【完結】好きな人にされたら嬉しい50のコト

小海音かなた

Chapter.86

 家まで送ってくれるという由上さんに、もう遅いから悪いですって断ろうとしたら、もう遅いから送って行くんだよって返された。あぁ、そうか。そうだよねって納得して、家の前まで送ってもらった。
 誰かの“彼女”になるのが初めてだから、どう対応していいものかわからなくて、しばらく戸惑ってしまいそうだなって思う。
 玄関のドアを閉めて、ただいまの挨拶もそこそこに自室に戻って窓の外を見ると、由上さんが来た道を一人で戻る姿が見えた。
 由上さんが、私の、カレシ……。
 口の中で小さく言って、嬉しさを噛みしめる。
 あふれる想いを書き留めておきたくて、ルーズリーフを取り出したところで、部屋のドアがノックされた。
「みーなぁ、お風呂あいたよ~」
 室外からのおねーちゃんの声に慌ててルーズリーフを元に戻して、
「はぁい、入ります~」
 返事をした。

 湯船につかって、今日のことを思い返す。朝家を出るときはこんな気持ちで帰宅するなんて思ってもみなかった。
 由上さんの『文化祭が終わるまで』っていうのは、こういうことだったんだってわかって、やっと安心もできた。そ、それにしても大胆だなぁ。けど、変な風に噂として広がるよりはありがたかったかも。
 もっと二人でこっそり気持ちを確かめ合うってシチュエーションにも憧れたりしてたけど、それ以上にすごいことしてもらったんじゃない? って時間差でキャ~! って浮足立ってる。
 さっきまでのことを思い返したりこの先のことを想像したりしてたら、思っていたより時間が経ってたみたいで、ちょっとのぼせた。
 それでもつい考えてしまう。由上さん、いまなにしてるかな、おうち着いたかな、私と同じように、キャ~ってなってるかな……。
 いままでもいまなにしてるかなって考えたことあるけど、今日からはその先に思うことが少し違ってきそう。
 文化祭が始まる前までの私に教えてあげたい。頑張って耐えたから、ご褒美もらえたよ! って。まぁ、学校サボっちゃったけど……あれがなかったらまた違う未来になってたんだろうな。
 ニマニマしながら髪や身体を洗ってお風呂を出る。部屋に戻ったらスマホにメッセが届いていた。

sowa{帰宅しました〕
sowa{今日はありがとう〕
sowa{これからもよろしくね〕

 そんな報告が嬉しくて、スキンケアもそこそこに返事を打つ。少しのやりとりをして、お互いに切りがなさそうなことに気づいて、おやすみなさいって送りあって終わらせた。
 大丈夫、私たちには明日も明後日も、そのあともずっと、一緒にいられる時間がある。だから今日は、おやすみなさい。

 嬉しい気持ちのまま眠ったら、夢の中でも嬉しい出来事があった。
 起きたときに内容は忘れてしまったけど、昨日からの幸福感はいまも続いていた。でもちょっと実感がなくて不安になって、メッセの画面を開いたら昨日の夜のやりとりが残っていて、またあらためて安心した。

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