今まで俺に冷たくしていた美少女が席替えで隣の席になった途端優しくしてくるんだが

時雨古鷹

第6話  最低な人間だな

霧斗は梨華を慰めたあと一緒に教室に戻った。教室には担任がいた。他のクラスメイトたちは霧斗が梨華を泣かせたと言ってやまなかった。

「先生、遅くなってすみません。梨華さんの相談に乗ってあげてました」

「大丈夫ですよ。霧斗君…」

先生は何があったのかを察した様子で顔が少しにやついていた。ちなみに担任の先生の名前は久代くめという三十代前半の女性の先生だ。

「ということなのでやめましょうね」

先生がそう笑顔で言うが圧が凄い。その圧におされたクラスメイトは瞬時に黙る。

「今日の連絡です。文化祭まで残り一ヶ月をきりました。ですので今日から文化祭までの授業はなく文化祭準備となります。その間は霧斗君だけは他のことを頼んでいるので2時半以降はいません。では文化祭に向けての準備を各自行ってください。あと霧斗君は2時半に音楽室に来てください。職員室に忘れ物」

先生はそれだけ言って職員室に戻っていった。その途端霧斗はクラスメイトに囲まれた。

「おい霧斗!!相談に乗ったって何の相談に乗ったら梨華さんが泣くんだよ!!」

そう言ったのは学級委員の藤山邇夢留だ。漢字は難しく邇夢留にむると読む。彼もまた一学期に梨華に告白して儚く散っていった男だ。
邇夢留にあわせて全員が言いよってくる。

「相談されたのは重い話告白だった。その途中に泣き始めた」

霧斗が邇夢留の圧に押され慌てて答えると、邇夢留は更に詰め寄ってきた。

「だから何の相談だったんだと聞いているんだ!!」

そう邇夢留がキレて霧斗の胸ぐらをつかもうとする。

「なあ…霧斗が困ってんだろ。邇夢留…それに霧斗が他の人に話さないと思って梨華ちゃんも相談をしたんだろ!最初の質問の答え聞いてなかったのか!!霧斗は重い相談をされたと答えたので十分だろ!!何で相談の内容まで聞かないといけないんだよ!!お前ら人が泣くような重い相談を聞いて楽しいのか!?」

「瞬には関係ねぇだろ!!」

瞬が割り込んで説教したのを邇夢留は気に食わず殴りかかる。その光景をみた霧斗はキレた。瞬に拳が当たる寸前に止めた。邇夢留の本気の拳を片手でうけた。

「何殴ろうとしてんだよ…お前ら…さっきの瞬の話聞いて反省もせずに…殴りかかろうとするとは…最低な人間だな…。なぜ梨華さんが泣いた相談の内容をお前らに話さなけりゃならねぇんだよ。重い相談ってだけで普通は踏みとどまるだろうが!」

霧斗の地味な声が圧のある冷酷な声に変わりしゃべり方もろとも雰囲気が一変したことで邇夢留以外のクラスメイトは反省して散っていったが邇夢留は自分の椅子を持ち殴りかかった。それを霧斗はまた片手で防いだ。瞬は先生を呼びに行き邇夢留以外の梨華も含むクラスメイトは廊下にでた。

「お前…さっきからごちゃごちゃうるせぇんだよ!!このゴミくずが!!変態!!死ねよおらぁ!!」

邇夢留はもう理性をなくしたようで椅子で殴ってくる。それを霧斗は防ぐ。

「どうせお前が梨華さんを泣かしたんだろうが!!」

そういって永遠に殴っていた。

~瞬~
その時ちょうど校長先生と久代先生がきた。そして校長先生が瞬に聞く。

「瞬君…一体何があったんだ?」

瞬はこれまでにあった事を校長先生と久代先生に話した。

「実は久代先生が職員室に戻っていったときに俺と梨華さん、梨華さんの友達以外の人が霧斗の席の周りを囲んだんです。どんな相談をされたのか答えろって質問したんです。霧斗は重い話とだけ答えたら、邇夢留がその相談の内容を聞いてるんだって詰め寄ったんで、俺が止めたんです。霧斗が他の人に話す可能性がないから梨華さんは霧斗に相談したんだって。そしたら邇夢留がキレて殴りかかってきたんです。それをみた霧斗がキレて邇夢留たちに、重い相談の内容をなぜ話さなければならないんだ…瞬の話を聞いても反省もせず殴りかかるなんて最低な人間って言ったんです。それはもう雰囲気もなにもかも変わった霧斗におびえて邇夢留以外の人たちは反省したんですけど邇夢留は見ての通り椅子で殴りかかったんです。ゴミくずや変態やら死ねなどと叫びながら…それを霧斗は素手で受けとめているんです」

その説明を聞いた校長先生は邇夢留の両親を呼び出して警察にも来てもらった。警察にはパトカーではなく学校の目の前にある交番から歩きで来てもらった。その間にも邇夢留は霧斗を殴っている。瞬は霧斗にもう少し耐えてくれとアイコンタクトを送り廊下に出ていたクラスメイトたちと別の教室に移った。

「校長先生、何があったのか話してくれますか?」

「校長先生、またうちの息子がやらかしたのでしょうか?」

警察と邇夢留の両親が校長先生に尋ねると校長先生は答えた。

「そうですね。前回まではよかったのですが今回はちょっと…危ないので。詳しい話はこちらの瞬君に聞いてください。瞬君、手短にお願いできるかな、早くしないと霧斗君が」

その言葉で警察も邇夢留の両親も何かを悟ったようで身構える。その前にと警察が名刺を差し出してきた。

「話を伺う前に名刺お渡ししますね。藤原と申します。それで瞬君でしたっけ。失礼ですが苗字は?」

「野口です。野口瞬と申します。藤原さん、それと邇夢留君の御両親には手短に話しますね。篠宮霧斗君という同級生が友達の相談に乗って、それを邇夢留君が問い詰めたんです。霧斗君は重い話とだけ答えましたが更に邇夢留君が問い詰めたんです。それで僕が邇夢留君を駄目だよって注意したんですけど聞かず僕に殴りかかってきたところを霧斗君が止めて答えるつもりはないといったら霧斗君に殴りかかったんです。暴言を吐きながら…今も殴り続けています」

瞬が説明し終わると藤原が質問してきた。

「暴言を吐きながら殴りかかったっていいましたよね?どんな暴言ですか?」

「そうですね…聞いたのはゴミくず、変態、死ねですね。殴りかかったっていっても自分の椅子をもって殴りかかったんです」

それを聞いた藤原さんは交番に応援を要請して三人を呼び出した。

~霧斗~

霧斗はひたすら邇夢留の椅子を受けていた。瞬から耐えてくれとアイコンタクトを受けて約十分ようやく瞬が戻ってきた。

「霧斗!!少し椅子を止めて邇夢留の動きを封じてくれ!!」

霧斗は頷き邇夢留の椅子を封じ、邇夢留の腕をつかんだそのすきに藤原とその他の警察三人が取り押さえたそして校長室まで連行されていった。

後から聞いた話だが邇夢留は退学処分になった後警察に連行されたらしい。

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