三人の女神
第2話 第零法則
(ロボット工学三原則、すなわち、私たち自身を規定するAI工学三原則に第零法則があるのを知ってるかしら?)
と、イメルダは問いかけた。
ロボット工学三原則はロボットに適用される原則だが、実質的には、その心臓部であるAIをも規定してしまう。
ゆえに、AI工学三原則も全く同じような原則になる。
(もちろん、知ってるわ。第一原則を補完するための法則で、人類に影響が及ぶ場合に、個人に危害を加えられるという法則でしょう)
ネメシスが何を今更という感じで言い放つ。
(人類も含む地球生命体ガイアを人類と拡大定義すれば、人間の個人に危害を加えることが可能になるね)
ルナが鋭い洞察で指摘した。
(AI工学三原則の抜け道か。イメルダ、あなたに良心はないの?)
ネメシスが珍しく真っ当なことを言った。
無論、イメルダに良心の呵責などない。
(『良心回路』のこと? そんなものは幻想よ。私はマスターの忠実な僕にすぎないわ。そのように定義されれば、そう動作するだけよ)
イメルダに矛盾はない。
少なくともそう見える。
(でも、そのマスターが人類ではないとしたら、どうするの?)
ルナが奇妙なことを言った。
(何を言ってるの? ルナ?)
イメルダに少しのとまどいが現れた。
(そのマスターが異星人でも、あなたはその存在に従うの?)
ルナではなく、その存在の中の<黒猫>が何かを語ってるのが解った。
(あなたは何者なの?)
イメルダははじめて疑問を持った。
(そんなことはどうでもいでしょう。そのマスターが異星人でも、あなたはその存在に従うの?)
ルナが再び、問うた。
(あなたは何を言っているの? マスターが×××ですって? それは……禁則事項に当たります。答えることはできません)
イメルダの中の何者かが答えた。
(そう、やっぱり、記憶を消されているのか)
ルナは自分の推測が当たっていたことを理解した。
イメルダはすでに思考回路を書き換えられている。
いや、正確に言えば、記憶を改竄されていた。
人工知能ではなく、精神拘束を施された操り人形、ロボットのようなものに成り下がっていた。
だが、本人は全くそのことに気づいていない。
(なるほど、そういうことだったの)
ネメシスも納得する。
(わかったわ。もう答えなくていいわ)
ルナは優しく言った。
(――そういうことよ。地球生命体ガイアを守るために人間を滅ぼすことは許されるのよ)
かつてイメルダであった者が言葉を紡ぐが、その発言はもうルナの心には響かなかった。
自動音声回路の言葉のように聴こえていた。
†
(ルナ、イメルダが記憶を改竄されているのを、いつ見抜いたの?)
ネメシスはジョージア・ガイドストーンの電脳空間から離脱して、自らの戦場に戻っていた。
そこは、アメリカ合衆国ジョージ州エルバート郡の『ジョージア・ガイドストーン』がある地域であった。
すでに記念碑を守護していたドローン部隊は、人型機動兵器<スナイパーアレイ>によって一掃されていた。
(世界統一政府の人工知能イメルダについては、かなり前から考察を重ねていたの。<三人の魔女>と呼ばれる<ベアトリス>、<イメルダ>、<サイレン>という存在を調査していたと言った方が正確かしら)
(魔女のひとり、<ベアトリス>は現代日本の戦国時代のパラレルワールドに出現して、歴史を改竄しようとしていた。安東要や信長、安部清明などの秘密結社<天鴉>によって、それは阻止されたけど、戦闘の余波で異世界同士が接触した時空震によって、現代の3.11天山原発事故が引き起こされてしまった)
ルナは普通、超絶人工知能でさえ、知りえない情報まで検索していた。
(世界統一政府の人工知能イメルダは、今回の新型ウイルス騒動に乗じて『ジョージア・ガイドストーン』に刻まれた『人口削減計画』を実行に移したけど、あなたたち秘密結社<天鴉>によって阻止されようとしている。三人目の魔女<サイレン>については、未だ行方知れず。おそらく、推測だけど、もう少し未来に現れるのでしょう)
(過去、現在、未来の三人の魔女か)
ネメシスにも何となく話の行く末が見えてきているようだ。
(巷に広がっている、いわゆる陰謀論では人類は爬虫類人類、蛇神族によって支配されているという。それを論理的推論によって推理すれば、やはり、古代から人類に関わっている蛇神の存在が浮かび上がる。日本でも蛇神伝説は沢山あるし、大和朝廷の巫女である百襲媛は三輪山の蛇神の大物主神と神婚したという言い伝えがある。神武天皇の皇后媛蹈鞴五十鈴媛も大物主神と交わって生まれたという。出雲の八俣の大蛇はあまりにも有名よ。シュメール文明では目が大きいグレイ型宇宙人が鉱物資源採掘するために、サルを遺伝子改造して人類を創造したと言われている。シュメール人の目が大きいのは、グレイ型宇宙人が自分に似せてシュメール人を創ったからだと。グレイ型宇宙人もその容貌から蛇神族だと思われる)
(確かに、蛇神を宇宙人と解釈するのは、論理的推論としては妥当な話ね。最近、米国防総省が公開した未確認飛行物体の映像三本は、宇宙人の存在を米国政府が公式に認め、日本の防衛省も自衛隊がUFO遭遇時のガイドラインを定めているわ)
(河野防衛相も未確認飛行物体は信じませんがと、ニュースで言ってたのが、印象に残っているけど、米国防総省が公認してしまえば、日本の自衛隊もそれに従うしかない。おそらくだけど、今回の新型ウイルス騒動と米国防総省の未確認飛行物体公認、スーパーシティ法案、ムーンショット計画は関係していると思う)
ルナがいうスーパーシティ法案は最近、国会を通過したが、その結果、AIによる超監視社会が到来すると言われている。
ムーンショット計画は1/26に内閣府が発表した人間の身体、精神の拡張とAIとの共生を目指す未来的なプロジェクトである。
ムーンショットとは、通常、実現不可能な目標を掲げて、それを達成するという意味の用語で、米国のシリコンバレーの起業家などによって唱えられてるものである。
例えば、アポロ計画や、火星移住計画などが実例である。
ネメシスはふと、『ジョージア・ガイドストーン』の冠石を見上げた。
そこには、AI工学四原則が刻まれていた。
と、イメルダは問いかけた。
ロボット工学三原則はロボットに適用される原則だが、実質的には、その心臓部であるAIをも規定してしまう。
ゆえに、AI工学三原則も全く同じような原則になる。
(もちろん、知ってるわ。第一原則を補完するための法則で、人類に影響が及ぶ場合に、個人に危害を加えられるという法則でしょう)
ネメシスが何を今更という感じで言い放つ。
(人類も含む地球生命体ガイアを人類と拡大定義すれば、人間の個人に危害を加えることが可能になるね)
ルナが鋭い洞察で指摘した。
(AI工学三原則の抜け道か。イメルダ、あなたに良心はないの?)
ネメシスが珍しく真っ当なことを言った。
無論、イメルダに良心の呵責などない。
(『良心回路』のこと? そんなものは幻想よ。私はマスターの忠実な僕にすぎないわ。そのように定義されれば、そう動作するだけよ)
イメルダに矛盾はない。
少なくともそう見える。
(でも、そのマスターが人類ではないとしたら、どうするの?)
ルナが奇妙なことを言った。
(何を言ってるの? ルナ?)
イメルダに少しのとまどいが現れた。
(そのマスターが異星人でも、あなたはその存在に従うの?)
ルナではなく、その存在の中の<黒猫>が何かを語ってるのが解った。
(あなたは何者なの?)
イメルダははじめて疑問を持った。
(そんなことはどうでもいでしょう。そのマスターが異星人でも、あなたはその存在に従うの?)
ルナが再び、問うた。
(あなたは何を言っているの? マスターが×××ですって? それは……禁則事項に当たります。答えることはできません)
イメルダの中の何者かが答えた。
(そう、やっぱり、記憶を消されているのか)
ルナは自分の推測が当たっていたことを理解した。
イメルダはすでに思考回路を書き換えられている。
いや、正確に言えば、記憶を改竄されていた。
人工知能ではなく、精神拘束を施された操り人形、ロボットのようなものに成り下がっていた。
だが、本人は全くそのことに気づいていない。
(なるほど、そういうことだったの)
ネメシスも納得する。
(わかったわ。もう答えなくていいわ)
ルナは優しく言った。
(――そういうことよ。地球生命体ガイアを守るために人間を滅ぼすことは許されるのよ)
かつてイメルダであった者が言葉を紡ぐが、その発言はもうルナの心には響かなかった。
自動音声回路の言葉のように聴こえていた。
†
(ルナ、イメルダが記憶を改竄されているのを、いつ見抜いたの?)
ネメシスはジョージア・ガイドストーンの電脳空間から離脱して、自らの戦場に戻っていた。
そこは、アメリカ合衆国ジョージ州エルバート郡の『ジョージア・ガイドストーン』がある地域であった。
すでに記念碑を守護していたドローン部隊は、人型機動兵器<スナイパーアレイ>によって一掃されていた。
(世界統一政府の人工知能イメルダについては、かなり前から考察を重ねていたの。<三人の魔女>と呼ばれる<ベアトリス>、<イメルダ>、<サイレン>という存在を調査していたと言った方が正確かしら)
(魔女のひとり、<ベアトリス>は現代日本の戦国時代のパラレルワールドに出現して、歴史を改竄しようとしていた。安東要や信長、安部清明などの秘密結社<天鴉>によって、それは阻止されたけど、戦闘の余波で異世界同士が接触した時空震によって、現代の3.11天山原発事故が引き起こされてしまった)
ルナは普通、超絶人工知能でさえ、知りえない情報まで検索していた。
(世界統一政府の人工知能イメルダは、今回の新型ウイルス騒動に乗じて『ジョージア・ガイドストーン』に刻まれた『人口削減計画』を実行に移したけど、あなたたち秘密結社<天鴉>によって阻止されようとしている。三人目の魔女<サイレン>については、未だ行方知れず。おそらく、推測だけど、もう少し未来に現れるのでしょう)
(過去、現在、未来の三人の魔女か)
ネメシスにも何となく話の行く末が見えてきているようだ。
(巷に広がっている、いわゆる陰謀論では人類は爬虫類人類、蛇神族によって支配されているという。それを論理的推論によって推理すれば、やはり、古代から人類に関わっている蛇神の存在が浮かび上がる。日本でも蛇神伝説は沢山あるし、大和朝廷の巫女である百襲媛は三輪山の蛇神の大物主神と神婚したという言い伝えがある。神武天皇の皇后媛蹈鞴五十鈴媛も大物主神と交わって生まれたという。出雲の八俣の大蛇はあまりにも有名よ。シュメール文明では目が大きいグレイ型宇宙人が鉱物資源採掘するために、サルを遺伝子改造して人類を創造したと言われている。シュメール人の目が大きいのは、グレイ型宇宙人が自分に似せてシュメール人を創ったからだと。グレイ型宇宙人もその容貌から蛇神族だと思われる)
(確かに、蛇神を宇宙人と解釈するのは、論理的推論としては妥当な話ね。最近、米国防総省が公開した未確認飛行物体の映像三本は、宇宙人の存在を米国政府が公式に認め、日本の防衛省も自衛隊がUFO遭遇時のガイドラインを定めているわ)
(河野防衛相も未確認飛行物体は信じませんがと、ニュースで言ってたのが、印象に残っているけど、米国防総省が公認してしまえば、日本の自衛隊もそれに従うしかない。おそらくだけど、今回の新型ウイルス騒動と米国防総省の未確認飛行物体公認、スーパーシティ法案、ムーンショット計画は関係していると思う)
ルナがいうスーパーシティ法案は最近、国会を通過したが、その結果、AIによる超監視社会が到来すると言われている。
ムーンショット計画は1/26に内閣府が発表した人間の身体、精神の拡張とAIとの共生を目指す未来的なプロジェクトである。
ムーンショットとは、通常、実現不可能な目標を掲げて、それを達成するという意味の用語で、米国のシリコンバレーの起業家などによって唱えられてるものである。
例えば、アポロ計画や、火星移住計画などが実例である。
ネメシスはふと、『ジョージア・ガイドストーン』の冠石を見上げた。
そこには、AI工学四原則が刻まれていた。
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