今まで俺に冷たくしていた美少女が席替えで隣の席になった途端優しくしてくるんだが

時雨古鷹

第10話  文化祭の後

梨華と霧斗は晴れて恋人同士になった。その事で文化祭は盛り上がりを見せ終わった。

「よっ霧斗。良かったな!!」

「ああ、良かった」

「でも霧斗、ここからが大変だぞ」

そう瞬が言った途端、クラスの全員が霧斗の前に整列したのだ。

「ほらな」

「そうだねー、瞬…じゃねぇ何しに来たんだよ!」

「いや今までの事を謝ろうかと思って…その…今まで大変すみませんでしたぁ」

代表で謝ったと思ったらその後に全員が頭を下げてくる。

「まぁまぁ…文化祭でも言ったけどほとんど喋りもしなかった俺に声をかけてくれるだけでも嬉しかったんだ。たとえそれが冷たい言葉でもね。それに俺はこのクラスが好きだ。だからさほら、顔を上げて」

「でもっ…」

「まあまあ霧斗も許すって言ってるんだしありがたく受け取っとけばいいんじゃねぇか?」

瞬のフォローによりクラスメイト達は散っていった。これで一安心とトイレに行こうと教室を出た瞬間、また違う軍団に囲まれた。

「えーっと…何の用ですか?」

「サインお願いします!!」

そうしてまたもみくちゃにされた。霧斗は瞬に助けを求めた。その事を感じたのか瞬が登場した。

「まあまあ霧斗も困ってる事だし…そうだな並んでくれ」

そうして押し寄せた人を廊下に並べ人数を数え始めた。

「ちょうど百五十だな。霧斗、一日何人だったらかける?」

「そうだな…十人づつやったら書ける」

「わかった…時間は…放課後でいいよな」

「うん」

「よし聞いてたか?一日十人づつ…三年生から優先して書く。時間は放課後だ」

こうしてまた一つの厄介事を片付けたのであった。そして今度こそトイレに行けた。

「はぁ疲れたー」

「そうだよな…霧斗ちょっといいか?」

「なんだ?言ってみ?」

「俺さ実は好きな人がいるんだ」

その瞬の言葉に霧斗は吹き出しそうになった。けれどそれをこらえて聞き返す。

「それで?告白をしたいが失敗するのが怖いと…そういうことだろ?」

「まぁそんなところだ…」

「それで?好きな人は誰なの?」

「山里茨乃だよ…」

山里茨乃は成績優秀で活発な梨花と比べ清楚な美少女だ。茨乃もまた同じくこれまでに告白してきた男子を全て断ったという噂がある。

「なんなら玉砕覚悟で告白してみれば?」

「それはあれか?俺に玉砕しろと言っているのか?」

「だから玉砕覚悟って言ってんだ」

「今日一日考えてみる」

そうやって霧斗と瞬は教室に戻って行った。それをまた一人の女子に止められた。

「篠宮君ちょっと相談いいかな?」

「霧斗どうしたぁ?」

「瞬!!先に戻っておいてくれ」

瞬を教室に戻し声の主の方を見た。そこには艶があり肩より下まで伸びている黒髪の少女がいた。

「確か君は…山里茨乃だったかな?」

「そう。覚えておいてくれたのね。ちょっと場所を移動しましょう」

そうやって屋上に連れ出された。そして茨乃はゆっくり話し始めた。

「私がよく告白されるのは知ってるでしょ」

「うん、知ってるよ。だけど全員が断られている」

「そうだね…私ね好きな人がいるの」

その言葉に霧斗は息を飲んだ。ついさっきも瞬から好きな人の相談を受け瞬の好きな人からも同じ相談を受けたのだ。

「その好きな人って?」

「野口瞬君だよ」

霧斗はその言葉を聞いて心の中で瞬におめでとうを言った。

「それをどうして俺に?」

「だっていつも篠宮君と一緒にいるでしょ?」

「まぁ…一緒にいるけど」

「それで瞬君が私のことどう思っているのかを聞きたくて…」

霧斗は迷った。瞬の事を話すべきか話さないべきか。けれども話すことにした。

「実はさ…さっきも瞬から同じ相談を受けたんだ」

「それで、瞬君はなんと言って…」

「山里茨乃が好きだって言ってた。でも告白したいけど断られているのは目に見えているって。それで俺は玉砕覚悟で告白してみれば?って言ったんだ」

「そしたらなんと…」

「今日一日考えるってさ」

「でもそんな事を話してもらって良かったのですか?」

霧斗は茨乃の目を見ると笑った。それを茨乃は目を丸くして見てる。

「いいんだ。だからさ今から告白してこいよ」

「でも…今からなんて…自信がありません」

「なら俺が一緒についてきてやるからさ。俺も瞬のやつと会ってから少しずつ変わったんだ。だからさ俺も瞬にサプライズしてやりたいんだよ」

「分かりました。じゃあ一緒に来てください」

そう言って茨乃と霧斗は教室に戻って行った。そして瞬の所まで一緒に行った。

「おう、霧斗早かったな!んでなんで茨乃っちがいるんだ?」

「瞬君…話があるの」

その言葉で瞬の顔色が変わった。クラスメイトもこちらに視線を集める。

「なんだ?話って」

「それは…その…」

「茨乃さん、言わなきゃ伝わらないよ?」

瞬の前に立ってうじうじしている茨乃に霧斗がフォローをするとついに決めたように言った。

「瞬君のことがずっと好きでした!!だからちゅきあってください!!」

周りが静寂に包まれる。自分が噛んだことが分かるとみるみる顔は赤くなっていった。

「霧斗…これって?」

「瞬…答えてやれ」

「あぁ」

そうして瞬は茨乃を抱きしめた。そして耳もとで囁いた。

「俺も好きだよ…茨乃っち」

その瞬間教室内は拍手が沸き起こった。

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