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彼氏が悪の組織の戦闘員Eなんですが…

黒月白華

第55話 ゴリラの闘い

「久しぶりだな!安達!」

「本名で呼ばれるのはいつぶりだろうね鬼教官殿」
このフロアは社員食堂なのかテーブルや奥にはキッチンが見える。暴れやすいが向こうも戦闘のプロ。しかも元上司であり、実力は上かもしれない…。だが…あたしがここで奴を止めなければ好きな男の一人も守れやしないよ…。ただの主従関係だとしてもだ。

「ふん!お前のような醜いゴリラは動物園に入れておくべきだろうな!」
教官はそう言うとビリビリと上半身の服を破いた。

「悪いな俺も本気で戦わせてもらうぞ!武器は使わんでやる」

「ふっ、素手でやろうってんだね…わかったよ…ならあたしも武器は捨てようか…」
と銃器を床に転がした。
教官が服を破いたのは近接戦になった時に服を掴まれないためだ。逆に服を着ているメスゴリラは不利そのもの…。舐めやがって!

「始めようか!安達!」

「ここは通さない!」
あたしは教官に向かって側にあった椅子を投げつけた。
銃は使わないが椅子を使わないとは言ってないからね!

「ふん!ゴリラが!やはり悪の組織に染まり過ぎたか!」
と降ってきた椅子をテーブルを持ち上げ盾にし防ぐ教官。やはり遠距離ではこいつに勝てないか!近接戦に持ち込むとリスクはある。
力も向こうが上だろう。

ならば!
あたしは椅子を掴み側のテーブルの一つに飛び乗り上を走り盾にしているテーブルより高くジャンプし椅子と胡椒を投げつける。椅子は弾いたが胡椒を防ぎきれなかった教官はくしゃみをする。そしてその隙を見逃さずあたしは教官の頭を脇に抱えて腕を回し締め上げた。

「くっ!…卑怯者めが!」
カメラマンはそれを回してゴクリと唾を飲んだ。
その映像はネットにも流れて歓声が湧く。

(うおおお!流石ゴリラ!凄えぜ!)
(何だこれ!正月から燃えるじゃねぇか!)
(ゴリラ強っ!!)

「ふっ…」
しかし教官は嘲笑うとあたしの腰を抱えてガラ空きの左手で下から掌底を顎に喰らわせ頭が外れるとあたしの腕を掴みテーブルにぶん投げた。
ミシリとテーブルの足が折れた音がし、教官はそこに容赦なく突っ込んできて素早く交わす。

バキリ!

とテーブルが破壊される。

「ちっ!逃げんじゃねぇよ!ゴリラが!」
あたしはまた椅子を投げたが弾かれどんどん壁に追い詰められる。

「ははは!どうした?俺が怖いか?」
クソ野郎!掌底で脳がまだぐらりとするがここで気絶するわけにはいかず踏ん張る。

「椅子ももうないようだな!」
と教官はテーブルの破壊した残骸を投げてあたしはそれを避ける。しかし避けた先には拳が迫り顔面を強打され、地面に沈んだ。そこへさらに馬乗りで頭を押さえ右手で何発も入れられる。

(あっ!ゴリラがやられる!!)
(やっぱりキングコングには勝てないか)
(ゴリラてめーそれでもゴリラかよ!立て!)

顔は晴れ口にも血が滲むがそれを教官の顔に吐き捨て怒りに歪んだ教官はパンチを繰り出すがその拳をあたしは何とか防ぐ。教官は今度は両手でパンチを繰り出そうとしてきたので頭がようやく浮き、あたしは腰を浮かして相手の足を自分の足で挟みぐりっと捻り上げ回転し抜けだした。そして痛みに堪え素早く立ち上がり教官が立ち上がる前に急所を蹴り上げた。

「うがっ!!」
素早く距離を取り息をしばらく整える。あたしの顔はパンパンに腫れ上がってるだろうがね。

「クソゴリラ!許さん!」

「ふん!女の顔を殴りつけといといてよく言うよ!」

「女?どこに女がいる?ただのゴリラだろう?お前を女と見ている男などこの世にいるわけないだろう」
その言葉にショックを受ける。そんなの解っている。とっくの昔から。女など捨てたのだ。
今更ショック受けるなんてね…。これもあの男に恋したせいか…。叶わぬと知りながらね。

あたしはキッチンに逃げ込み皿を投げつけたり玉ねぎやジャガイモを投げたりした。しかし笑いながら奴は迫りあたしのフラフラしたパンチをあっさり避けると両手を封じられ強烈な膝蹴りを腹に繰り出される。

「ぐがっ!」
パタリとうつ伏せで倒れた所を今度は後ろから首を絞められ笑う。

「このまま首を折って安楽死させてやるかな」
私は奥の手とばかりに落ちていたジャガイモの皮むき器で教官の腕をガリッと剃った。

「痛えっっ!!」
力が緩みあたしは足で思い切り教官の腹を蹴り上げた。

「あぐっっ!!」
流石に骨が折れる音さえしなかったか…。
鍛えられた筋肉を傷つけるのは容易ではない。

それでも何とかあたしは立ち上がりかけた教官の顔目掛けて背中を掴んで逆に膝蹴りをぶち込んだ。
もう一発食らわせようとして足を掴まれぶん投げられた。
キッチンから食堂まで吹っ飛び転がる。
そこら中の破片が転がりながら刺さり痛いが
怒りに我を忘れた教官は包丁を持ちこちらに歩み寄っていた。
ちっ、あの野郎凶器は使っていいのか!
いや…もう怒りで我を忘れている。
ヒューヒュー言いながら

「死ね!ゴリラああああ!」
と包丁を振りかざしそれを避けながらあたしは追い詰められていった。

ふいに一瞬愛しい男の顔が浮かんだ。あたしと初めて会って戦った時のあの鋭さを失わない瞳…。

そして気付くと喉元まで包丁がきた時にするりと交わして、首に足を引っ掛けて教官を地面に叩きつけた。

カシャン!

と包丁は転がり、あたしは奴の腕を締め上げた。

「くっ…ゴリラごときに…」
そして手刀を首に思い切り叩き込んだ。

「!!」
ようやく教官は気絶した。
遠くのカメラマンも涙ぐんでいた。
しかし全身の痛みに耐えきれず立っているのもやっとだ。

私は静かにしゃがみ込んだ。
はぁ、少し疲れたわ。

カメラマンが恐る恐る近づき

「見てくださいこれ…」
とスマホを取り出した。
そこには…

(ゴリラが勝った!!)
(やった!!強い!!)
(偉いぞ!ゴリラ!!)
称賛の声だ。
ゴリラは涙を流した。
嫌われるだけの人生だった。
本当…こんな所でようやく変われるとはな…。

そこでゴリラは気絶した。
後にゴリラファンからたくさんのお見舞いバナナが病室に届くのは先の話。

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