高校二年生、魔討士乙類7位、風使い。令和の街角に現れるダンジョンに挑む~例えば夕刻の竹下通りにダンジョンが現れる。そんな日常について~
頂点に立つ者の気持ちとは
その後も、途中の枝道からはいろんなモンスターが現れた。そっちは僕らでなんとか止められる。
メインの道にはトロールのようなダンジョンマスタークラスが現れるけど、殆ど宗片さんの刀の前に倒されていった。
前衛で一緒に前にいるけど、殆ど僕にやることがない。薪風で足止めを何度かした程度だ。
でもやらなくても何とでもなった気がする。
「なにか聞きたいことはないかい?」
9階層の半分くらいを踏破したところで宗片さんが不意に聞いてきた。
「君は特別だからね、何でも聞いていいよぉ」
「なんでです?」
鈍い僕でも、この人が僕を何となく気に入ってくれているっぽいのは分かる。でも理由が分からない。
「君の刀にも名前があるんだよね」
「はい」
「ならやっぱり君は特別だ、僕と同じさ」
そう言って宗方さんが上機嫌な感じで笑う。
そう言えば乙類でも武器に名前がある人ってのは少ないんだっけ。
ちょっと考えたけど。せっかくだから遠慮せず色々と聞いておくことにした。次の機会なんてあるかどうかわからない。
「宗方さんは刀……というか、一刀斎と会話ってできるんですか?」
「今も会話するよ。どう動けばいいのか教えてくれる」
これが一番聞きたいことだったんだけど、こともなげな感じで宗片さんが答えてくれた。
やっぱりできるのか……でも、どうやっているんだろう。
「どうすればいいのかは……感覚的だからちょっと難しいけどね
基本的には魔素が濃いところでないとダメだねー。ダンジョンの奥とかだと、すぐそばに立っているように感じる時もある。魔素が無いところでも夢に出てくるよ」
僕の疑問を察したように、宗片さんが続けてくれた。
それなら僕もここで鎮定と話すことが出来たりするんだろうか。
しかし、鎮定に呼びかけるのはなんか痛い中二病患者のようで抵抗があるぞ。
「まあこれは慣れだと思うよぉ。戦っていればいずれ分かるさ。すぐそばに彼が付いていてくれることをね」
まあ鎮定と会って何を話すかと言われるとちょっと困るんだけど。
未だにあれが夢だったんじゃないか、レーザーを受けた時の衝撃で見た幻かと思う時はある。
でも不思議だけど、風を上手く使えることを意識すると上手く使えるし、絵麻の魔素を寄せる体質ってのも正しかったし。
もう一度ゆっくり話はしてみたいな。
★
「なんというか独特な剣術ですよね」
宗片さんは今も刀を肩に担いでいる……様に見える。
ただ、刀身は殆ど透明で、時々光を受けて煌めくだけだ。普通に見ただけだと刀の柄と鍔しか見えない。
その恐ろしい切れ味は何度か戦闘を見てよく分かった。
トロールの硬そうな肌や小型の竜の鱗をものともせずに真っ二つにしてしまう。
試合の時は変だな、と思ったけど、ああいう太刀筋になるのも分かる気がするな。
「僕はねー、そう。王様。王様は強ければいいんだよ。分かるでしょ?」
なんか返事なのかそうじゃないのか分からない言葉が返ってきた。
ただ、これに関しては全く異論がない。4人で六階層で苦戦している僕等とはレベルが違う。
刀身が見えないから正確な間合いは分からないけど、かなり長いことくらいは分かる。その刀が一瞬で敵の首を飛ばすのをこの階だけでも何度も見た。
飛び道具もまるで軌道が見えているかのように避ける。この人ならあの銀座で出て来た球のレーザーも避けてしまいそうだ。
強いて言うなら範囲攻撃に弱そうだけど、そもそもモンスターが攻撃態勢に入る前に相手の首が飛んでいるレベルだし。
一応僕等は枝道から来たのを倒しているけど。この人なら普通に一人でも行けてしまう気がする。
「一刀斎が言うのさ。これが僕にとって一番強いってね」
確かにそうかもしれない。
師匠が言っていたことは当たっていた。切れ味の鋭い刀を、体重を乗せずに切っ先を触れさせる剣術。本物の武器を見ると確かにその通りだ。
あれなら体重を乗せて切る必要はない。
「そりゃあね、僕でも攻略できない場所があったら山籠もりでもするかもしれないけどさ……それに君だって天下無双ならわざわざ毎日素振りなんてしないでしょ」
そうですね、というのも憚られるセリフだ……この辺は格が違い過ぎて理解できない感じだな。
自分が天下無双になったら、なんて、今は想像もできないぞ。
「もう一ついいですか?」
「なんでも聞きなよ、遠慮はいらないさぁ」
「宗片さんはなんで戦っているんです?」
ちょっと想像するだけでもお金持ちだろうってくらいは僕にでもわかる。討伐実績点だけで相当なもののはずだ。
ランクは頂点を極めていて超えるべき壁も無い。
伊勢田さんとかはそれでも使命感を持って戦いそうだけど……なんというか、そんな感じではないし。
「僕は王様だ。王様は我が儘を言っていいんだよ。
でも、王様は強くないといけないし、民のために戦わないといけないんだ。そういうもんじゃないかな?」
僕の方を見て同意を求めてくるけど……そういうもんかな?
ただ、多分すでにお金も持っていてランクの頂点にいるのにそれでも戦うのは、こういう気持ちがあるからなのかもしれない。
「だってねぇ。分からないかもしれないけどさ、結構疲れるんだよ。一刀斎を使うのは」
ぼやくように宗片さんが言う。
平然としているけど、結構消耗するのだろうか。
乙類は、甲類や丙類とかに比べて武器で戦う分継戦能力が高いというか消耗が少ないのが特徴だけど、それも人による。
僕も風を使いまくった時とそうじゃないときは結構疲労感に差は出るし。
「こんな僕でも一応真面目に戦ってるんだよ。王様は大変なのさ。でもねー」
最後に小さく宗片さんがつぶやいた
「最近はツマラナイ……でも」
あれだけ一方的に敵を倒せるなら、確かに作業ゲーに近い感じはある。ツマラナイというのは分からなくもない。
でも。強すぎてツマラナイ、か。
そういう場所に立ったらどういう景色が見えるんだろうか。
メインの道にはトロールのようなダンジョンマスタークラスが現れるけど、殆ど宗片さんの刀の前に倒されていった。
前衛で一緒に前にいるけど、殆ど僕にやることがない。薪風で足止めを何度かした程度だ。
でもやらなくても何とでもなった気がする。
「なにか聞きたいことはないかい?」
9階層の半分くらいを踏破したところで宗片さんが不意に聞いてきた。
「君は特別だからね、何でも聞いていいよぉ」
「なんでです?」
鈍い僕でも、この人が僕を何となく気に入ってくれているっぽいのは分かる。でも理由が分からない。
「君の刀にも名前があるんだよね」
「はい」
「ならやっぱり君は特別だ、僕と同じさ」
そう言って宗方さんが上機嫌な感じで笑う。
そう言えば乙類でも武器に名前がある人ってのは少ないんだっけ。
ちょっと考えたけど。せっかくだから遠慮せず色々と聞いておくことにした。次の機会なんてあるかどうかわからない。
「宗方さんは刀……というか、一刀斎と会話ってできるんですか?」
「今も会話するよ。どう動けばいいのか教えてくれる」
これが一番聞きたいことだったんだけど、こともなげな感じで宗片さんが答えてくれた。
やっぱりできるのか……でも、どうやっているんだろう。
「どうすればいいのかは……感覚的だからちょっと難しいけどね
基本的には魔素が濃いところでないとダメだねー。ダンジョンの奥とかだと、すぐそばに立っているように感じる時もある。魔素が無いところでも夢に出てくるよ」
僕の疑問を察したように、宗片さんが続けてくれた。
それなら僕もここで鎮定と話すことが出来たりするんだろうか。
しかし、鎮定に呼びかけるのはなんか痛い中二病患者のようで抵抗があるぞ。
「まあこれは慣れだと思うよぉ。戦っていればいずれ分かるさ。すぐそばに彼が付いていてくれることをね」
まあ鎮定と会って何を話すかと言われるとちょっと困るんだけど。
未だにあれが夢だったんじゃないか、レーザーを受けた時の衝撃で見た幻かと思う時はある。
でも不思議だけど、風を上手く使えることを意識すると上手く使えるし、絵麻の魔素を寄せる体質ってのも正しかったし。
もう一度ゆっくり話はしてみたいな。
★
「なんというか独特な剣術ですよね」
宗片さんは今も刀を肩に担いでいる……様に見える。
ただ、刀身は殆ど透明で、時々光を受けて煌めくだけだ。普通に見ただけだと刀の柄と鍔しか見えない。
その恐ろしい切れ味は何度か戦闘を見てよく分かった。
トロールの硬そうな肌や小型の竜の鱗をものともせずに真っ二つにしてしまう。
試合の時は変だな、と思ったけど、ああいう太刀筋になるのも分かる気がするな。
「僕はねー、そう。王様。王様は強ければいいんだよ。分かるでしょ?」
なんか返事なのかそうじゃないのか分からない言葉が返ってきた。
ただ、これに関しては全く異論がない。4人で六階層で苦戦している僕等とはレベルが違う。
刀身が見えないから正確な間合いは分からないけど、かなり長いことくらいは分かる。その刀が一瞬で敵の首を飛ばすのをこの階だけでも何度も見た。
飛び道具もまるで軌道が見えているかのように避ける。この人ならあの銀座で出て来た球のレーザーも避けてしまいそうだ。
強いて言うなら範囲攻撃に弱そうだけど、そもそもモンスターが攻撃態勢に入る前に相手の首が飛んでいるレベルだし。
一応僕等は枝道から来たのを倒しているけど。この人なら普通に一人でも行けてしまう気がする。
「一刀斎が言うのさ。これが僕にとって一番強いってね」
確かにそうかもしれない。
師匠が言っていたことは当たっていた。切れ味の鋭い刀を、体重を乗せずに切っ先を触れさせる剣術。本物の武器を見ると確かにその通りだ。
あれなら体重を乗せて切る必要はない。
「そりゃあね、僕でも攻略できない場所があったら山籠もりでもするかもしれないけどさ……それに君だって天下無双ならわざわざ毎日素振りなんてしないでしょ」
そうですね、というのも憚られるセリフだ……この辺は格が違い過ぎて理解できない感じだな。
自分が天下無双になったら、なんて、今は想像もできないぞ。
「もう一ついいですか?」
「なんでも聞きなよ、遠慮はいらないさぁ」
「宗片さんはなんで戦っているんです?」
ちょっと想像するだけでもお金持ちだろうってくらいは僕にでもわかる。討伐実績点だけで相当なもののはずだ。
ランクは頂点を極めていて超えるべき壁も無い。
伊勢田さんとかはそれでも使命感を持って戦いそうだけど……なんというか、そんな感じではないし。
「僕は王様だ。王様は我が儘を言っていいんだよ。
でも、王様は強くないといけないし、民のために戦わないといけないんだ。そういうもんじゃないかな?」
僕の方を見て同意を求めてくるけど……そういうもんかな?
ただ、多分すでにお金も持っていてランクの頂点にいるのにそれでも戦うのは、こういう気持ちがあるからなのかもしれない。
「だってねぇ。分からないかもしれないけどさ、結構疲れるんだよ。一刀斎を使うのは」
ぼやくように宗片さんが言う。
平然としているけど、結構消耗するのだろうか。
乙類は、甲類や丙類とかに比べて武器で戦う分継戦能力が高いというか消耗が少ないのが特徴だけど、それも人による。
僕も風を使いまくった時とそうじゃないときは結構疲労感に差は出るし。
「こんな僕でも一応真面目に戦ってるんだよ。王様は大変なのさ。でもねー」
最後に小さく宗片さんがつぶやいた
「最近はツマラナイ……でも」
あれだけ一方的に敵を倒せるなら、確かに作業ゲーに近い感じはある。ツマラナイというのは分からなくもない。
でも。強すぎてツマラナイ、か。
そういう場所に立ったらどういう景色が見えるんだろうか。
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