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ギミックハウス~第495代目当主~

北きつね

第二十八話 【帝国】魔王の所業


 陛下からの呼び出しだ。状況を報告しろとのことだ。
 陛下と宰相に連絡をしたので、当然の反応だ。それも、他の予定を飛ばしての面会だ。

 昨日の夕方に、ギルド職員と一緒に書状を提出した件に関してだ。

 朝には、呼び出された。ギルドは、職員ではなく、ボイドと名乗った、隊員と一緒に戻ってきた者が、会議室に呼ばれている。

 会議室に入ると、ギルドのボイドは既に着ていた。
 陛下に臣下の礼をしてから、指示された椅子に座る。

「ティモン!本当なのか?」

 陛下から、想像していたのとは違う質問が来る。
 陛下が聞きたいのは、”目”が潰されたことだ。

「はい。陛下。森に放っていた、我らの目は全て・・・。潰されました」

 7番隊の能力を買ってくれているのを裏切る形になってしまって、申し訳ない思いが強まる。

「ギルドも同じです。もっとも、私は、潰された一人です」

「ギルドの情報部か?ボイドとか言ったな。貴殿と同じく、森に居た者が捕縛されたのか?」

「そうです。今回の魔王は怖いですよ。自ら、私の前に出てきました」

「何?支配に成功したのか?」

「無理でした。名乗りを上げてくれたのですが、私の力では弾かれました」

「・・・。貴殿の力で無理なら、魔王の支配・・・」

「現実的ではないでしょう。敵意を買うだけです。私の術がわかっても、何も気にしていない様子でした」

 この辺りの話は、昨晩、部下と一緒に話を聞いた。
 恐ろしい魔王だ。魔王が、捕らえた者の尋問を行うなど聞いたことがない。そして、魔王の名前と姿と種族が解った状態で、解放するとは思えない。

「それで・・・。書状に有った内容だが」

「間違いは無いでしょう。見ていないので、正確な事はわかりませんが、15番隊は全滅でしょう」

「なぜだ?」

「陛下、昨晩、部下から話を聞いてから、目と手を動かしました」

「ティモン。結果は?」

「15番隊だけではなく、違法奴隷を扱っていた者たちが全員・・・」

「そうか・・・。ボイド。貴殿の意見は?」

「私と7番隊の目が捕らえられていた位置は、結局どこなのか不明なままです。が、そこ場所から、魔人族の男女に連れられて、元奴隷の前に引き出されました」

「ボイド。元奴隷と言ったか?」

「はい。我も闇スキルが使えます。奴隷ならわかります。奴隷から解放されていました。それも、”呪”が見当たりませんでした」

 闇スキルを持っていれば、”呪”は確認できる。

「なに?」

 陛下も驚いていらっしゃる。
 当然だ。奴隷を解放する場合でも、”呪”は解除できない。”呪”を刻むのは、5番隊が持っている古代の秘宝アーティファクトが必要になる。それを解呪したのか?

 ”呪”は我々では刻むことが出来ない。アーティファクトが必要だ。
 アーティファクトで辛うじて解っているのは、”呪”が解除されると、”呪”を刻んだ者に”災い”となって返ってくる。
 恐ろしいのは、”刻んだ者”と、いう定義が曖昧なことだ。その場に居た者も”刻んだ者”になりえる。

 ”呪”の特性を考えると、ボイドは、15番隊が全滅したと考えた。

 我の考えと同じなので、頷いて同意を伝える。

「そうか、ティモン。それで、違法奴隷を扱っていたと思われる奴らは?」

 首を横にふる。
 全滅していた。”呪”によってなのかわからないが、全員が惨たらしい状態でみつかった。”呪”を返させるとは思っていなかったのだろう。そもそも、ヨストが説明しているとは思えない。アーティファクトは、”呪”によって奴隷を縛り付ける。通常の奴隷と同じ様に、首輪で縛り付けていたが、”心の臓”打ち込んだ楔が締め付ける。その他にも、命令に逆らえない状態に縛り付ける。返された時には、奴隷に与えた苦痛が一瞬で襲ってくる。目は、奴隷商たちの死を見て、発狂しそうになったと報告が上がってきた。

「陛下。ティモン殿。それに、ボイド殿。ボイド殿にお聞きしたい。殿下は?討伐部隊の生存は?」

「わかりません。魔王城に入っていったところまでは確認していますが、それ以降は・・・」

「そうか、救援物資と輜重兵に持たせた物資から、1ヶ月程度は持つはずだったな?」

「はい。陛下」

 宰相が答えるが、実際には”水”が最初に不足するだろう。ワインを大量に持っていっているが、魔王城の中で煮炊きが出来るとは思えない。冷たい食事が続けば士気が落ちる。報告から、一部の奴隷たちはすでに魔王に確保されている。

「ティモン。どう考える?」

「どちらでしょうか?」

 殿下は、絶望だろう。
 魔王からの伝言は、実施したほうがいいに決まっている。

「魔王からの伝言だ」

「陛下。違法奴隷と5番隊と15番隊が確保している者たちを、直ちに魔王城に送りましょう」

「うむ。宰相!」

「私も、ティモン殿と同じ意見です。魔王との対話が可能なら、対話での解決を考えるべきかと愚考します」

「対話か・・・。魔王との対話では、ギルドが得意だったな」

 陛下が、ボイドを睨みつけるが、ボイドは何を考えているのかわからない表情のまま陛下の問いかけに頭を下げるだけだ。

「陛下?」

「ティモン。5番隊と15番隊が確保している者たちを連れて、魔王城に向ってくれ、それから、書状を持っていって欲しい」

「はっ」

「陛下。帝都以外にも、違法奴隷が居ます。それらを、一掃するチャンスでは?」

「宰相に命じる。聖王国に与する愚か者を一掃せよ」

「はっ」

「ティモン。貴様たちに頼ってしまって申し訳ないが、宰相を助けてやってほしい」

「はっ必ず、陛下のご意思の通りに・・・」

「方法は、任せる。宰相と決めてくれ」

 陛下の言葉は、冷徹だが、民を考えてのことだ。ご自分で全てをかぶって、次世代に繋げるおつもりなのだ。陛下の代で、他国の狗になった貴族を一掃しなければ、帝国の屋台骨が折れてしまう。
 陛下と宰相は、何年も前から”これ”を待っていたのだ。

 魔王との会話が成り立つか・・・。賭けだ。しかし、神聖国や連合国との関係を断ち切るには最高のタイミングだ。

 宰相と詳細に詰めていく、部下たちが集めてくれた情報を基に、貴族たちを選別する。陛下からは、”王族でも容赦する必要はない”と言葉を貰っている。宰相も自分の命と引き換えに、この任務を遂行している。

「宰相も、貧乏くじを引きましたね」

「それは、ティモン殿も同じでは?」

 宰相からの言葉で笑いがこみ上げてくる。
 帝国は変わらなければならない。強国に、本当の強国に変わる。

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「それで、ボイド。魔王の印象を報告せよ」

「あれは無理です。対話や交渉という言葉を使っていましたが、魔王の気分の上で成り立つことで、コントロールは不可能です。コントロールを考えた時点で破滅する未来しかありません」

「そうか、帝国は?」

「愚帝は、魔王の言葉を利用して、粛清を行うようです」

「そうか、暗愚だと、粗暴なだけではなかったのだな。その決定をお前に見せたことから、ギルドに口を挟ませないつもりなのだろう」

「はい。それで?魔王からの通達は?」

「あぁ違法奴隷の解放と、情報提供だ」

「情報?」

「この魔王は、驚異だ。貴様の報告だけではなく、ギルド員の解放の条件が、情報の提供だと・・・。情報の重要性を知っている」

「はい」

「あのクズとは違う。それだけ、対応が難しい。懐柔は?」

「どうでしょう。私には難しいです。魔王が欲しがる物が提供できるとは思えません。しかし・・・」

「しかし?」

「彼女は、本当に魔王だったのでしょうか?」

「それはどういう意味だ」

「いえ、確かに膨大な力を感じました。私の全ての能力が無効でした。おっしゃっている”あのクズ”よりも膨大な力を持っていると・・・。考えて間違いは無いでしょう。でも、あれほどの魔王城を作って、7番隊の目を無傷で捕らえて、構成員を無傷で捕らえて、奴隷たち500名ほどを、ほぼ無傷で捕らえるような・・・」

「そうか、まだ魔王が何かを隠していると言いたいのだな」

「はい」

「それがわかれば懐柔できると?」

「それは、わかりません」

 ボイドは、目をつぶった男に頭を下げて、部屋から出た。

「本心を言えば、あの魔王とは関わらないほうがいい。関わったら、ギルドは魔王の顔色を見て、方針を決めなければならない。今よりも、酷い状況に・・・。違うな。より平等な状況になるだけだな」

 ボイドが壁にある魔法陣に手を触れると、魔法陣が光りだした。光が消えた時には、ボイドの姿は既になかった。

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