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名無しの(仮)ヒーロー

海月三五

雨降って地固まる 8

 
 12月24日、クリスマスイブの日。ギブスが取れて退院となった。
 病室で荷物を片付けた後、大事を取って車いすに座り、膝の上には美優がちょこんと乗っている。
 
「さあ、夏希さん。家に帰りましょうか」
「はい」

 美優の誕生日に婚姻届けを出し、晴れて、私は朝倉夏希になり、娘は朝倉美優になった。
 朝倉先生に車いすを押してもらい病室を後にしアパートではなく、朝倉先生の高級マンションに向かう。

 将嗣とは、話し合いをして美優の面会を月2回と決めて親子の時間を作る事にした。
大きくなるにつれ子供の都合も出て来るだろうから、その都度相談して話し合い、みんなで美優の幸せを考えて、一番良い答えを探して行く。

 やっと1歳になったばかりの私たちの天使、美優の人生はまだまだこれから。

 美優のパパになった朝倉先生の車にはチャイルドシートも積まれている。そのチャイルドシートの中で美優は夢の中。

「ふふっ、可愛い。やっと親子3人一緒に居れますね」

「ああ、待ち遠しかったよ」

 朝倉先生のマンションに到着して地下の駐車場から車いすに乗って部屋まで移動。その間も私の膝の上でスヤスヤ眠ったままの天使の寝顔を見つめる。

 部屋に入ると朝倉先生が美優を抱き上げ、ベビーベッドにそっと寝かせた。
「次は、夏希さん」
 朝倉先生のイケボを耳元で聞き、ふわりとお姫様抱っこをされて、寝室のベッドに下ろされた。
 病院から退院してきたからベッドに居るのは不自然じゃない。けれど、入籍してから初めてのシチュエーションにドキドキしてしまっている。

「夏希さん、手を出して」

 朝倉先生は私の左手をそっと持ち上げ預けて置いたピンクダイヤの指輪を左手の薬指に嵌めてくれた。そして、その指にキスを落とし、艶のある瞳が私を見つめる。

「足の痛みは、大丈夫?」

「痛みはないの。筋力が落ちちゃったから無理しないように言われているだけ」

「それなら良かった。無理はさせないよ」

 朝倉先生が私の顎に手を添え、唇が重なる。重なった唇から熱が伝わりだんだんと体が熱くなっていく。甘い息が上がり、その熱に溶かされていくよう。
 朝倉先生のウッディな香水の香りに誘われ、髪に手を梳き入れ、たくさんのキスをねだる。啄むようなキスも深いキスも私を夢見心地にさせる。そのキスが耳にも首筋にもされて、ゾクゾクと熱が腰に溜まり出す。
 
 そして、私たちは、ベッドの上で揺蕩うように甘い口づけと情熱を交わした。

一年前のあの日、陣痛で苦しむ私を助けて、美優がこの世に産まれ出る時を見守ってくれた。
 その時は名前も知らなかった私のヒーロー。
 その後、偶然の出会いはきっと運命。そして、運命に導かれ何度も何度も助けてくれた。
 運命の輪の中で、引き合い求め合い、これからも一緒に歩んでいく。
 私だけのヒーロー。

 朝倉先生を見つめる。
 優しい瞳が私を見つめ返す。
 
 私の左手を手に取り薬指にキスを落とし、指を絡めた。
 絡められた指にドキッと心臓が跳ねる。
 艶を含んだ瞳が私を見つめ、唇が動いた。

 「夏希さん、愛してる」

 「翔也さん……私も愛してる」





【終わり】



 











 
 

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