お前らが憧れる催眠術の現実を教えてやる
第1章 第1話 - 出会い
「暇……。」
昼下がりの教室。私、城山 初江の口から、そんな言葉が溢れる。
代わり映えのしない、退屈な生活の毎日。学校に行って、授業を受けるだけ。そんな生活が、一体どのぐらい続いたのだろう。
「(……って、そんな長すぎるわけじゃないけど。)」
自分の頭の中で、セルフツッコミ。それが、私の毎日。
県立藍原高等学校。普通科と商業科の2つが存在する、ごく普通の共学校だ。
県内有数の進学校というわけでもなく、日本有数のスポーツ名門校というわけでもない。
地元の有力者のご子息が居るわけでもなく、どうしようもない問題児の集まりなわけでもない。
皆、誰もが平穏無事に過ごして、人並みの青春を謳歌して、そのまま卒業することを願っている、そんな場所である。
「(もっとも、暇だから平和だって意味合いでもあるかな……。)」
私はそんなことを考えながら、退屈な毎日を過ごしてきた。でも、そんな毎日もそろそろ飽き飽きしてくる。
刺激があり過ぎる毎日は疲れてしまうが、刺激がなさ過ぎる毎日も、それはそれで考えものかもしれない。
「(……何か、新しいことを始めてみたいな。)」
そうだ、私もそろそろ、新しいことを始めたい。このままでは、私という人間は腐ってしまいそうな気がする。
あ、物理的に腐るわけではない。断じてそうではない。精神的に腐ってしまうという意味である。言われなくても分かると思うけどね。
「(……でも、何を始めたらいいの?)」
やりたいことはいっぱいあると思う。でも、何をやるのが良いのか、それが分からない。
これをやったらこういう見返りがあるとか、これをやったらこういうリスクが有るとか、そんなことを考えてしまう。そっから終いには何もやらなかったりする。
何とも面倒くさい思考回路だな。私ながらそう思う。
「(……。)」
思っては億劫になり、その繰り返しでここまで来た。人間は何かを変えようとするとき、最初の一歩が最大の障壁だと言ったものだが、本当にそうかもしれない。だって、私がそういう人間なのだから。
こういうとき、私は何気なしに他の生徒をボーッと眺めたりする。そこに理由は何もない。ただの癖みたいなものだ。
「(……あれ?)」
ふと、一人の生徒の胸元に目を奪われる。周りと比べて規格外の巨乳だったとかの破廉恥な理由ではなく、首元からぶら下げられたペンダントを見たからだ。
「(あのペンダント……見たことないやつだ。)」
そうだ、私もああいうのを身に付けてみようかな。そうしたら、何か変われそうな気がする。
そんな眉唾みたいなこと、信じていいのか分からないけど。
「……ねぇ。」
「へっ?」
気付いたら、その生徒が私の目の前に来ていた。ボーっとしていたほんの一瞬の出来事だった。
「さっきから、アタシのことを見てたわね。何か用かしら?」
バ、バレてる!?私、そんなにガン見してたっけ!?
「えっ……い、いや、あの……あ、そう!そのペンダント、何か良いなーって思って……!」
「ペンダント……?ああ、これのことね。」
その生徒は、首元から掛けていたペンダントを指で摘む。
「これはペンダントではないわ。ペンデュラムって言う振子なの。アタシは御守として使ってる。」
「へ、へぇ……そうなんだ。あ、それっていくらするの?」
「値段?そうね……これ1つで30万円はするわ。」
「サ、サンジュウマン!?」
「ふふ、冗談よ。いいところで、3千円ぐらいだわ。でも、キレイだと思わないかしら?このペンデュラム。」
そう言われると、ほんのりと透けたところのある桜色チックなソレに、私は何処か惹かれるような気がした。
「でも……そう、アタシのペンデュラムに興味が……へぇ……『アナタ』もそうなのね。」
「え?」
彼女の言葉が、その一部だけ強く聞こえた気がした。気のせいだろうか?
「ねぇ……アナタって、『面白いことに興味を持ちたい』……そう思っているんじゃないかしら?」
「え゛!?」
ま、またバレた!?何で!?私、そんなこと言ったっけ!?
「何となく、そう思っただけよ。アタシのペンデュラムに興味を示すってことは。」
「あ……アハハハハ……。」
何か、私は目の前の生徒に見透かされているような気がする。これも気のせい?いや、それにしてはリアリティが強すぎるような……。
「アナタ、もし放課後の予定が無かったら、少しだけアタシに付き合ってくれないかしら?」
「え……?な、何に?」
「詳しくは言えないけど……楽しいことよ。それだけは保証するわ。」
それは、私のクラスメイト、町田 縁さんとの、初めての出会い。
そして、催眠術との出会い、その前兆であった。
昼下がりの教室。私、城山 初江の口から、そんな言葉が溢れる。
代わり映えのしない、退屈な生活の毎日。学校に行って、授業を受けるだけ。そんな生活が、一体どのぐらい続いたのだろう。
「(……って、そんな長すぎるわけじゃないけど。)」
自分の頭の中で、セルフツッコミ。それが、私の毎日。
県立藍原高等学校。普通科と商業科の2つが存在する、ごく普通の共学校だ。
県内有数の進学校というわけでもなく、日本有数のスポーツ名門校というわけでもない。
地元の有力者のご子息が居るわけでもなく、どうしようもない問題児の集まりなわけでもない。
皆、誰もが平穏無事に過ごして、人並みの青春を謳歌して、そのまま卒業することを願っている、そんな場所である。
「(もっとも、暇だから平和だって意味合いでもあるかな……。)」
私はそんなことを考えながら、退屈な毎日を過ごしてきた。でも、そんな毎日もそろそろ飽き飽きしてくる。
刺激があり過ぎる毎日は疲れてしまうが、刺激がなさ過ぎる毎日も、それはそれで考えものかもしれない。
「(……何か、新しいことを始めてみたいな。)」
そうだ、私もそろそろ、新しいことを始めたい。このままでは、私という人間は腐ってしまいそうな気がする。
あ、物理的に腐るわけではない。断じてそうではない。精神的に腐ってしまうという意味である。言われなくても分かると思うけどね。
「(……でも、何を始めたらいいの?)」
やりたいことはいっぱいあると思う。でも、何をやるのが良いのか、それが分からない。
これをやったらこういう見返りがあるとか、これをやったらこういうリスクが有るとか、そんなことを考えてしまう。そっから終いには何もやらなかったりする。
何とも面倒くさい思考回路だな。私ながらそう思う。
「(……。)」
思っては億劫になり、その繰り返しでここまで来た。人間は何かを変えようとするとき、最初の一歩が最大の障壁だと言ったものだが、本当にそうかもしれない。だって、私がそういう人間なのだから。
こういうとき、私は何気なしに他の生徒をボーッと眺めたりする。そこに理由は何もない。ただの癖みたいなものだ。
「(……あれ?)」
ふと、一人の生徒の胸元に目を奪われる。周りと比べて規格外の巨乳だったとかの破廉恥な理由ではなく、首元からぶら下げられたペンダントを見たからだ。
「(あのペンダント……見たことないやつだ。)」
そうだ、私もああいうのを身に付けてみようかな。そうしたら、何か変われそうな気がする。
そんな眉唾みたいなこと、信じていいのか分からないけど。
「……ねぇ。」
「へっ?」
気付いたら、その生徒が私の目の前に来ていた。ボーっとしていたほんの一瞬の出来事だった。
「さっきから、アタシのことを見てたわね。何か用かしら?」
バ、バレてる!?私、そんなにガン見してたっけ!?
「えっ……い、いや、あの……あ、そう!そのペンダント、何か良いなーって思って……!」
「ペンダント……?ああ、これのことね。」
その生徒は、首元から掛けていたペンダントを指で摘む。
「これはペンダントではないわ。ペンデュラムって言う振子なの。アタシは御守として使ってる。」
「へ、へぇ……そうなんだ。あ、それっていくらするの?」
「値段?そうね……これ1つで30万円はするわ。」
「サ、サンジュウマン!?」
「ふふ、冗談よ。いいところで、3千円ぐらいだわ。でも、キレイだと思わないかしら?このペンデュラム。」
そう言われると、ほんのりと透けたところのある桜色チックなソレに、私は何処か惹かれるような気がした。
「でも……そう、アタシのペンデュラムに興味が……へぇ……『アナタ』もそうなのね。」
「え?」
彼女の言葉が、その一部だけ強く聞こえた気がした。気のせいだろうか?
「ねぇ……アナタって、『面白いことに興味を持ちたい』……そう思っているんじゃないかしら?」
「え゛!?」
ま、またバレた!?何で!?私、そんなこと言ったっけ!?
「何となく、そう思っただけよ。アタシのペンデュラムに興味を示すってことは。」
「あ……アハハハハ……。」
何か、私は目の前の生徒に見透かされているような気がする。これも気のせい?いや、それにしてはリアリティが強すぎるような……。
「アナタ、もし放課後の予定が無かったら、少しだけアタシに付き合ってくれないかしら?」
「え……?な、何に?」
「詳しくは言えないけど……楽しいことよ。それだけは保証するわ。」
それは、私のクラスメイト、町田 縁さんとの、初めての出会い。
そして、催眠術との出会い、その前兆であった。
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