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名無しの(仮)ヒーロー

海月三五

一難去ってまた一難 11

 入院3日目の朝、面会時間が始まって直ぐに朝倉先生が来てくれた。
 「おはよう」とイケボが聞こえ、手に持っていた紙袋からフラワーのアレンジメントを取り出した。
「わー!かわいい!」
そのアレンジメントは、ピンクや黄色の色鮮やかなバラがあしらわれて、真っ白で無機質な病室が明るくなった。

「プリザーブドフラワーだから、手入れもいらないって、お花屋さんにススメられたんだ」

「嬉しい。ありがとう。おかげで病室が明るくなりました」

 私が笑顔で答えると、朝倉先生は、顔を曇らせ言葉を紡いだ。

「実は、急に仕事が入って、今日、帰らないといけなくなってしまった」

 少し寂しく思ったけれど、仕事も忙しいハズなのに遠くまで心配して駆け付けて来てくれただけでも感謝したいし、病院の転院後の美優の子守まで引き受けてくれている。これ以上の我儘は言えない。

「寂しいですが、仕方ないですね。大人しく治療に専念します」

「私も寂しいよ」

 朝倉先生の手が私の左手に重なった。

「痛い?」と聞かれたけれど痛みなんて無くて、重なる手が指に絡んだり撫でたり動きが何だか官能的でドキドキしてしまう。
 首を傾けて覗き込まれた顔も艶があって色っぽい。

 朝の病室で、変な想像をして一人でドキドキしている私って……。
 やばい!

 もう、絶対に顔が赤くなっている。
「し、翔也さん……。なんだか、触り方がえっちです!」

 私が、抗議の声を上げると朝倉先生は ククッと笑っている。

「人の事を揶揄って、ひどーい!」
 頬をぷくぅっと膨らませていると

「夏希さん、ずっと私に遠慮して話しているから……」
 とまだ、クククッと笑い続けていた。
 そうして、艶のある瞳が私を見つめ、軽いキスを落とす。

「夏希さん、私は焼きもちやきなんですよ」
 
「えっ?」

 私が、驚いていると、もう一度、キスを落とされた。
 唇を食むようなキスをされて、頭がボ―っとする。

「夏希さん、早く元気になってくださいね」
 朝倉先生のイケボが耳に響いて、ボーっとしながら「はい」と呟いた。

「そろそろ、帰ります」

 朝倉先生が病室を出て行くのを寂しく思いながら掛ける言葉を慌ててさがし、声を掛ける。
 
「翔也さん……ありがとう」
 結局、気の利かない言葉しか出て来なくて自分の色気の無さにガッカリしながら、朝倉先生を見送った。

 すると、ほぼ入れ違いのタイミングで、将嗣のお母さんが入って来た。

「こんにちは、夏希さん。今日は、お話があって伺ったの」

 

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