ショートストーリーあれこれ

新・ドラドラ改

或る女の話―子供を売った女

 私の友人に、友江という女がいる。友江は男性関係がだらしない女で不倫や二股は当たり前、酷い時には7人と同時進行している事もあった。

 そんな友江も身を固める時が来て、とある資産家の長男と結婚する事が決まった。が、彼女にはとある秘密があった。実は以前、恋愛関係にあった男性との間に1歳になる子供がいる。当然、周りには秘密にしていた。結婚の為に子供が邪魔になった彼女は、私にとんでもない提案をしてきた。

 「ねえ、この子を10万で買わない?」

 私はあ然となり、当然の事ながら断った。しかし、彼女は諦めず別の友人にその子供を金と引き換えに譲り渡した。その後、彼女は結婚し何不自由ない生活を送る事になった。

 その数十年後。市役所の生活保護申請窓口に、友江は来ていた。結婚後も男遊びが直らなかった友江は十数年前に離婚、慰謝料も請求された。その支払いは済ませたのだが、その為に働き詰めだった彼女は身体を壊してしまっていた。

 働く事の出来ない彼女は、やむなく生活保護申請をする為にここに来ていた。自分の番になり、窓口に向かい、申請書類を出した。まず申請は通るだろうと思っていたが・・・

 「な、何で申請が下りないの!どうして!」

 通知を見た彼女は、すぐに市役所へ向かった。抗議をしていると、上役である職員が現れる。

 「どうして、私の申請が通らないんですか!」

 「貴方には家族がいるから、生活費に困らないでしょう?」

 「私に家族は居ないわよ!」

 「居るでしょう、貴方が数十年前に友人に金で売った息子さんが。」

 「えっ・・・」

 「覚えてませんか?そうですよね、売ってからは一度も会いに来ようとしませんでしたから。だから、その息子が今何をしているかも知らないでしょう?」

 「ど、どういう意味よ!」

 「売り渡したその息子は、今あんたの目の前にいるんだよ。」

 ハッとなり、友江は目の前の職員の顔を見る。成長はしているが、確かに目の前に居たのは自分が売り渡した息子だ。

 「・・・し、申請が下りないなら、あんたが私を養って!親を養うのは、子供の義務よ!」

 「私の親は今家にいる、お前なんか知らん。」

 「そ、そんな!」

 「言っておくが、あんたが何回申請書類を出しても却下するからな。お前みたいな、我欲の為に子供を捨てる奴に出す生活保護費はない!話は以上です、お引取りを。」

 「そんな!ゆ、許してくれよ!あんたを捨てた事は悪かった、だから許して頂戴!」

 友江は懇願するが、職員は無視。その後、彼女は警備員につまみ出された。

 その後の友江の行方は分からないが、噂によると最近橋の下で彼女に身体的特徴の似た身元不明遺体が見つかったらしい。

 「自分が捨てた息子に、最後は見捨てられるとはね・・・因果応報とはこういう事ね。」

 私は静かに呟いた。(終)

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