箱庭の魔王様は最強無敵でバトル好きだけど配下の力で破滅の勇者を倒したい!

ヒィッツカラルド

44・設定厨キルル

ひとまず会議が解散して、皆が霊安室から帰って行った。

今、霊安室に残っているのは俺とキルルだけである。

あ~、あとジャイアントカピバラのアルフォンスの野郎も居やがるな。

大型齧歯類が部屋の隅でボケ~っとこちらを見てやがる。

そして、キルルはルンルンと鼻歌を奏でながら俺の洗濯物を畳んでいた。

なんだか楽しそうだ。

すると畳み終わった洗濯物をタンスに戻して片付ける。

最近では霊安室も生活感に溢れていた。

タンスだけでなく、ベッドも持ち込まれているし、その他の家具も揃っている。

ダブルの大きなベッドであるのだが、キルルが添い寝をしてくれることはない。

残念だ……。

てか、キルルは幽霊だから寝ない。

俺が寝ている間も枕元で編み物に励んでいるのだ。

俺が履いてる毛糸のパンツもキルルが編んでくれた物である。

更に会議用の長テーブルにセットの椅子が十脚、それとは別に俺専用の玉座が置かれていた。

「この部屋も少し手狭になってきたな~」

広い室内を見回しながら俺がぼやいた。

『そうですね。流石に会議用のテーブルとかを寝室に置くのはミスマッチではないでしょうか』

「やっぱりそうだよね。今度ベッドルームは別に作ってもらおうかな」

『それも魔王城の修復が済んだらですかね』

「魔王城?」

『この城を拠点として活動するならば、ここを墓城と呼ぶのは的確ではないと思うのですよ。だから魔王城に改名してはどうでしょうか?』

ここを墓城と名付けたのはキルルなんだけどな……。

「俺はキルルがそう呼びたいなら、それで構わんぞ」

『本当ですか、魔王様!』

キルルが嬉しそうに微笑んだ。

「ああ、構わんぞ」

俺的には名前なんてどうでもいいのだ。

それはただの記号である。

そうキルルが呼びたいのなら呼ばせてやるよ。

『では、決めました!』

「何を?」

『この城の名前は、魔王城ヴァルハラです!』

「うわ、厨二臭い……」

思わず本音が声に出てしまった。

『駄目ですか……?』

キルルが眉をしかめながら訊いてきた。

「でも、キルルらしいネーミングだな。俺は構わんぞ……」

『やったー!』

キルルが可愛らしく跳ね回る。

『それじゃあ、下の町の名前は城下町ソドムでどうでしょうか!?』

またまた厨二臭い名前が出たな。

でも、なんでもいいや。

「ああ、俺は構わんぞ。キルルの好きにしろ」

『では、決まりです!』

「じゃあ、城と町の名前が決まったところでキングとアンドレアに知らせてくるか。よし、行くぞキルル」

するとキルルがタンスの中から洋服を取り出して俺に言う。

『魔王様、外に出るなら服を着てくださいね!』

「あ~、も~、キルルはいちいち細かいな~」

俺はチンチロリンの裏側をボリボリとかきながら面倒臭そうに言った。

でも、キルルは困った表情で俺に服を差し出すばかりだ。

「着ないとダメか?」

『とにかく、全裸で町を出歩くのは禁止ですよ!』

「でもよ、特に毛糸のパンツはチクチクして痒いんだよね……」

『せっかく僕が徹夜で編んだのに……』

キルルが泣きそうな顔で俯いた。

「はいはい、分かった分かった。着ますよ、穿きますよ」

俺はキルルから服を受け取ると着込んでから墓城改めて魔王城ヴァルハラを出た。

城下町ソドムに向かう。

その途中で、魔王城の階段を降りながらキルルが俺に話しかけてくる。

『魔王様……』

「なんだ、キルル?」

『縦穴鉱山の町の名前も考えてみました』

またか……。

「なんだ、言ってみろ」

『縦穴鉱山都市、マチュピチュ、なんてどうでしょうか?』

「マチュピチュ……」

マチュピチュって、天界に一番近い遺跡じゃあなかったっけ?

下に潜ってる町の名前じゃあないだろう。

まあ、俺が前世で居た世界の常識は通じないってわけか。

『駄目でしょうか?』

「いや、いいんじゃないのか……」

それにしても二つ名が縦穴鉱山都市って……。

都市だよ、都市……。

厨二臭いって問題以上に、あのオークの住み家を都市にまで育てるつもりかよ……。

こいつの設定病は壮大だな……。

流石はキルルだぜ!

まあ、とにかく俺たちは城下町ソドムに降りて行く。


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