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見上げる月夜の照らす者

八つの蜜

40.第肆拾話 決行前


閻)「辰川さんはぬらりひょんが潜伏してそうな場所の心当たりってある?」

辰)《稲山、そこは妖力が停滞する不思議な山で妖怪や怪異が好んで住み着く山だ。一度出向いたが見ての通り返り討ちにあっての》

ここに来れない響也さん、辰川さん、未継さん、寅尾さん、午谷先輩は通話を繋ぎ、牛呂さん、颯、九尾、閻魔さん、戌乖先輩、猿飛先輩、とで今後を話し合う。

未)《少し前に、ウルと言う吸血鬼が稲山に登ったのを最後にその山には誰も立ち寄っていないよ》

(ウルさんが言っていたのは稲山の事だったのか…)

未継さんの応答にてウルさんの向かった場所についての疑問が晴れる。

未)《その吸血鬼が教えてくれたんだけど、能力とは常にリスクとリターンの関係にあるらしい。一方的なものってのは無いようだね。それを踏まえて“分裂”の能力について考察があるんだけど》

閻)「続けて」

未)《うん。沙霧の千里眼でも対処できなかった“分裂”の能力。これは分裂体が本体となんら変わりない性能を有している為、今までぬらりひょんって言う妖怪が表立って活動していなかったのも妙。ここから導き出された答えは、ぬらりひょんの本体は稲山から動いておらず、分裂体だけで行動している、だ。これなら同時に数カ所で確認されているって言う謎も納得できるものになるし、リスクとリターンの関係にも結びつく》

猿)「なるほど、稲山から動けない=本体は無防備という事だからか…」

閻)「稲山にはぬらりひょんだけじゃなく、ぬらりひょんの手下の妖怪たちもいるだろう。ぬらりひょんの“分裂”の能力の謎が解けても手札、能力共に不明、不利な戦になるね…」

「でもやるしかない…これ以上、罪の無い人が亡くなるのはダメだ」

閻)「そうだね、人が死んでいるんだ。これ以上ぬらりひょんの思い通りにさせてはいけないね」

拳に力が入る。これ以上犠牲者は出させない。ここでぬらりひょんと言う妖怪を祓う。そう胸に誓う。

辰)《わしと閻魔殿は南の山道から頂上に向けて進もう》

閻)「そこが一番険しい道のりで妖力の濃い場所だからね。妥当だろう」

寅)《うちとほなちゃんは西から行こう》

午)《ああ、よろしく頼む》

未)《僕は結界の管理と周辺地域へと被害削減を担おう。それと八城さん、トトさん、雨ちゃんは僕の屋敷に来て。他よりも安全だから》

八、雨、ト)「はい(にゃ)」

巳)《僕は未継の手伝いだな〜片腕じゃ戦力外だし、主に怪我人の手当てかな》

戌)「俺と凌は東だな」

猿)「ああ」

鼠)「俺と瑠璃は北に行こう」

牛)「分かったわ。凪くんはどうする?」

「俺は九尾と山道から行こうと思う」

九)「うむ。分裂体如きにもう遅れはとらぬ」

閻)「作戦は今夜、決行する。では解散」

閻魔さんの作戦指示の後、号令と共に皆、各々が夜までに準備のため、出て行く。今夜、決着をつける。俺は今までの全てを出し切るだけでいい。そのためにやって来たんだ…


作戦決行まで残り3時間を切った。辺りは少しオレンジがかった空に覆われ、少し蒸し暑い風が縁側を通り抜ける。嵐の前の静けさとはこの事なのだろう。

「凪くん、私行きますね」

「うん。勝ってくる」

その答えを聞くと同時に八城さんは俺の右手を両手で握る。

「!?」

「私は今回も何もできません。いつも守られてばかりで…それでも私は無事を祈ってます。必ず生きて帰ってきてください…」

少しくぐもった声で必死に手を握り締め祈る。

「うん。必ず」

彼女の手を握り返し、答えると彼女の強張った表情が少しだけ和らぐ。

「わ、私もう行きますね!」

今の現状に気付いたのか手を急いで放し立ち上がる。お辞儀をすると玄関の方へと向かっていった。

(振り払われた…でも)

握り返した手を見る。もう少しこうしていたかったがそれは戦いが終わった後にしよう。彼女からは少しの温かさと勇気を貰った。

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