうするんです、あれ」
「私が知るわけないだろう」
檜村さんがやれやれって感じで首を振ったところでポケットの中でスマホが鳴った。
藤村だ。
「先輩、そろそろ始めます。来てください」
「現代アクション」の人気作品
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