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名無しの(仮)ヒーロー

海月三五

無理が通れば道理が引っ込む 8

 
 チェストの上の写真立てには、美優が産まれた時の写真を始め、美優の日々の成長が分かる数枚の写真が飾ってあった。
 その写真を見つめていると朝倉先生と初めて会った時や、再会した時、助けてもらった時の事を思い出す。そして、今、朝倉先生に会えない時間をとても寂しく感じた。
 大丈夫だよと言って抱きしめて貰いたい。グラグラと揺れる自分を支えて欲しかった。

 私は、携帯電話を手に取りラインアプリを立ち上げる。
 『こんばんは。お忙しいですか?』
 上手く甘えられず、気の利いた文章を送れない自分をもどかしく思いながら送信ボタンを押した。

 すぐに朝倉先生から着信のコール音が鳴り、少し緊張しながら画面をタップすると朝倉先生のイケボが聞こえて来た。
『こんばんは、夏希さん』
 その声にホッとする。

「こんばんは、お忙しいのに ごめんなさい」

『大丈夫だよ。ちょうど休憩していたから、どうしたの?』
 と、訊ねられ何から話していいのか、一瞬言葉に詰まった。

「あの、今度何時会えますか?」

『週末に会いましょう』

 週末に会えると聞いて胸が高鳴る。そして、携帯電話を持つ手にギュッと握りしめながら、勇気を出して口に出した。

「マネキネコのワイン飲みに行ってもいいですか?」
と、自分から誘うような言葉に胸がドキドキと高鳴る。

『はい、お待ちしていますよ』
 朝倉先生の声が耳をくすぐる。
 
 朝倉先生のお宅に週末遊びに行く約束をして、電話を切った後も、まだ心臓がドキドキしている。
 耳に残る甘い声、朝倉先生を思いながらチェストの上にある写真を見つめた。


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