勇者パーティーを追い出された死霊魔術師はリッチになって魔王軍で大好きな研究ライフを送る
62話 なんか知らんけど日に千五百ぐらい死ぬので二千の産屋を建てときました回
リッチには周囲に味方がいない時だけ使える広範囲攻撃がある。
なぜ周囲に味方がいたらダメかといえば、昔使った時に味方からすごい勢いで怒られたためというのが一つ……
あと、この技で殺した相手は損壊具合がひどい有様になって蘇生が面倒なので、あまりやりたくなかった。
しかし今、敵はもはやリッチ的カテゴライズにおいて『研究対象』に含まれていないフレッシュゴーレムだし……
『人を巻き込む技を使うから離れてください』と言うと『うるせぇ! 味方を置いて戦場から離れられるかよ!』とかいう申し出の意味を理解してくれない味方もいないのでやりたい放題だ。
リッチは霊体の帯を束ねて束ねて太く幅広く長くすると、自分を中心に渦巻かせるように振り回していく。
こうするとリッチが歩行するだけで周囲に存在するあらゆるものが霊体の帯に削り取られていくし、自分を中心に速度と回転を維持するだけでいいので使用コストも低い。
そんなふうにフレッシュゴーレムたちを削り取りながら分布密度の高い方に歩いていくと、リッチはあるものを発見した。
それは魔王領にある手付かずの荒野であり、主にリッチが記憶にまつわる死霊術の実験に使っていた場所だった。
そのだだっ広いだけの平原に、あるのだ━━いかにも地下に続く階段が。
そこからフレッシュゴーレムがわらわら湧いてくるので、リッチは自分の予想が当たっていることを確信して、嫌な気持ちになった。
なにせできたら当たっていてほしくない予想だったからだ。
「ああ、やだなあ、やだなあ……なにが嫌だって、あの地下への階段、ついおとといぐらいまではなかったんだよなあ。やっぱそうなんだろうなあ。やだなあ」
リッチはあまりの面倒くささに研究室に帰りたくなってきたけれど、その研究室の安寧のためにもここは踏ん張らないといけないのも理解している。
だから肩をがっくり落とし、ため息(呼吸は必要でない。骨なので)をついて、霊体の帯の回転範囲を階段を通れるぐらいに狭めつつ、進んでいく。
◆
やや時間をさかのぼり、旧・人類王都……
肉体を取り戻したロザリーがまず行ったことは、震脚だった。
震脚というのはざっくり言ってしまえば、武術なんかで『強く踏み込むこと』を指す。
石畳の上で達人がこれを行うと、遠雷のようなダァァァン! という気持ちのいい音が鳴るので、知らない人はどこかで一回見てみることをおすすめします。
ロザリーの行った震脚はあたり一帯に立っていられないほどの震動を起こした。
つまり狂乱状態にあり常に流動を続けていた乱戦状態を、一瞬、止める効果を発揮したのだった。
直後、ロザリーの姿が霞んで消える。
すると近場にあった燃え燃えフレッシュゴーレムの集団が束になって空中に浮き、そのまま無数のチリになって消えていった。
草を薙ぐような蹴散らし方はあたりにあった炎を吹き散らし、油をまとって燃えるフレッシュゴーレムたちを『チリにする』という極めて乱暴な方法で消火していく。
「……いや、ほんとありえないわね」
次々と蹴散らされていくフレッシュゴーレムたちをながめながら、ランツァがそんなことをつぶやいていると、ロザリーがランツァのもとに戻って、言う。
「視界は開けたはずです。蘇生は適いますか?」
その申し出がロザリーの口から出たありえなさに、ランツァはしばし絶句するが、それも一瞬のことだ。
言葉ではどう応じていいかわからなかったので、行動で応じる。
すると死した仲間たちはヤケドを残しながらも蘇生し始め、蘇生慣れしていない者特有の『蘇生酔い』に頭をふらつかせながら、どうにか起き上がっていく。
ある程度蘇生が済んだところでランツァの隣にいるロザリーが息をいっぱい吸い込み始めたので、察しのいいランツァは耳を塞いだ。
ロザリーは、吸い込んだ息をすべて吐き出すような大声で、
「聖戦、発動!」
その宣言は、一言で、昼神教信徒たちの顔色を変えた。
なにせ昼神教は国教だったので、ランツァもその宗教の用語にかんしては一通り知っているが……
聖戦というのはよくわからない。
いや、言葉自体は知っている。
魔族相手の戦争をそう呼称する者もあったからだ。
しかし、それならばすでに発動しているものであり、今さら発動を宣言するようなものではないし……
信徒たちの顔色が変わるほどの衝撃がその言葉に含まれているとも、思えない。
ロザリーはランツァを厳しい目で一瞥してから、周囲に向けて語りかける。
「知っての通り、聖戦というのは神の教えに叛く者に対し行われる聖なる戦いです。しかし、我らは弱小勢力を相手にこれを宣言することはありません。聖戦発動には、条件があるのです」
それは信徒の士気を高める演説でもあり、ランツァへの説明でもあるように思われた。
よほど大事な話らしく、蹴散らされたフレッシュゴーレムがまた炎をまとい包囲を始めているにもかかわらず、昼神教信徒たちは、ロザリーを注視して、フレッシュゴーレムたちには目もくれない。
「聖戦とは、教えそのものの消滅の可能性がある戦いにおいて宣言されるもの」
ロザリーがゆったりと歩き始める。
その動きに従うように、信徒たちも同じ歩調でロザリーのもとへ集い始める。
準備を終えたフレッシュゴーレムたちがたかってこようとするけれど、ロザリーが紫色の瞳で一瞥すると、信徒たちは不気味なほど静かな動作で向かってくるフレッシュゴーレムに対し、確固たる殺意を込めた対応をする。
神という熱にうかされていないランツァから見てその光景はあまりにも恐ろしく、どこか神聖な迫力を帯びているようにさえ感じられた。
ロザリーはたまに向かってくるフレッシュゴーレムを一瞥するだけで、本人はなんら手を出さず、ゆっくり歩きながら話を続ける。
「我らにとって、死は終わりではないのです。教えが後世に続けば、それでよいのです。人が神を忘れない限りにおいて、我らは常に勝利し続ける━━」
ランツァも奇妙な緊張感の高まりに襲われつつあった。
「━━ゆえに、我らの聖戦は、我らの教えが塗り潰される可能性がある時にのみ発動します。信徒たちよ、自覚なさい。あらゆる教義は教えの生存の前には小事となり、あらゆる例外が赦される時間が訪れているのです。すなわち━━フレッシュゴーレムは、人類を数において上回り、我らを殲滅する可能性が浮上しました」
今までも、かなり人類はフレッシュゴーレムによって減らされてきたが……
それでもなお発動しなかった聖戦━━敵が自分たちの数を上回り、自分たちが殲滅させられる可能性が、今、この状況で見えたらしい。
それはロザリーの思慮が足らないから、というのが理由には思えない。
ランツァには見えていないものが、ロザリーには見えたのだ。
「これよりの戦いは、殺し尽くさなければ殺し尽くされると心得なさい。敵は際限なく巣を増やす害虫ども。━━さあ、祈り、願い、感謝し、殺しましょう。これは神を守る戦いなのです」
昼神教信徒たちは静かだった。
けれど、その目にこもった熱は、神を心からは信じないランツァを怯えさせる、宗教というものの怖さの本質がこもっているように感じ取れた。
◆
「はぁ〜。やばやばのやばじゃんね」
ほぼ同時刻、旧・南の戦線……
大将用の陣幕の中で、魔王は椅子に腰掛け、あがってくる報告に目を通していた。
普段まとっている影はなく、広すぎる陣幕の中でただ一人、褐色肌に角を生やした、少女のような外見をさらしている。
短いスカートで脚を組む姿はなまめかしくもあったけれど、それ以上に苦難に直面した管理職特有の重苦しいオーラが出ていて、誰かが見ていてもそのふとももにエッチな気持ちを抱くことはないだろう。
魔王はデコった爪で額をとんとん叩くと、
「一族衆」
「ここに」
呼びかけに応じたのは、魔王がかける椅子の影だった。
そこから浮かび上がるように真っ黒い人物が出現する。
真っ黒いというのは、服が、とか、髪や目が、とかではない。
その人物は、ヒトガタではあるのに、おおよそ人にあるべき凹凸がない、ただ頭部と胴体と四肢があるだけののっぺりした『影をこねて幼児が作ったようなヒトガタ』なのだ。
魔王はため息を一つついて、
「確認すっけどさあ。昨日までなかったポイントからフレッシュゴーレム出てるわけね?」
「おっしゃる通り」
「いやね? うちもほら、リッチの報告の裏取りさせたじゃんね。んでさ、ある程度信憑性の確認が終わったから軍事計画を実行したじゃんね。そしたらこの有様じゃんね。相手の規模が予定の三倍じゃんね」
「……」
「これさあ、相手が生産拠点を新しく建造してるじゃんね」
「おっしゃる通り」
「はーマジ。はーマジ。しかもさあ、拠点そのものの建造速度、二日に一箇所ぐらいじゃね? んでんで、その拠点から一日におおよそ二千のフレッシュゴーレムがわいて来んじゃん? 新設だともうちょい少ない? ってかあいつらリソースどうなってんだ」
「記憶ではないかという意見もございましたが」
「は? 誰からの意見?」
「ランツァ様から」
「は? なんでうちの知らないところでランツァちゃんと会話してんの?」
「魔王様が眠っていらっしゃる時に代役を務めていたところ、ランツァ様がいらしたので、そのまま流れで……」
「いや報告しろやーい」
「あくまで雑談でしたので……あと、私とランツァ様の友情メモリーですし、いくら同一存在とはいえ共有はちょっと」
「……ま、あたし自身が共有の必要性を感じなかった報告なら、マジで雑談レベルの根拠のないやつだったんか。あーはいはい。今見たわ。たしかにこれ上げられても『ふーん』で終わるやつね」
「でしょ?」
「でもフレッシュゴーレムにまつわる話ならいちおう上げとこうぜ。罰として同化しまーす」
「ええ……やだ……」
「戦力的にも同化しとかないとやばやばのやばじゃんよ。あたしが出ることになりそうだし」
魔王がそう述べると、影のヒトガタはがっくりとうなだれ、うらめしげに魔王をながめるような動作をしたあと……
魔王の影の中に沈んで消えた。
魔王は頭の左右に生えたねじくれた角を握って天をあおぎ、
「はーマジ。……どうすっかなーこれなー。うまいことやらないとマジで滅びるじゃん、うちら。ウケるー」
なぜ周囲に味方がいたらダメかといえば、昔使った時に味方からすごい勢いで怒られたためというのが一つ……
あと、この技で殺した相手は損壊具合がひどい有様になって蘇生が面倒なので、あまりやりたくなかった。
しかし今、敵はもはやリッチ的カテゴライズにおいて『研究対象』に含まれていないフレッシュゴーレムだし……
『人を巻き込む技を使うから離れてください』と言うと『うるせぇ! 味方を置いて戦場から離れられるかよ!』とかいう申し出の意味を理解してくれない味方もいないのでやりたい放題だ。
リッチは霊体の帯を束ねて束ねて太く幅広く長くすると、自分を中心に渦巻かせるように振り回していく。
こうするとリッチが歩行するだけで周囲に存在するあらゆるものが霊体の帯に削り取られていくし、自分を中心に速度と回転を維持するだけでいいので使用コストも低い。
そんなふうにフレッシュゴーレムたちを削り取りながら分布密度の高い方に歩いていくと、リッチはあるものを発見した。
それは魔王領にある手付かずの荒野であり、主にリッチが記憶にまつわる死霊術の実験に使っていた場所だった。
そのだだっ広いだけの平原に、あるのだ━━いかにも地下に続く階段が。
そこからフレッシュゴーレムがわらわら湧いてくるので、リッチは自分の予想が当たっていることを確信して、嫌な気持ちになった。
なにせできたら当たっていてほしくない予想だったからだ。
「ああ、やだなあ、やだなあ……なにが嫌だって、あの地下への階段、ついおとといぐらいまではなかったんだよなあ。やっぱそうなんだろうなあ。やだなあ」
リッチはあまりの面倒くささに研究室に帰りたくなってきたけれど、その研究室の安寧のためにもここは踏ん張らないといけないのも理解している。
だから肩をがっくり落とし、ため息(呼吸は必要でない。骨なので)をついて、霊体の帯の回転範囲を階段を通れるぐらいに狭めつつ、進んでいく。
◆
やや時間をさかのぼり、旧・人類王都……
肉体を取り戻したロザリーがまず行ったことは、震脚だった。
震脚というのはざっくり言ってしまえば、武術なんかで『強く踏み込むこと』を指す。
石畳の上で達人がこれを行うと、遠雷のようなダァァァン! という気持ちのいい音が鳴るので、知らない人はどこかで一回見てみることをおすすめします。
ロザリーの行った震脚はあたり一帯に立っていられないほどの震動を起こした。
つまり狂乱状態にあり常に流動を続けていた乱戦状態を、一瞬、止める効果を発揮したのだった。
直後、ロザリーの姿が霞んで消える。
すると近場にあった燃え燃えフレッシュゴーレムの集団が束になって空中に浮き、そのまま無数のチリになって消えていった。
草を薙ぐような蹴散らし方はあたりにあった炎を吹き散らし、油をまとって燃えるフレッシュゴーレムたちを『チリにする』という極めて乱暴な方法で消火していく。
「……いや、ほんとありえないわね」
次々と蹴散らされていくフレッシュゴーレムたちをながめながら、ランツァがそんなことをつぶやいていると、ロザリーがランツァのもとに戻って、言う。
「視界は開けたはずです。蘇生は適いますか?」
その申し出がロザリーの口から出たありえなさに、ランツァはしばし絶句するが、それも一瞬のことだ。
言葉ではどう応じていいかわからなかったので、行動で応じる。
すると死した仲間たちはヤケドを残しながらも蘇生し始め、蘇生慣れしていない者特有の『蘇生酔い』に頭をふらつかせながら、どうにか起き上がっていく。
ある程度蘇生が済んだところでランツァの隣にいるロザリーが息をいっぱい吸い込み始めたので、察しのいいランツァは耳を塞いだ。
ロザリーは、吸い込んだ息をすべて吐き出すような大声で、
「聖戦、発動!」
その宣言は、一言で、昼神教信徒たちの顔色を変えた。
なにせ昼神教は国教だったので、ランツァもその宗教の用語にかんしては一通り知っているが……
聖戦というのはよくわからない。
いや、言葉自体は知っている。
魔族相手の戦争をそう呼称する者もあったからだ。
しかし、それならばすでに発動しているものであり、今さら発動を宣言するようなものではないし……
信徒たちの顔色が変わるほどの衝撃がその言葉に含まれているとも、思えない。
ロザリーはランツァを厳しい目で一瞥してから、周囲に向けて語りかける。
「知っての通り、聖戦というのは神の教えに叛く者に対し行われる聖なる戦いです。しかし、我らは弱小勢力を相手にこれを宣言することはありません。聖戦発動には、条件があるのです」
それは信徒の士気を高める演説でもあり、ランツァへの説明でもあるように思われた。
よほど大事な話らしく、蹴散らされたフレッシュゴーレムがまた炎をまとい包囲を始めているにもかかわらず、昼神教信徒たちは、ロザリーを注視して、フレッシュゴーレムたちには目もくれない。
「聖戦とは、教えそのものの消滅の可能性がある戦いにおいて宣言されるもの」
ロザリーがゆったりと歩き始める。
その動きに従うように、信徒たちも同じ歩調でロザリーのもとへ集い始める。
準備を終えたフレッシュゴーレムたちがたかってこようとするけれど、ロザリーが紫色の瞳で一瞥すると、信徒たちは不気味なほど静かな動作で向かってくるフレッシュゴーレムに対し、確固たる殺意を込めた対応をする。
神という熱にうかされていないランツァから見てその光景はあまりにも恐ろしく、どこか神聖な迫力を帯びているようにさえ感じられた。
ロザリーはたまに向かってくるフレッシュゴーレムを一瞥するだけで、本人はなんら手を出さず、ゆっくり歩きながら話を続ける。
「我らにとって、死は終わりではないのです。教えが後世に続けば、それでよいのです。人が神を忘れない限りにおいて、我らは常に勝利し続ける━━」
ランツァも奇妙な緊張感の高まりに襲われつつあった。
「━━ゆえに、我らの聖戦は、我らの教えが塗り潰される可能性がある時にのみ発動します。信徒たちよ、自覚なさい。あらゆる教義は教えの生存の前には小事となり、あらゆる例外が赦される時間が訪れているのです。すなわち━━フレッシュゴーレムは、人類を数において上回り、我らを殲滅する可能性が浮上しました」
今までも、かなり人類はフレッシュゴーレムによって減らされてきたが……
それでもなお発動しなかった聖戦━━敵が自分たちの数を上回り、自分たちが殲滅させられる可能性が、今、この状況で見えたらしい。
それはロザリーの思慮が足らないから、というのが理由には思えない。
ランツァには見えていないものが、ロザリーには見えたのだ。
「これよりの戦いは、殺し尽くさなければ殺し尽くされると心得なさい。敵は際限なく巣を増やす害虫ども。━━さあ、祈り、願い、感謝し、殺しましょう。これは神を守る戦いなのです」
昼神教信徒たちは静かだった。
けれど、その目にこもった熱は、神を心からは信じないランツァを怯えさせる、宗教というものの怖さの本質がこもっているように感じ取れた。
◆
「はぁ〜。やばやばのやばじゃんね」
ほぼ同時刻、旧・南の戦線……
大将用の陣幕の中で、魔王は椅子に腰掛け、あがってくる報告に目を通していた。
普段まとっている影はなく、広すぎる陣幕の中でただ一人、褐色肌に角を生やした、少女のような外見をさらしている。
短いスカートで脚を組む姿はなまめかしくもあったけれど、それ以上に苦難に直面した管理職特有の重苦しいオーラが出ていて、誰かが見ていてもそのふとももにエッチな気持ちを抱くことはないだろう。
魔王はデコった爪で額をとんとん叩くと、
「一族衆」
「ここに」
呼びかけに応じたのは、魔王がかける椅子の影だった。
そこから浮かび上がるように真っ黒い人物が出現する。
真っ黒いというのは、服が、とか、髪や目が、とかではない。
その人物は、ヒトガタではあるのに、おおよそ人にあるべき凹凸がない、ただ頭部と胴体と四肢があるだけののっぺりした『影をこねて幼児が作ったようなヒトガタ』なのだ。
魔王はため息を一つついて、
「確認すっけどさあ。昨日までなかったポイントからフレッシュゴーレム出てるわけね?」
「おっしゃる通り」
「いやね? うちもほら、リッチの報告の裏取りさせたじゃんね。んでさ、ある程度信憑性の確認が終わったから軍事計画を実行したじゃんね。そしたらこの有様じゃんね。相手の規模が予定の三倍じゃんね」
「……」
「これさあ、相手が生産拠点を新しく建造してるじゃんね」
「おっしゃる通り」
「はーマジ。はーマジ。しかもさあ、拠点そのものの建造速度、二日に一箇所ぐらいじゃね? んでんで、その拠点から一日におおよそ二千のフレッシュゴーレムがわいて来んじゃん? 新設だともうちょい少ない? ってかあいつらリソースどうなってんだ」
「記憶ではないかという意見もございましたが」
「は? 誰からの意見?」
「ランツァ様から」
「は? なんでうちの知らないところでランツァちゃんと会話してんの?」
「魔王様が眠っていらっしゃる時に代役を務めていたところ、ランツァ様がいらしたので、そのまま流れで……」
「いや報告しろやーい」
「あくまで雑談でしたので……あと、私とランツァ様の友情メモリーですし、いくら同一存在とはいえ共有はちょっと」
「……ま、あたし自身が共有の必要性を感じなかった報告なら、マジで雑談レベルの根拠のないやつだったんか。あーはいはい。今見たわ。たしかにこれ上げられても『ふーん』で終わるやつね」
「でしょ?」
「でもフレッシュゴーレムにまつわる話ならいちおう上げとこうぜ。罰として同化しまーす」
「ええ……やだ……」
「戦力的にも同化しとかないとやばやばのやばじゃんよ。あたしが出ることになりそうだし」
魔王がそう述べると、影のヒトガタはがっくりとうなだれ、うらめしげに魔王をながめるような動作をしたあと……
魔王の影の中に沈んで消えた。
魔王は頭の左右に生えたねじくれた角を握って天をあおぎ、
「はーマジ。……どうすっかなーこれなー。うまいことやらないとマジで滅びるじゃん、うちら。ウケるー」
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