シーマン
イソジン
朝日に目を細めながら,おれは北大路通りをジョギングしていた。なんとなく通る道も,気にしてみると美味しそうなお店があったり,おしゃれな雑貨屋さんがあったりと,新しい発見がたくさんある。何よりも驚いた発見と言えば,自分がこうして朝から身体を鍛えるために運動をする気力があることだ。
「自分を変えたいんなら,まずは見た目から変えるんよ」
そんなことで解決するか,と話半分で聞いていたが,いざ実行に移すといろいろな変化があった。
まず,心が軽い。
今までのおれの堕落した生活っぷりは,ナマケモノも呆れて自分に誇りを持たせてもおかしくないようなものだった。
朝なんて来なければいいのに,と思いながら気づけば寝落ちをして,一限目が終わるころに目が覚める。もう授業には間に合わないのだからと開き直って,ベランダに出て死んだ魚のような目をして赤マルをふかす。そうしているとかなりの確率でスマホに通知がくる。
すまん。出席カード出しててくれへん?
わずかな可能性を期待した大貴から連絡が来るのだが,おれは決まってインカメで自撮りの動画を撮影し,ケカメラに向かって副流煙をぶちまける。
しばらくすると,
臭いねん。イソジンの風呂にでも浸かってそのままおぼれ死ね
やらなんやら汚い言葉が帰ってくるのを楽しむ人生だ。
昼前の授業にはなんとか出ようと決心したはずなのに,煙草をふかしながら携帯ゲームをしているといつの間にやら夕方になっていたなんてこともざらだった。
それがどうだ。
朝日とともに目覚めて活動することがこんなにも人間らしくて素晴らしいことだとは!
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