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スキルが芽生えたので復讐したいと思います。

北きつね

第二十八話 本当の密談


 本題だと言って渡された資料に目を落とした孔明と蒼だが、最初の数ページを読んで頭を抱えだした。
 常識派だと言ってもいい孔明は解るが、破天荒な性格をしていて、破滅主義な蒼まで資料に書かれている内容には眉を顰める。

「おい。円香?」

「なんだ?」

 蒼は、資料を引きつった表情で丸めて、テーブルを叩いている。

「気に食わないか?」

「違う!円香!この情報は正しいのか?違うな、どこから持ってきた!」

 蒼は激高して立ち上がる。
 孔明は、二人のやり取りを眺めているが、明らかに円香を睨んでいる。

「ふたりとも、少しだけ落ち着いてくれ、”説明をしない”とは言っていない。まず、私が掴んだ情報と、二人が持っている情報に齟齬がないか知りたい」

 円香は、コーヒーサーバから自分のカップに黒い液体を注ぎ込む。飲みきったのだろう。孔明もカップを円香に突き出す。円香もそのままコーヒーを注いだ。自分の前にあった、砂糖が入っている壺を孔明の方に滑らせる。

 二人は、黙って資料の続きを読み始める。

 円香は立ち上がって、空になったコーヒーサーバを軽く洗ってから、新しいコーヒーを作り始める。
 二人は、円香の動きから、今日は長くなりそうな予感を持ち始める。

「そうだ。二人は、何か食べるか?と、言っても、スナック菓子しか用意していないけどな。お!優秀な部下が、おにぎりを用意してくれたようだ。おにぎりは・・・。気が利いているな。サンドイッチもあるぞ」

 円香は、コンビニ袋の中身をテーブルの上に広げて、たまごサンドを手に取って食べ始める。

 二人は、円香の様子を見て、何かを諦めた表情をして、おにぎりを取り、食べ始める。飲み物として、ペットボトルに入ったお茶も袋に入っていた。おにぎりにコーヒーは合わないと思い、お茶を飲み始める。

「円香?」

「ん?孔明。読み終わったのか?」

「あぁ」

「それで?」

「俺が知らない内容が含まれているから、全部が正しいとは言えないが、俺が掴んでいる情報との齟齬は・・・。ない。状況も一致している」

「そうか・・・。残念だ。それで、この情報だけど、推測も混じっているけど、君たちの同僚から得た。おっと、孔明。”誰なのか”は聞かないでくれよ」

 立ち上がりそうになった孔明を円香が手で制した。
 情報漏えいが、自衛隊の隊員からだとしたら、大きな問題だ。

「正確には、君たちの身内じゃないから、安心して欲しい」

「円香!」

「そうだね。自衛隊は、米軍を同盟”軍”だと思っているのか?」

「え?あっ!ギルド本部からか!米軍を通して!」

「さぁどんなルートなのか、把握はしていない。米軍も、米国の情報は出し渋るけど、同盟国の情報なら、結構簡単に教えてくれる。特に、魔物やギルドに関すことは、隠すと世界規模の組織に恨まれるからね」

 円香は、一つのUSBが刺さった状態の端末のディスプレイを孔明に見せる。所謂2in1のパソコンだ。

 表示されている情報は、たしかに米軍からギルドに渡った情報だ。
 孔明は目眩がする頭で、ディスプレイに表示されている内容を読む。

「ふぅ・・・。確かに、自衛隊の情報だな」

 蒼は、覗き込んだディスプレイを見て呟いた。孔明も、蒼の呟きを肯定するように頷いた。

「そうか、米軍からの欺瞞情報じゃないのだな」

 蒼は、同僚を疑わなくて済んでホッとしている。

「そうだな。俺には、正しいか判断は出来ないが、これは?」

 円香は、孔明の前にSDカードを指で弾いた。

「誰が漏らしたか解る資料だ。それと、魔物の素材や魔石を横流ししている奴のリストだ。孔明には必要な物だろう?」

「何が目的だ?」

「そんなに怖い目で睨むなよ。義憤」「円香!」

「そうだな。魔物に関する情報管理をしっかりして欲しい。特に、魔石だな」

「魔石?」

「あぁお前のところの・・・。いや、お前らが使う用語だと、”白”な者たちが、魔石をマーケットに流している。いろいろ偽装はしているけどな」

「なっ!本当なのか?!」

「あぁ特措法は、魔物の情報と魔物の取り扱いだけだ」

「それなら、魔石も」「含まれないそうだ。私も、特措法を確認して驚いた。上手い言い回しを使っている。さすがは、優秀な官僚だな」

「奴らの資金源は、魔石の売却か?」

「それは知らないけど、かなりの金額になっているぞ、研究で使ったことにすれば、横流しなんて簡単だろうな。ギルド本部でも問題になっている。日本の情報リテラシーの低さと、モラルの崩壊だけどな」

「情報?リテラシーを含めて、庁があるだろう?」

「本気か?孔明?組織の毒にやられたのか?」

「・・・」

「あの組織は、ITやデジタル資産に関する利権の割り振りしか出来ない。確かに、優秀な旗振りだよ。新しい利権を作って、分配をしているからな」

 円香の言葉を聞いた二人は何も言えない。

「”これ”は、預かっておく」

 孔明は、SDカードをつまんでポケットにしまう。

「あぁ。お前たちを毛嫌いしている奴に繋がる情報もある。好きに使ってくれ」

「おい」

「ギルドは、スキルと魔物の情報と素材と魔石が、しっかりと管理されて、しっかりと共有されることを望んでいる。それを阻害する組織や人物は、全て排除する。これは、ギルド全体の考えだ」

 二人は、円香を黙って見つめることしか出来ない。二人も、薄々気がついていた。魔石を横流ししている連中が居ることを・・・。そして、それが上層部と繋がっている事や、霞が関に居る連中や議員連中やマスコミを巻き込んだ勢力になっていることを・・・。

「円香?あのスライムの件は?」

「あれは、優秀な官僚から推薦された、我がギルド支部に来ている奴がしでかしたことだ。既に、処理を行っている」

「処理?」

「あぁギルド支部の広報課は、解散だ」

「は?」

「ギルドに広報が必要か?」

「え?」

「ギルドが広報を設置したのは、”支援金”が必要だったからだ」

「あぁ。そうだな。広報が企業から寄付金を募っていたのだろう?」

「そうだ。”寄付金”が問題だ。寄付する側の思惑が入り込む。何が欲しいのかをはっきり言わないから、余計に忖度する感情が働く」

「・・・。そうは、言うが円香。組織を運営する上で金は必要だろう?」

「そうだな。”霞を食べて”生活は出来ないからな。でも、紐付きの金は足かせにしかならない」

「円香。それは・・・」

「間違っては居ないだろう?自衛隊の活動資金は、税金だ」

「はぁ・・・。わかった。それで?」

 孔明は、円香との議論を打ち切る。このまま進めば、間違いなく、自衛官として問題になる発言をしてしまう。円香も、蒼も、信頼はしているが、発した言葉を自分で許せる自信がなかった。

「ギルドの粛清は、すすめる。自衛隊は、孔明に任せる。議員先生までは届かないが、手足を失えば、おとなしくなるだろう?」

「そうだな。この情報だけで、俺たちを自分の手駒にしようとしている”連中を黙らせる”ことはできそうだ」

「それは重畳」

 孔明は持ってきていた端末にSDカードを差し込んで、情報を斜め読みしている。暗号化されているが、円香から復号の方法は提供されている。

「なぁ円香。孔明とお前で、自衛隊とギルドを抑えるのは解ったけど、マスコミはどうする?アイツらを黙らせないと、結局は虫たちが湧いてくるぞ?」

「マスコミは、ギルド本部が抑えてくれる。あと、今回の張本人と関係者にも、ギルド本部から苦情が届く、張本人の情報は、自然な形で流れるようになっている」

「怖い。怖い。孔明!俺たちも苦情を入れる理由はあるよな?」

「ある。円香。構わないよな?」

「もちろんだ。是非、お願いしたい」

 3人は、膝を突き合わせて、今後の動きを話し合った。
 ”悪巧み”に思える話し合いは、夕方と呼ばれる時間になるまで続いた。

 円香が持つスマホに着信があり、密談は次のステップに進んだ。

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