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名無しの(仮)ヒーロー

海月三五

待てば海路の日和あり 6


「お風呂ありがとうございました」

「ちょうど、ごはん出来たよ」

 再びルームウエアを着込んで、リビングルームに戻るとお二人分の朝ごはんが用意されていて、パストラミビーフのバケットサンドイッチとグリーンサラダにわかめのスープで朝からしっかりメニューでビックリしたが、急にお腹が空いてきた。

「さあ、食べよう」
 と、朝倉先生がキッチンからマグカップを2つ持って来て、そのうちの一つを私の目の前にコトリと置いた。

「翔也さん、ありがとうございます。いただきます」

 食事を用意してもらうなんて幸せだなぁ。
 そう、昨晩の食事も作ってもらっちゃったし、美優のお世話もいっぱいしてもらっちゃって、甘やかされているなぁ。
 サンドイッチにかぶりついていると朝倉先生と視線が合った。
 ちょうど、大口を開けて食べているところを見られてしまってバツが悪く照れ笑いで誤魔化す。

「美味しそうに食べてくれて嬉しいよ」

「本当に美味しいです。私、くいしんぼうなので」
 と、自己申告しておいた。
 が、ポヨポヨのお腹を思い出し少し反省。
 せめて、コーヒーはブラックで飲むことにした。
 マグカップからコーヒーを口に流し込むと、程よい酸味と苦味、そして甘味を感じる。

 幸せ気分で味わっていると、不意に
「体きつくない?」
 と聞かれ吹き出しそうになった。
 ゴフッ……。
「だ、大丈夫です」

 そう、思い出すと赤面するほど、あっちこっちにキスマークがつくぐらい情熱的だったから、朝起きた時は、体がミシミシしている気がした。
 でも、お風呂に入ってきたので体は楽になった。
 体の事を気遣ってくれる優しさは、素直にうれしかったけど、面と向かって聞かれるのは、なんとも恥ずかしい……。
 少し、イヤらしい事を考えてしまったのを
 えへへ、と笑ってごまかした。

 朝食が終わった後も三人でのんびり窓からの日差しを浴びて日向ぼっこをしながら、美優のお転婆に目を細めている朝倉先生を見ていると、まるで本当の親子のようだなと思った。

 実際のところ、人との関係は血縁よりも一緒にいる時間や愛情の掛け方で関係が深まっていくと思う。結局、血が繋がっていようがいまいが子供には愛情を掛けて良い親子関係を築きましょうという事なんだと思う。

「どうしたの」

 朝倉先生をボーっと眺めていたら声を掛けられ、私はずっと見つめていた事がバレてしまったようで気恥ずしくって、「なんでもないよ」と首を横に振り視線を逸らした。

 すると、朝倉先生が手を伸ばし、だんだんと私の頭に手が近づいて、頭を撫でられるのかな? と、思っていたら……
 パシッ!
「いったぁぁ」
 ナニ? なにが起きたの??
 私は突然デコピンを喰らい、おでこを抑え、涙目になりながら朝倉先生を見た。

「言いたい言葉を飲み込まずに伝え合う事、それが出来ない悪い子にはお仕置きしないとね」
 と、いたずらっぽく笑う。

「もう、痛かったんだから」
 涙目で頬を膨らませ怒っていると朝倉先生は私をそっと抱き寄せ、そっと囁く。

「じゃあ、隠し事は無しだよ」
 

「さっきのは、幸せだなって思いながら翔也さんを見ていたから恥ずかしかったんです」

「ごめん、ごめん」
 おでこにチュッとキスをされた。
 うひゃー。その攻撃は反則です。

「夏希さんの香りが、ウチの香りになっている」
 髪に手を添えられ、何だかくすぐったい気持ちになる。

「翔也さんのシャンプーを使ったので……」
 私がそう言うと髪の毛の間に指を差し込み撫でるように髪を梳かれ、チュッと軽いキスを落とされた。

 切れ長の優しい瞳が、私を見つめる。その目に吸い込まれそうでドキドキしてしまう。
 ホワッと朝倉先生のシャンプー香りが強くなり、その香りに包まれながらじゃれ合うようにキスを返した。

「私、我儘な事を言って困らせてしまうかもしれませんが、翔也さんと幸せな時間を過ごしていきたいと思っています」

 私がそう言うと、朝倉先生の腕に力に抱き留められた。
 胸に顔を寄せ、朝倉先生の心音を聞いているととても安心する。
 朝倉先生と私が抱き合っているのを見て美優がオモチャを放りだし、ハイハイをしながら近づいてきた。
 朝倉先生が手を伸ばし、美優も抱きかかえ、そっと呟く。

「三人で幸せの時間ときを刻もう」

 リビングで日向ぼっこをしているだけの時間ときが、温かくて特別な時間ときになった。
 なんでもない日常が一番素敵で特別なのかもしれない。
 
 


 

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