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名無しの(仮)ヒーロー

海月三五

労多くして功少なし 4

 
 ある日、突然、将嗣が私のぜんぜん知らない人と恋に落ちて結婚する事があっても私は笑顔で「おめでとう」と言ってあげられる事ができるのだろうか? 少し複雑な気持ちになった。

 自分には朝倉先生という恋人が居るくせに将嗣が他の人と結ばれると思うと嫌な気持ちになるなんて、自分はどこまで貪欲で浅ましいのかと、情けなくなる。

 桐本さんの店を出て駐車場に向かって、元来た道を歩き出す。
「じゃ、ドライブしながら宿に向かうか?」
「えっ、将嗣は御飯大丈夫なの?」
 心配して声を掛けると将嗣は優しい瞳を向けて私の頭をクシャと撫で、さっき桐本さんのお店で貰った袋を持ち上げニカッと笑う。
 「これ、やっつけないとな」
 パンが悪いとは思わないけど、自分たちだけお店で食事をさせてもらって申し訳ないなと思った。

「園原さん、やっぱモテるわな。うん。わかる」
 紗月が感心したように言った。

「紗月ちゃんが言うほど、そんなモテないよ。好きな人に振り向いてもらえないなら意味ないし、今は美優ちゃんに夢中だしね」
と笑ってくれたけど、それが少し寂しそうに見えた。

 将嗣は、朝倉先生と結婚を前提にお付き合いをしているという話をしてから以前のような強引さは見せず、一歩引いた態度で接してくれている。
 ただ、時折見せる切なげな表情を見るとどうして良いのか分からなくなってしまう。

 二人の関係は美優を挟んで切っても切れないものになっているからこの距離間がおそらく正しいのだろう。
 手を伸ばせば触れる距離にいながら触れてはいけない微妙な距離だとしても……。

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