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見上げる月夜の照らす者

八つの蜜

46.第肆拾陸話 頂き

「凪!」

山頂へと至った閻魔が目にした物は“地獄の門”の前に立つぬらりひょんと倒れた凪の姿であった。

(九尾の姿が無い…?)

「これが…これが私の探し求めていたもの!一度目にした時から可能性を感じていた!」

「やはり、一輝の件に関わっていたのはお前だったのか…ぬらりひょん」

「ああ。真季波一輝の力を見てその力に可能性を感じた。その為には色々と準備を重ねた…」

その力を扱う為に必要となる“神眼”の制作に取り掛かる。
何年かかっても良い。徐々に、悟られぬように。
九尾が人間に恨みを持つよう、心を弱らせるように仕向ける為、人間共に一輝の住む場所を教えたのは私だ。その弱った心に回収した“尾”を戻す。
予想通り大暴れを繰り返した。
手頃な少女の視力も奪った。
これまでの生贄、一人の視力、そして“九尾の尾”を用い“神眼”を作り出すことに成功する。

“神眼”の制作完了後、同時期に“忘却体質”の少女を見つける。一度記憶を消す為彼女のメモ帳も処分した。
その後“神眼”はその彼女の下で成長し、育った。“神眼”に目が行かぬよう少し周りにちょっかいをかけ、頃合いを見て奪った。

「さて、そろそろかの…」

「…!」

辰川にやられたのであろう百々目鬼の上半身が消滅前にぬらりひょんの足元へと転がる。

「ち、父上…申し訳ございません…神眼がこ、」

「神の瞳はそう簡単に壊れわせぬ。それにしてもお主…」

弱いな。そう口にしぬらりひょんは百々目鬼の頭を足で潰す。

「自分の息子を…厳密には違うんだろうが」

「使いもできぬ“物”を息子とは呼べまい」

百々目鬼の消滅後、残った神眼を自身の目に移植する。

「さて、始めるかの?」

「閻魔!すまぬ遅れた」

「辰川さん5分いや、3分でいい。時間稼ぎを頼めるかい?私はあの“門”を押し戻す」

そう言い閻魔は目を閉じその場で座禅を組む。

「分かった。ぬらりひょんの相手は任せよ」

「させぬわ“風切かぜきり”!」

ぬらりひょんは腕をしならせ風の刃を飛ばす。辰川は“部分竜化・龍鱗”で腕を硬化させ閻魔を守る。

「あの時はお互い臨界解放の余波で吹っ飛んだからね。今、あの時の勝負をつけようじゃないか。のお?ぬらりひょん」

「邪魔じゃ、そこを退け!」

“風切”を連続して出してくるが、全て龍鱗で防ぎきる。が、龍鱗にひびが走る。

「…!」

ぬらりひょんは神眼を手にしている。相手の妖力の流れ、思考、全てを見て捉えることができる。故に辰川の龍鱗の鱗の間を正確に“風切”で打ち抜き損傷させる。

“部分竜化・龍頭”

頭を竜に変化させ口から炎を吐く。

“息吹”

(広範囲技なら避けられまい!)

“氷上冷気”

ぬらりひょんの放った雪女の技は本来ならば能力の相性上、辰川の炎を防ぐ事は勿論、止めるなどできるはずもない。が、神眼を持つぬらりひょんの正確な攻撃は辰川の放った炎を一瞬にして凍り付かせる。

「ありえん…」

「あらゆる能力を正確に且つ、最大限使うことができるようになる。それが神の瞳と言う代物だ」

(それは…)

ニタリ…

ぬらりひょんの口角が上がる。

「終いじゃな。諸共塵になれ」

“臨界解放・百鬼夜行絵巻”

ぬらりひょんの背後に数千の妖怪の姿が現れその全てが辰川、閻魔に向かって一斉に襲い掛かる。

(ここで臨界解放を同じく使えば拮抗はできるじゃろう。だが閻魔を巻き込む…)

「わしは閻魔に頼まれておってな。驕るなよ妖怪風情が…わしを止めたきゃ大妖怪でも連れてこんかッ!!!」

ぬらりひょんは勝てる・・・と確信している。

鬼神。

並み居る妖怪を祓い薙ぎ倒し自身の背後にいる閻魔へと一歩も至らせない彼をぬらりひょんはそう思った。

(だからこそ惜しい)

ぬらりひょんの臨界解放で呼び出された妖怪達の相手で辰川は手一杯。辰川はぬらりひょんを止めきれない。ぬらりひょんは悠々と閻魔の背後に回る。

「んじゃ終いじゃな」

ドスッ…

「…?」

違和感。無防備になった閻魔の胸を自身の手が貫いている。違和感は貫いた感触がしなかった事。

「私は元々例外的イレギュラーな存在。何故私がこの地に留まることができていたのか、それは自身の妖力で無理矢理この地に根を張っていたから…」

今もなお懸命に戦っている聴こえていないであろう辰川に語りかける。

「辰川さんよく頑張ってくれた。お陰で私は凪の精神に入ることができそうだ」

「貴様…!」

(凪の精神に入り折れた心を元に戻すよう働きかけるつもりかッ!?)

「させー」

ぬらりひょんが閻魔を行かせまいとするが閻魔は光の粒子となり消えた。

ぬらりひょんは次の一手を考える。

(恐らく閻魔は今凪の精神の中。なら私も凪の精神に侵入し、閻魔の行動を阻止する…)

妖怪、怪異、人。意志ある者を操る事に長けているぬらりひょんにとって精神への侵入は容易であった。



ぬらりひょんは忘れている。それがどんなに小さな力でも時間稼ぎをするには充分だということを。

“臨界解放・黒鼠怱々淘汰”

凪の精神へと侵入する為、凪に触れようとした刹那の一瞬。ぬらりひょんの足下は黒い影に覆われる。

「なっ…!?」

「やらせねぇよ!!!」

ぬらりひょんの足下の陰から戦斧が飛び出しぬらりひょんを凪から引き離す。

「他の者たちはどうしたと言うのだ…」

「御生憎様だな、妖怪の親玉ぬらりひょん。俺達がここにいるって事はもう分かるだろ?」

辰川と共に妖怪を切り伏せた戌乖がぬらりひょんの問いに答える。

「役立たずであったか…」

「我ら十二支、大妖怪ぬらりひょんを討つ」

「調子に乗るなよ小童どもが!!!」

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