名無しの(仮)ヒーロー
労多くして功少なし 9
私が、朝倉先生への想いを貫く事で、悲しませてしまう人がいる。
そのことを心に留めて、でも大切なモノを失くさないようにしたい。
「私、既に両親を亡くしているので、将嗣さんのお父さんとお母さんが美優にとっての唯一のおじいちゃん、おばあちゃんなんです。これからもよろしくお願いします」
この言葉が将嗣のお母さんが欲しかった言葉ではないと分かっていたけど、目の前にいる将嗣のお母さんをこれ以上悲しませたくなくて言葉を紡いだ。
将嗣のお母さんが独り言のようにポツリと呟いた。
「将嗣は、何を間違えてしまったのかしらね」
その言葉の意味を色々考えてしまう。
息子の結婚に対して言っているのか、私との付き合いに対して言っているのか……。
それ以上、聞き出すことも憚れて、切なかった。
親として、息子の事を思えば、元は将嗣が悪いにしても子供に対して認知をして、私に求婚したにも関わらず、他に好きな人がいるという理由で断れれば、私が浮気女のように写るのかもしれない。
誰かを大切に思えば思うほど時として、歪んで見えることがある。
それが恋愛でも親子の愛でも……。
小皿を運びながらキッチンから出てリビングに移ると紗月が美優を抱っこして、「夏希ちゃん」と私を小さな声で呼んだ。「なに?」と小さな声で返すと「大丈夫?」と聞かれて「大丈夫だよ」と返した。
紗月に抱かれて少し眠たげな美優を見ていると何があっても頑張れそうな気がした。
少し重い空気の中、お昼ご飯の支度をが終わった頃に将嗣がお父さんの部屋から戻ってきた。
入って来た時、将嗣の表情は憂鬱そうに見えたけど、私と視線が合うとパッと表情を明るくして言う。
「おっ! 母さんの漬物久しぶりだな」
とテーブルに並んだおかずを見渡した。
「他のもあるのに……」
お母さんは、不満を口にしながらも嬉しそうに台所とリビング行き来してご飯を並べた。
お母さんの手作りの郷土料理の汁物「こづゆ」には干し貝柱やこんにゃく、そして地野菜が入っていてお醤油味、仕上げに針生姜が一番上に飾られていた。他には、炊き込みご飯と煮物、そして、馬刺しが真ん中に置かれ、お昼ご飯にしてはかなり贅沢な感じになった。
みんなで席に付き「いただきます」と食べ始めた。
「夏希、お待ちかねの馬刺しだよ。いっぱい食べていいんだからな」
将嗣が、いたずらっ子のような瞳で私を揶揄う。
「福島に来たら食べさせてくれるって約束だったものね」
私は負けずに言い返すと将嗣は真剣な顔をして、ジッと私を見つめた。
「な、なに?」
焦って、言うと
「絶品手打ちそばの店が残っているな」
と一言。
「もう、人の事を揶揄って!」
私が将嗣に文句を言っていると紗月やお母さんがクスクス笑っていた。
「あ、食事中にうるさくして、すいません」
お母さんの前でバカなやり取りをしてしまい慌てて謝った。
「いえ、いいのよ。仲が良いのね」
ホホホッと、満足げに笑われると含みを感じて居心地が悪い。
「美優、おばあちゃんが炊いてくれたお野菜美味しいねー」
誤魔化し気味に美優に声を掛け、御出汁だけで煮た野菜をスプーンで潰しながら食べさせる。
嫁姑問題の話をよく聞くけれど、どんなに良い人でも結婚相手の御両親となれば気を使う。世の中のお嫁さんは、こんな感じなのかな? もっと凄かったりするのかな?
なかなか大変そうだと実感した。所詮、お嫁さんは、他所から来た人だから馴染むまでに時間が掛かるのだろう。私はお嫁さんではないけどね。
将嗣をちらりと見みるとまったく何も考えていない感じでモグモグとご飯を食べている。自分の親だから物の言い方の慣れているから気が付かないのだろう。
結婚って、二人の問題のはずなのに二人の後ろに今まで歩んできた人生を支た人たちも絡んで色々な事が起こるんだ。今まで、深く考えた事が無かったな。
そのことを心に留めて、でも大切なモノを失くさないようにしたい。
「私、既に両親を亡くしているので、将嗣さんのお父さんとお母さんが美優にとっての唯一のおじいちゃん、おばあちゃんなんです。これからもよろしくお願いします」
この言葉が将嗣のお母さんが欲しかった言葉ではないと分かっていたけど、目の前にいる将嗣のお母さんをこれ以上悲しませたくなくて言葉を紡いだ。
将嗣のお母さんが独り言のようにポツリと呟いた。
「将嗣は、何を間違えてしまったのかしらね」
その言葉の意味を色々考えてしまう。
息子の結婚に対して言っているのか、私との付き合いに対して言っているのか……。
それ以上、聞き出すことも憚れて、切なかった。
親として、息子の事を思えば、元は将嗣が悪いにしても子供に対して認知をして、私に求婚したにも関わらず、他に好きな人がいるという理由で断れれば、私が浮気女のように写るのかもしれない。
誰かを大切に思えば思うほど時として、歪んで見えることがある。
それが恋愛でも親子の愛でも……。
小皿を運びながらキッチンから出てリビングに移ると紗月が美優を抱っこして、「夏希ちゃん」と私を小さな声で呼んだ。「なに?」と小さな声で返すと「大丈夫?」と聞かれて「大丈夫だよ」と返した。
紗月に抱かれて少し眠たげな美優を見ていると何があっても頑張れそうな気がした。
少し重い空気の中、お昼ご飯の支度をが終わった頃に将嗣がお父さんの部屋から戻ってきた。
入って来た時、将嗣の表情は憂鬱そうに見えたけど、私と視線が合うとパッと表情を明るくして言う。
「おっ! 母さんの漬物久しぶりだな」
とテーブルに並んだおかずを見渡した。
「他のもあるのに……」
お母さんは、不満を口にしながらも嬉しそうに台所とリビング行き来してご飯を並べた。
お母さんの手作りの郷土料理の汁物「こづゆ」には干し貝柱やこんにゃく、そして地野菜が入っていてお醤油味、仕上げに針生姜が一番上に飾られていた。他には、炊き込みご飯と煮物、そして、馬刺しが真ん中に置かれ、お昼ご飯にしてはかなり贅沢な感じになった。
みんなで席に付き「いただきます」と食べ始めた。
「夏希、お待ちかねの馬刺しだよ。いっぱい食べていいんだからな」
将嗣が、いたずらっ子のような瞳で私を揶揄う。
「福島に来たら食べさせてくれるって約束だったものね」
私は負けずに言い返すと将嗣は真剣な顔をして、ジッと私を見つめた。
「な、なに?」
焦って、言うと
「絶品手打ちそばの店が残っているな」
と一言。
「もう、人の事を揶揄って!」
私が将嗣に文句を言っていると紗月やお母さんがクスクス笑っていた。
「あ、食事中にうるさくして、すいません」
お母さんの前でバカなやり取りをしてしまい慌てて謝った。
「いえ、いいのよ。仲が良いのね」
ホホホッと、満足げに笑われると含みを感じて居心地が悪い。
「美優、おばあちゃんが炊いてくれたお野菜美味しいねー」
誤魔化し気味に美優に声を掛け、御出汁だけで煮た野菜をスプーンで潰しながら食べさせる。
嫁姑問題の話をよく聞くけれど、どんなに良い人でも結婚相手の御両親となれば気を使う。世の中のお嫁さんは、こんな感じなのかな? もっと凄かったりするのかな?
なかなか大変そうだと実感した。所詮、お嫁さんは、他所から来た人だから馴染むまでに時間が掛かるのだろう。私はお嫁さんではないけどね。
将嗣をちらりと見みるとまったく何も考えていない感じでモグモグとご飯を食べている。自分の親だから物の言い方の慣れているから気が付かないのだろう。
結婚って、二人の問題のはずなのに二人の後ろに今まで歩んできた人生を支た人たちも絡んで色々な事が起こるんだ。今まで、深く考えた事が無かったな。
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