名無しの(仮)ヒーロー
雨降って地固まる 3
大小のピンクダイヤモンドが二つ寄り添っているその指輪は、まるで美優と私のようで、朝倉先生の顔を見ると「そうだよ」と言っているように頷いた。
指輪の嵌った左手を右手で支えながら目の高さに持ち上げ、マジマジと眺めていると、徐々に実感が湧いてきた。
「翔也さん、ありがとうございます」
「出来れば、素敵なレストランでプロポーズをしたかったのですが……。入籍を美優ちゃんの誕生日にしようかと思って早めてしまいました。これで、美優ちゃんには両親が揃った家庭が出来ます。誰が何を言っても夏希さんから美優ちゃんを取り上げるような真似はさせません」
朝倉先生の気持ちが温かくて、こんなに大事に思ってもらえるなんて、言葉にならない想いが胸の奥から溢れて、せっかく治まった涙が、はらはらと頬を伝わる。
「ありがと……う……ございます」
将嗣のお母さんに親権を取り上げる話をされた時にパニックになった私が、助けを求めたら仕事で忙しいのに戻って来てくれた朝倉先生。
その後もきっと、今後のために色々考えてくれて私と美優のためにプロポーズをしてくれたんだ。
「夏希さん、前にも言いましたが、私は美優ちゃんが産まれた時から一緒にいるんです。美優ちゃんは、我が子同然ですよ」
朝倉先生が優しく微笑んだ。全てを包み込むような優しい微笑み。
その笑顔がとても好きだな。と思った。
左手の薬指に嵌った指輪と花瓶に飾られたチェストの上のバラの花束。
市民病院の白い病室が一気に華やいで幸せな気持ちになった。
「あの、指輪がピッタリで……。良くサイズがわかりましたね」
「ピッタリで良かった。先日、夏希さんの左手を触った時に確認したんですよ」
「んっ 」
そう言えば、福島の病院でなんだかいやらしい触り方をされた……。
えーっ! あんな触り方をしながら密かに指輪のサイズを確認していたなんて!?
ホントは、タラシ? 手練れ?
「翔也さんのエッチ!」
あっかんべー! っと、舌を出した。
すると、翔也さんは、私の左手を手に取りサワサワと撫でたり指を絡めたり……。あの時、みたいに触られて、ドキドキし始めた。
私の動揺をよそに、翔也さんは、私の左手を持ち上げて自分の口元に運び、手の甲にキスを落とし、私の方をチラリと艶を含んだ視線を送る。
イケメンのお色気攻撃ズルイ。
絶対に顔が赤くなっているはずだ。自分で火照っているのがわかる。からかわれているのに手を引く事も出来なくて、艶の含んだ視線を外せない。
翔也さんは、にこっりと微笑むとペロリと私の指先を舐めて、指を口に含み舌先で嬲り出した。
その様子が、病室中で酷く背徳的で淫猥な感じがする。
指先を舐められただけなのに背中までゾクゾクと甘い電気が走る。
「ご、ごめんなさい。降参です」
「んっ? 私は、エッチと認定されましたからね」
朝倉先生は、クククッと笑う。
” もう、本当にエッチだし、エロだよ! ” と、言いたいけれど危険なので言わないでおいた。
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