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名無しの(仮)ヒーロー

海月三五

待てば海路の日和あり 4

 
「眠ちゃったね」
 美優のかわいい寝顔に朝倉先生と顔をほころばせた。
 そっと抱き上げてベビーベッドに下ろし暫くスヤスヤと気持ち良さそうに眠る姿をふたりで眺める。
 夜泣きの時期も終わり、最近は、夜眠ると朝までグッスリと眠ってくれて、すごく助かっている。

 美優の様子に安心して食事に戻る。朝倉先生がキッチンに行き、ふたつのワイングラスとマネキネコのスパークリングワインを持ってきた。
 それは、ふたりの約束。
 ワインオープナーでコルクが外され、ワイングラスに柔らかい色合いのゴールドの液体がシュワシュワと注がれる。
 グラスの向こうで朝倉先生が柔らかい微笑みを浮かべていた。
 「乾杯」とグラスを合わせ、ワイングラスの向こうに朝倉先生が見えると嬉しいような気恥ずかしいような感覚になりながらマネキネコのスパークリングワインを口に含んだ。口の中で炭酸が弾け、辛口のシトラスやリンゴを思わせるフルーティーな味わいの泡が爽やかに広がる。

 カルパッチョにも良く合い美味しい。
 朝倉先生の作ってくれたパスタもクリームパスタなのにしつこくなく、それでいて濃厚。
 お店で出てきても何ら遜色ない出来栄えに舌鼓を打つ。

「パスタおいしいです。作り方を教えてもらって家でチャレンジしたい
 
「レシピをメモして置くよ。それと、いつでも作ってあげるよ」

 この後の事に期待して胸を高鳴らせているのは私だけではないはずだ。絡んだ二人の視線が艶めき、アルコールのせいか顔に火照りを感じる。
 食事を終えて残りのワインを飲み干すと落ち着かない気持ちなり、それを誤魔化すように片付けを始める。
 
食べ終わった食器をキッチンに運び、洗い物を始めると、朝倉先生がキッチンにやってきた。

「食洗器の使い方わかる?」

「この機種は初めてなので教えてください」

「ココを引き出すと洗剤が入れられるから、後は、並べてスイッチを……」
と肩が触れた。
 ドキンと心臓が跳ねる。
 朝倉先生のオーデトワレのラストノートの香りに包まれた。

「翔也さん……」

 そう呟くと体の芯に火が灯る。
 お互いの視線が絡み朝倉先生のいつも優しい瞳が、今は男の艶を含み私を捉える。
 手を掴まれて、その手を朝倉先生の胸の上に誘導された。その心臓がドキドキと跳ねているのがわかった。
 そして、朝倉先生の声が聞こえる。

「冷えた心を溶かして動かしてくれたのは、夏希さんだよ」

 その言葉に私の心は熱くなり、朝倉先生の背中に手を回しギュッと抱きしめた。
 朝倉先生の胸に耳を当て心臓の鼓動を聞いた。
 そして、背の高い朝倉先生を見上げてねだる。

「翔也さん、キスして」

「キスだけで止まらなくなりますよ」

「今日は、私に誘惑されてください」

「素敵なお誘いですね」

「満月が綺麗ですから……」

「夏目漱石ですね。我君ヲ愛ス」

 クスリと二人で笑い合って、唇を重ねた。甘く熱く蕩けるような口づけで、息があがり、潤んだ瞳で朝倉先生をみつめた。
 唇が離れた事が寂しくて、もっと欲しくなる。
「翔也さん」
 と呟くと、再び唇が重なった。頭の角度を変え、貪るような深いキスをする。舌を絡め合い口に溢れる唾液を飲み込むと甘いため息が出た。
 
そして、二人でベッドルームに移動した。
 

 

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