羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。
2章:平穏でない日々と告白(2)
私はその日も朝からスマホを見続けていた。最近ずっとそうだ。私が検索しているのは、『羽柴健人』その人だ。
「みゆ~、食事中はスマホ禁止」
父に言われて、私はスマホの画面を閉じる。
いけない、いけない。最近いつも見ているから、この調子で注意されることが増えた。
「あ、うん。ごめん」
「大丈夫なの? トラブルとかある?」
「……いや」
「なんか、いつもものすごい顔でスマホ睨んで検索してるよね。困ったことがあったらパパに言うんだよ。いざとなったら職権乱用してでもみゆのこと守るから……!」
「ありがと。でも遠慮しとく」
ものすごい顔をしていたのは、間違いなく羽柴先輩のせいだ。
「そういえば、ホウオウ本社は警視庁の近くだよ。その割に意外に会わないよね」
「へぇ」
話し半分に聞きながら、私は羽柴先輩の事務所の場所も会社の近くだと言うことを思い出した。その割に会わないでいられている。なんていうか、複雑な気分だ。
ごちそうさま、というと、いつも通りにお弁当を作り、家を出た。
結局二か月、あの日からだと二か月半、羽柴先輩とは顔を合わせていない。まぁ、羽柴先輩もあれだけ忙しければ、ホウオウに顔を出すことも少なそうだ。そう思って、私の心は少し落ち着いてきていた。
それはその矢先のことだった。
「今日、羽柴先生がくるって!」
朝から羽柴ファンの女性の元気な声が耳に届く。ちなみにファンのうちの一人、宮坂さんは私と同じチームだ。
驚いてそちらを見ると、少し不審そうにこちらを見られた。ぱ、と慌てて顔を戻す。ただ、心臓はこれまでにないほど大きく、速く脈打っていた。
(今日、来る……)
最近すっかり安心しきっていただけに、頭が混乱する。その時、部長がこちらにやってきた。
「柊さん。まだ入社してから羽柴弁護士にご挨拶してないよね。今日の夜の予定ある?」
「……いえ、とくにはありません」
「打ち合わせのあと、歓迎会もかねて食事でも行きましょうって羽柴弁護士が提案してくれて」
部長は小さな声で、先輩後輩だから少し心配なんだろ、と付け足した。部長は私が羽柴先輩とつながりがあることを、今のところ伏せてくれている。それが私にとっては非常にありがたいことだった。さすが大手の人事部の部長だ、空気が非常に読めている。
「みなさんはどうなさるんですか?」
「もちろん同行するよ。宮坂さんがお店予約してくれるって」
宮坂さんを見ると、宮坂さんは嬉しそうに笑ってこちらにやってきた。
「柊さんが最初だけでも来ないと歓迎会って言う体が成り立たないのよね。もちろん来てくれるわよね? 少し顔出すだけでいいから」
少しだけでいい、は心からの言葉のようだ。私は苦笑し、小さく頷くと、
「参加させていただきます」
と言った。
断るのも変だ。ビジネスライクなお付き合い。そう、これはただの仕事の飲み会。断る理由もない。
私はドキドキする胸を抑え、できるだけ冷静に自分のデスクに座った。
ただ、その日一日中、まったく仕事中も落ち着かず、ミスを連発するのだけど……。
「みゆ~、食事中はスマホ禁止」
父に言われて、私はスマホの画面を閉じる。
いけない、いけない。最近いつも見ているから、この調子で注意されることが増えた。
「あ、うん。ごめん」
「大丈夫なの? トラブルとかある?」
「……いや」
「なんか、いつもものすごい顔でスマホ睨んで検索してるよね。困ったことがあったらパパに言うんだよ。いざとなったら職権乱用してでもみゆのこと守るから……!」
「ありがと。でも遠慮しとく」
ものすごい顔をしていたのは、間違いなく羽柴先輩のせいだ。
「そういえば、ホウオウ本社は警視庁の近くだよ。その割に意外に会わないよね」
「へぇ」
話し半分に聞きながら、私は羽柴先輩の事務所の場所も会社の近くだと言うことを思い出した。その割に会わないでいられている。なんていうか、複雑な気分だ。
ごちそうさま、というと、いつも通りにお弁当を作り、家を出た。
結局二か月、あの日からだと二か月半、羽柴先輩とは顔を合わせていない。まぁ、羽柴先輩もあれだけ忙しければ、ホウオウに顔を出すことも少なそうだ。そう思って、私の心は少し落ち着いてきていた。
それはその矢先のことだった。
「今日、羽柴先生がくるって!」
朝から羽柴ファンの女性の元気な声が耳に届く。ちなみにファンのうちの一人、宮坂さんは私と同じチームだ。
驚いてそちらを見ると、少し不審そうにこちらを見られた。ぱ、と慌てて顔を戻す。ただ、心臓はこれまでにないほど大きく、速く脈打っていた。
(今日、来る……)
最近すっかり安心しきっていただけに、頭が混乱する。その時、部長がこちらにやってきた。
「柊さん。まだ入社してから羽柴弁護士にご挨拶してないよね。今日の夜の予定ある?」
「……いえ、とくにはありません」
「打ち合わせのあと、歓迎会もかねて食事でも行きましょうって羽柴弁護士が提案してくれて」
部長は小さな声で、先輩後輩だから少し心配なんだろ、と付け足した。部長は私が羽柴先輩とつながりがあることを、今のところ伏せてくれている。それが私にとっては非常にありがたいことだった。さすが大手の人事部の部長だ、空気が非常に読めている。
「みなさんはどうなさるんですか?」
「もちろん同行するよ。宮坂さんがお店予約してくれるって」
宮坂さんを見ると、宮坂さんは嬉しそうに笑ってこちらにやってきた。
「柊さんが最初だけでも来ないと歓迎会って言う体が成り立たないのよね。もちろん来てくれるわよね? 少し顔出すだけでいいから」
少しだけでいい、は心からの言葉のようだ。私は苦笑し、小さく頷くと、
「参加させていただきます」
と言った。
断るのも変だ。ビジネスライクなお付き合い。そう、これはただの仕事の飲み会。断る理由もない。
私はドキドキする胸を抑え、できるだけ冷静に自分のデスクに座った。
ただ、その日一日中、まったく仕事中も落ち着かず、ミスを連発するのだけど……。
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