シーマン

文戸玲

嫌な予感


「さ,電話かけよか」
「誰にかけんねん」
「大貴,お前の頭はスポンジか。すっかすかやないか。まあ,スポンジならまだましじゃ。いくらでも吸収出来るけんの」
「何訳の分からん事言ってんねん。親父にかけるってことなら,却下やしな」
「分かっとるのう。さすがミスタースポンジ。スポンジボブもびっくりじゃ。ほれ,清介。スマホとれ」

 そう言ってシーマンが顎をしゃくった先には,大貴のスマホが置かれている。
 もちろん,大貴がそれを許すはずもなく,テーブルに置かれたスマホをけが人とは思えない俊敏な動きでつかんだ。

 シーマンは別に焦った様子もなく,泡をこぽぽ,と噴き出して不敵な笑みを浮かべた。
 嫌な予感がしたのは,おれだけではないはずだ。
 大貴の方を見ると,額に嫌な汗を浮かべている。




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