冥界からの帰還者

5話 ザザン魔術大学

 ここはカース大陸と呼ばれる巨大な大陸だ。
 北は氷の大地が続き、南は火山地帯となっている。
 東は自然溢れる大森林が広がり、西は風が吹き荒れる荒野と灼熱の砂漠が広がっている。
 人が住める土地は多くない。

 この大陸には7つの国が存在する。
 ・エスパーダ王国
 ・バハルス帝国
 ・ティターニア王国
 ・オルクス帝国
 ・獣人族共和国
 ・ノーマン王国
 ・ザンキス帝国
 
 上記の内、人間の国は2つだけだ。
 大陸の中央より北に位置するエスパーダ王国と南に位置するバハルス帝国だ。
 両国はかつては戦争をしていたが、徐々に勢力を拡大してきた亜人種の国々を脅威に感じ、人間同士の戦いを一時停戦し、均衡状態を保っている。
 ティターニア王国は、世界樹の大森林に住むエルフの女王が支配する国だ。
 交戦的では無いが、保守的で侵入してくる者には容赦が無く、外交も殆どしていない。
 一時期、美しいエルフの娘を拐って奴隷にする輩が増えた事に警戒感を強めたからだ。

 オルクス帝国は西の砂漠地帯に住むオークの皇帝が支配する国だ。
 不毛の大地は常に彼等を飢えさせる。
 オークは資源と食糧を求めて侵略を繰り返すので他の種族との衝突が多い。
 繁殖力が高く、異種族を孕ませる習性もあるので、嫌われている種族だ。

 獣人族共和国は、東の大森林に住む獣人族が暮らす国だ。
 強さこそが正義の国であり、種族による差別は無いが、力あるものがリーダーとなるので、政治はコロコロ変わる。
 
 ノーマン王国は、南の火山地帯に住むドワーフ族の王が支配する国だ。
 偏屈で頑固な種族だが、技術力が高く、様々な武器や兵器の製造をし、他国にも流している。
 
 ザンキス帝国は、東の大森林にある湿地帯に住むリザードマン達が支配する国だ。
 愚鈍だが、身体が大きく、力も強い。
 獰猛な性格で戦いを好むが、湿地帯以外では住むのに適さない為、侵略戦争を仕掛けることは無い。

 かつては亜人種は魔物と同一扱いされており、奴隷や討伐の対象だった。
 しかし、近年は勢力の拡大や国家としての活動もあり、人間と対等の存在として権利を手に入れた。

 最近ではエスパーダ王国がザザン魔術大学と言う種族や国に関係無く入学できる学校を設立し、その周りに学生の為だけの巨大な学園都市を築いたらしい。
 世界平和を目指し、種族間の偏見や差別を無くし共に仲間として認め合える関係作りが出来る環境を目的としている。
 多くの国が賛同し、各国が支援金を出し合う事で、試験に合格した学生は無料で4年間魔術大学に通う事ができ、更にはザザン学園都市での衣食住を全て無料で享受する事ができる。
 その代わり、貴族や王族といった特権階級の干渉などを嫌い権力の効果が及ばない様になっており、コネ入学などは一切禁止されている。
 更には学園都市の中では身分も全て平等に扱われる。

 アイス女王からの説明を受けたジン・クロードは、少し呆然としていた。
 かつて、ジンが現世にいた時代は、世界は戦争の連続だった。
 いくつもの国が滅び、人が死んだ。
 ジンも戦争に参加し、幾万もの敵を殺して来た。
 当時の魔術大学も、基本的には戦争で戦える魔術師を育成する為の機関であり、平和の象徴とは真逆の存在だった。

 千年という時の流れは、こんなにも世界を変えてしまうのか。

 ジンは、助けた亀に連れられて竜宮城へ行った男の童話を思い出し、自分に重ねてしまう。

 だが、青春を謳歌したいジンにとって、平和は嬉しい誤算だ。

 ザザン魔術大学へ入学しよう。

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