彼氏が悪の組織の戦闘員Eなんですが…

黒月白華

第26話 明日来れないだけです

栗生院くんの入院2ヶ月と少し…
医師の判断で流動食から固形物を食べるのが許された栗生院くんは物凄く喜んでいた。

「やっとかーー!!やっと形あるものが食べれるのか!!」
と拳を作って喜んでいた。大げさに見えるが確かに2ヶ月流動食はキツイ。
それにお腹もほとんど回復してきていて実はもう退院しても問題ないんじゃないか?
くらいに来てるが栗生院くんが医者に無言で
まだ退院しねぇぞこら、ぶっ殺すぞ?
まだ彼女がお見舞いに来てくれるの楽しいからオーラがダダ漏れている。

「いやあの…まだ食事も普通に食べれるか見たいのであのその…では私はこれで…」
と医者が下がってく。
恐ろしい束縛力!!

「夕飯も時奈さんと同じのが食べれるし楽しみだなぁ」
いやお前は病人食を普通に取ってほしいんだけど??
と言っても無駄だろうなと思い早々に諦めた。

栗生院くんはトレーニングルームで瓦を10枚くらい重ねて上にレッドさんのお面を乗せ

「死ねレッド!!」
とか叫びながら瓦を割ったり、パンチングマシンにレッドさんの顔を貼り付けて

「死ねレッド!!」
とか叫びながらパンチをかますと機械がエラーで壊れたり、巻藁にレッドさんの顔を貼り付けて

「死ねレッド!!」
と刀剣でぶった斬っていた。
もう全然動けるんですけどこの人!!
隠れてトレーニングばっかしてたからか、元々の才能なのかとにかく回復したらしたで何でもできるのだ。

「もうお見舞いに来なくても元気そうだしいいんじゃ…」
と言うと

「うっ…内臓が飛び出そう!」
という下手な嘘までつくし!飛び出たら死ぬから!
まぁその後嘘に付き合ってさすってあげると喜ぶけど。
それに旅行に行くことになったのでとりあえずギリシャ語を練習すべく私はない頭で勉強を始めたが、
栗生院くんが直接教えてくれるというので毎日アホみたいに教わっている。

「じゃあこれは何て言ってる? Λατρεύω την Τόκινα」

「ええと…」
すると耳元で

「愛しています、時奈さんて意味」
ボンっと顔が熱くなり呼吸器に支障をきたす。
死ぬ!ていうかそんなのギリシャ語で誰に使うんだよ!!私か!!
ギリシャ語で愛囁かれても解らんから辞めて!!

「関係ないのは言わないの!!」

「ええ?関係ないだなんてそんな…」
判ったから!もう判ったから!!
と勉強を続けようやく帰る時間がくる。

「また明日ね!」
と栗生院くんがいつものようにキスしようとしたので

「あ…明日はダメだよ…」

「え?何で?」
と物凄い焦った顔になった。

「ええとほら…舞川さんとパスポートを取りに行くんだよ…」

「パスポート……」
一応海外には行くけど、もちろん鳴島さんが付いてくるし鳴島さんが行くなら舞川さんも付いてくるのだ。
だからパスポートを取る日が必要であった。どんなに急いでも大体1週間かかるし。

「そっかあ…うん…そっかあ…」
と残念で死にそうな顔をしている。

「いやあの…明日来れないだけでそんなに落ち込まなくても…」
と言うと

「何言ってるの?落ち込むに決まってるよ!!時奈さん成分が足りなくて明日は貧血で倒れるよ僕!!」
いや倒れるわけないだろ!めっちゃトレーニングしてるからお前っ!
瓦10枚割れるくらい血の気が多いから!!

「ううっ辛い!鬱になる!明日会えないなんて!そうだ院長を殺して病院を、24時間面会オッケーにすれば…」

「コンビニじゃないんだから!!とにかく我慢してね!!」
と私はまるで小さい子をあやすみたいに栗生院くんの頭をポンポンしてみる。
院長も飛んだ迷惑だ。

「ううっ…時奈さあん!」
ギュッと抱きしめられちょっと苦しい。
明日来れないだけでだき潰されるわ!!

「…明後日には学校で調理実習があるからクッキーで良かったら作ってくるから…」
と言うと彼はようやく

「ほんと?時奈さんの手作り?それ凄く楽しみだよ!」
と眩しい笑顔になる。
ぐわっ!イケメンフラッシュだ!まともに浴びた!!
ヤバイ!目がぁ!目が潰れる!早くグラサンを!グラサンをかけないとおおお!

彼は指に手に額に頰にと唇以外いつもより長めにキスするとようやく満足して見送った。

ヤバイ…クッキーを…焼いてもし失敗したらどうしよう…。
緊張すると失敗する…。黒こげになったクッキーを想像したらダメだ!
あああ!何故クッキーなんかあげるって言ったんだ!
固形物が食べられるようになったからって!ヤバイ!ほんとヤバイよ!

と私はとりあえずグークル先生やクックポットを調べて上手に焼ける作り方を念入りに調べた。

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