箱庭の魔王様は最強無敵でバトル好きだけど配下の力で破滅の勇者を倒したい!
55・変則攻撃のバイケン
「マズハ儂カラ、オ相手イタシマショウ」
独眼侍ジュウベイの背後から静かに出てきたリザードマンがキングの正面に立つ。
緑色でツルツルの鱗肌を有したバイケンは、覆面すら被ってなかったが、忍者のような黒装束を着ていた。
その上にプロテクターのようなレザーアーマーを纏っている。
体術による動きやすさを優先させた軽装備であった。
そのバイケンが先が割れた長い舌をシュルリと延ばしたのちに、後ろ腰に下げていた武器を取り出した。
左手に鎌、右手に鎖分銅。
鎖は両手に持った武器に結ばれている。
鎖鎌だ。
鎌の尻に繋がった鎖を右手で垂らしていた。
予想した通りだ。
「鎖鎌だな……」
やはりである。
バイケンが俺の知ってる宍戸梅軒と類似するキャラならば、鎖鎌を武器として仕様しなければ嘘であろう。
俺の横に並ぶキルルが言った。
『なんですか、あれ。武器ですか? でも、鎌ですよね?』
「そうだ、鎖鎌だ。あの鎖で中距離攻撃を仕掛け、近付かれたら鎌で応戦するってタイプの武器だ」
『なんか、変則的な武器ですね』
「変則的だからこそ効果的だ。だが、故に扱いが難しい武器でもある。あんな武器でどのように戦うのかが興味深いぞ」
確かに興味深い。
鎖鎌なんて使って戦う野郎を俺は見たことが無い。
時代劇のワンシーンで観たが、それは編集された結果、リアルファイトとは程遠い代物だ。
実戦で、あんな扱いが難しい武器を使って本当に戦えるのだろうか?
その疑問が今解かれる。
バイケンが頭上で鎖を振り回しだした。
キングも光るシミターを鞘から引き抜いた。
両者の距離は5メートルちょっとだろうか──。
まだ、バイケンの鎖分銅が有利な間合いである。
それでもキングの脚力ならば、瞬時に間合いを詰められる距離でもあろう。
初弾の鎖分銅を躱してキングが刀の間合いに入ったのならば圧倒的に有利である。
刀と鎌とでは接近戦の有利性が段違いだ。
鎌とは所詮は農具である。
リーチも短い。
敵を殺傷することを目的に作られた刀とは違うのである。
「勝負は一瞬でつくぞ。見逃すなよ」
『はい、魔王様!』
キングは光るシミターを右手で持って中段に構えている。
体は少し斜めで、右足が前である。
いつもの構えだ。
相手が変則的な攻撃を仕掛けてくると思われる鎖鎌でも変わらない。
バイケンの頭上でビュンビュンと音を鳴らして鎖分銅が回されていた。
その回転の幅がキングの飛び込むタイミングを牽制している。
バイケンが述べる。
「ヤハリ未知ノ武器ヲ相手二先手ヲ出スノハ怖イカ?」
キングが答える。
「私がその武器を恐れていると?」
「違ウカ?」
言うなり頭上で回されていた鎖分銅が静かに伸びた。
不意打ち的な動きである。
右から左に高速で伸び迫る鎖分銅の奇襲をキングが顎を引いて紙一重で回避する。
「ホホウ、今ノヲ躱セルカ」
静かな奇襲を回避された鎖分銅が長さを戻して再びバイケンの頭上で回り出す。
「なるほど、速くて変則だな。しかも正確だ。奇策にも向いている。だが、それだけだ」
「目デ追エルノカ?」
「もっと試してみろ」
「ナラバ!」
今度は頭上で回していた鎖分銅を右左と縦回転に振るいだした。
バイケンは眼前で鎖分銅を∞の字に振るう。
困惑を誘う動きである。
「今度ハ複雑二参ル!」
刹那、カツンっと小さな音が鳴った。
するとバイケンの足元にあった小石が一つ跳ね飛んだ。
鎖分銅を縦回転させた際に分銅の先で弾いたのだろう。
斜め下から弾かれる礫がキングの顔面に迫る。
なんとも正確なショットだった。
しかし、キングは光るシミターの厚い刃を盾に礫を弾く。
カァーーンと金属音が響いた後に、ドツリと音が轟いた。
そのドツリという音の後にキングの姿勢がグラリと揺れる。
「くぅぅ……」
苦痛に表情を歪めたキングの姿勢が僅かに落ちた。
そのキングの右足の脛が抉られている。
弁慶の泣き所から鮮血が吹いていた。
「二連ノ攻撃ハ躱セナカッタカ。未熟ヨノォ」
「おのれ……」
足元の石礫を弾いた後に、間髪入れずに下段の鎖分銅攻撃。
キングは弾かれた小石に気を取られて二段目の下段鎖分銅を見逃したのだ。
バイケンは鎖分銅を複雑に回しながら言う。
「小賢シイト、思ウカネ?」
「なに……?」
「複雑二武器ヲ操リ、対戦者ヲ惑ワセ不意ヲ狙ウ。ソノ戦術ガ小賢シイト思ウカネ?」
キングは脛のダメージを堪えながら背筋を延ばしてから堂々と述べた。
「正直言って小賢しいと思う!」
バイケンは溜め息を溢してから肩を落とす。
「儂モ巨漢ヲ有シテオレバ、剣ヲ振ルイ、堂々ト戦ッタカモ知レナイ。ダガ、儂ハ残念ナガラ矮躯……。故二矮躯ニハ矮躯ノ戦イカタガアル。ソレガ曲芸的ナ技デアロウトモ……」
「良くしゃべるな、蜥蜴」
「黙レ、犬ガ!!」
再びバイケンの鎖分銅が伸びて迫って来た。
右から左に円を描きながら伸び迫る鎖分銅はキングの頭部を狙っていた。
しかしキングは身を屈めて回避する。
するとキングの頭上を過ぎた鎖分銅が、左側に在った家の柵に絡み付く。
外した?
ファンブルだ。
しかも障害物にぶつけて絡まった。
否、違う!
バイケンは絡まった鎖を力任せに引き寄せて木の柵を破壊した。
壊れた柵の破片がキングとバイケンの間に舞う。
「ゼェァァアアア!!」
その柵の破線をバイケンが鎖分銅で弾いて飛ばした。
弾かれ飛んで行く先は当然ながらキングを狙っている。
しかも弾かれた木片は複数だった。
「またか!」
複数迫る木の破片。
そのド真ん中を裂いて飛んでくる鎖分銅の攻撃。
それらの連携攻撃には回避の隙間は無い。
巧みな攻撃である。
「同じような小技が何度も通じるか!!」
叫んだキングが前に走った。
その体に木片がズブズブと突き刺さる。
更に飛んで来た鎖分銅を左腕で受け止めた。
鎖分銅がガシャガシャと音を鳴らしながらキングの腕に巻き付いて行く。
それでも前に走るキングがシミターを振りかぶりながらバイケンに迫った。
「スベテ食ライナガラ直進スルカ!!」
「躱せぬならば躱さない。それだけだ!!」
バイケンの眼前に迫ったキングが袈裟斬りにシミターを振り下ろした。
その攻撃をバイケンは鎌を盾に受け止めようと試みる。
だが、上に翳した鎌が絶たれた。
鎌の刃が斬り折られる。
そして、そのままバイケンの胸元が袈裟斬りに割かれた。
斬った!
するとバイケンの胸から鮮血が飛び散る。
「ゥゥゥガアアア!!!」
鮮血と共にバイケンの断末魔が叫ばれた。
一太刀だ。
キングがバイケンを一太刀で切り捨てた。
しかも、致命傷な一撃である。
白目を向いたバイケンが、そのまま力なくうつ伏せに倒れてしまう。
決着───。
緻密な秘策が強引な強行に破れ去った。
キングの勝利である。
独眼侍ジュウベイの背後から静かに出てきたリザードマンがキングの正面に立つ。
緑色でツルツルの鱗肌を有したバイケンは、覆面すら被ってなかったが、忍者のような黒装束を着ていた。
その上にプロテクターのようなレザーアーマーを纏っている。
体術による動きやすさを優先させた軽装備であった。
そのバイケンが先が割れた長い舌をシュルリと延ばしたのちに、後ろ腰に下げていた武器を取り出した。
左手に鎌、右手に鎖分銅。
鎖は両手に持った武器に結ばれている。
鎖鎌だ。
鎌の尻に繋がった鎖を右手で垂らしていた。
予想した通りだ。
「鎖鎌だな……」
やはりである。
バイケンが俺の知ってる宍戸梅軒と類似するキャラならば、鎖鎌を武器として仕様しなければ嘘であろう。
俺の横に並ぶキルルが言った。
『なんですか、あれ。武器ですか? でも、鎌ですよね?』
「そうだ、鎖鎌だ。あの鎖で中距離攻撃を仕掛け、近付かれたら鎌で応戦するってタイプの武器だ」
『なんか、変則的な武器ですね』
「変則的だからこそ効果的だ。だが、故に扱いが難しい武器でもある。あんな武器でどのように戦うのかが興味深いぞ」
確かに興味深い。
鎖鎌なんて使って戦う野郎を俺は見たことが無い。
時代劇のワンシーンで観たが、それは編集された結果、リアルファイトとは程遠い代物だ。
実戦で、あんな扱いが難しい武器を使って本当に戦えるのだろうか?
その疑問が今解かれる。
バイケンが頭上で鎖を振り回しだした。
キングも光るシミターを鞘から引き抜いた。
両者の距離は5メートルちょっとだろうか──。
まだ、バイケンの鎖分銅が有利な間合いである。
それでもキングの脚力ならば、瞬時に間合いを詰められる距離でもあろう。
初弾の鎖分銅を躱してキングが刀の間合いに入ったのならば圧倒的に有利である。
刀と鎌とでは接近戦の有利性が段違いだ。
鎌とは所詮は農具である。
リーチも短い。
敵を殺傷することを目的に作られた刀とは違うのである。
「勝負は一瞬でつくぞ。見逃すなよ」
『はい、魔王様!』
キングは光るシミターを右手で持って中段に構えている。
体は少し斜めで、右足が前である。
いつもの構えだ。
相手が変則的な攻撃を仕掛けてくると思われる鎖鎌でも変わらない。
バイケンの頭上でビュンビュンと音を鳴らして鎖分銅が回されていた。
その回転の幅がキングの飛び込むタイミングを牽制している。
バイケンが述べる。
「ヤハリ未知ノ武器ヲ相手二先手ヲ出スノハ怖イカ?」
キングが答える。
「私がその武器を恐れていると?」
「違ウカ?」
言うなり頭上で回されていた鎖分銅が静かに伸びた。
不意打ち的な動きである。
右から左に高速で伸び迫る鎖分銅の奇襲をキングが顎を引いて紙一重で回避する。
「ホホウ、今ノヲ躱セルカ」
静かな奇襲を回避された鎖分銅が長さを戻して再びバイケンの頭上で回り出す。
「なるほど、速くて変則だな。しかも正確だ。奇策にも向いている。だが、それだけだ」
「目デ追エルノカ?」
「もっと試してみろ」
「ナラバ!」
今度は頭上で回していた鎖分銅を右左と縦回転に振るいだした。
バイケンは眼前で鎖分銅を∞の字に振るう。
困惑を誘う動きである。
「今度ハ複雑二参ル!」
刹那、カツンっと小さな音が鳴った。
するとバイケンの足元にあった小石が一つ跳ね飛んだ。
鎖分銅を縦回転させた際に分銅の先で弾いたのだろう。
斜め下から弾かれる礫がキングの顔面に迫る。
なんとも正確なショットだった。
しかし、キングは光るシミターの厚い刃を盾に礫を弾く。
カァーーンと金属音が響いた後に、ドツリと音が轟いた。
そのドツリという音の後にキングの姿勢がグラリと揺れる。
「くぅぅ……」
苦痛に表情を歪めたキングの姿勢が僅かに落ちた。
そのキングの右足の脛が抉られている。
弁慶の泣き所から鮮血が吹いていた。
「二連ノ攻撃ハ躱セナカッタカ。未熟ヨノォ」
「おのれ……」
足元の石礫を弾いた後に、間髪入れずに下段の鎖分銅攻撃。
キングは弾かれた小石に気を取られて二段目の下段鎖分銅を見逃したのだ。
バイケンは鎖分銅を複雑に回しながら言う。
「小賢シイト、思ウカネ?」
「なに……?」
「複雑二武器ヲ操リ、対戦者ヲ惑ワセ不意ヲ狙ウ。ソノ戦術ガ小賢シイト思ウカネ?」
キングは脛のダメージを堪えながら背筋を延ばしてから堂々と述べた。
「正直言って小賢しいと思う!」
バイケンは溜め息を溢してから肩を落とす。
「儂モ巨漢ヲ有シテオレバ、剣ヲ振ルイ、堂々ト戦ッタカモ知レナイ。ダガ、儂ハ残念ナガラ矮躯……。故二矮躯ニハ矮躯ノ戦イカタガアル。ソレガ曲芸的ナ技デアロウトモ……」
「良くしゃべるな、蜥蜴」
「黙レ、犬ガ!!」
再びバイケンの鎖分銅が伸びて迫って来た。
右から左に円を描きながら伸び迫る鎖分銅はキングの頭部を狙っていた。
しかしキングは身を屈めて回避する。
するとキングの頭上を過ぎた鎖分銅が、左側に在った家の柵に絡み付く。
外した?
ファンブルだ。
しかも障害物にぶつけて絡まった。
否、違う!
バイケンは絡まった鎖を力任せに引き寄せて木の柵を破壊した。
壊れた柵の破片がキングとバイケンの間に舞う。
「ゼェァァアアア!!」
その柵の破線をバイケンが鎖分銅で弾いて飛ばした。
弾かれ飛んで行く先は当然ながらキングを狙っている。
しかも弾かれた木片は複数だった。
「またか!」
複数迫る木の破片。
そのド真ん中を裂いて飛んでくる鎖分銅の攻撃。
それらの連携攻撃には回避の隙間は無い。
巧みな攻撃である。
「同じような小技が何度も通じるか!!」
叫んだキングが前に走った。
その体に木片がズブズブと突き刺さる。
更に飛んで来た鎖分銅を左腕で受け止めた。
鎖分銅がガシャガシャと音を鳴らしながらキングの腕に巻き付いて行く。
それでも前に走るキングがシミターを振りかぶりながらバイケンに迫った。
「スベテ食ライナガラ直進スルカ!!」
「躱せぬならば躱さない。それだけだ!!」
バイケンの眼前に迫ったキングが袈裟斬りにシミターを振り下ろした。
その攻撃をバイケンは鎌を盾に受け止めようと試みる。
だが、上に翳した鎌が絶たれた。
鎌の刃が斬り折られる。
そして、そのままバイケンの胸元が袈裟斬りに割かれた。
斬った!
するとバイケンの胸から鮮血が飛び散る。
「ゥゥゥガアアア!!!」
鮮血と共にバイケンの断末魔が叫ばれた。
一太刀だ。
キングがバイケンを一太刀で切り捨てた。
しかも、致命傷な一撃である。
白目を向いたバイケンが、そのまま力なくうつ伏せに倒れてしまう。
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