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名無しの(仮)ヒーロー

海月三五

無理が通れば道理が引っ込む 2

 
 一般的に考えて、子供の父親と復縁することが良いと思うのは、仕方のない事なのかもしれないが、それで、私の気持ちは置き去りにしたまま復縁しても上手く行くようには思えない。

「まあ、夏希ちゃんの気持ちは、作家先生にあるんだからしょうがないね」
 
 紗月に少し呆れたように言われて、やっぱり実の父親と復縁した方が良いという事なんだろうな、と思った。
 少し切ない気持ちになりながら、美優の事を眺め、子供にとっての一番の幸せを考えているはずが、一人よがりになっているのではと不安になる。

 不意にチェストの上に置いてあった携帯電話が着信を告げた、噂をすれば影とは良く言ったもので、散々話題に上っていた将嗣からだった。
 紗月に「ちょっとごめんね」と声を掛け、電話に出ると

「夏希、認知の件で話があるんだけど、これから行っていいかな?」

「えっ!これから? 今、いとこが来ているんだけど」

「顔を見たらすぐに帰るよ。ますだ屋の生クリームどら焼きがあるんだ」
 
「えっ? あのどら焼き?」

「そう、あのどら焼き、10分で行くから待ってろよ」
 と返事も聞かないうちに電話は切れてしまった。

「紗月、ごめん。元カレがこれから来るって」

「ウソ、マジ、美優パパの顔を拝んじゃお!」
 
 将嗣と二人きりで会うよりマシなのかな?
 紗月がいる以上、この前みたいにいきなりキスをする事もないだろうし、
と、ポジティブ思考でいると ピンポーン!とチャイムが鳴った。

 ドアを開けると予告通り将嗣現る!

「いらっしゃい。毎度いきなりですね」

「えっ? 電話したじゃん。これ、ますだ屋の生クリームどらやき」

 ますだ屋の生クリームどら焼き、そんじょそこらの類似品とは別物の絶品どら焼き。甘すぎず、フワフワの食感。生クリームと粒あんの絶妙なバランス。
 くそぉー。毎度毎度、美味しいものを……。
 玄関で追い返そうと思っていたけど、しょうがない。
「ドウゾ、オアガリクダサイ」

「こんにちは。私、夏希ちゃんのいとこの紗月です。元カレさん」
 紗月がにこやかに将嗣に挨拶をしている。

「夏希の元カレの園原将嗣です」
 将嗣が挨拶を返した。いや、二人とも「元カレ」表記オカシイでしょう。

 仕方ないので椅子をすすめて、お茶を入れた。
「夏希の入れてくれたお茶は美味しいなぁ」
 将嗣はわざとらしい程、お茶を堪能している。
 まあ、お茶は美味しく入れられるけど。

「このどら焼き、こんなに美味しいの初めて食べた」
 紗月は、将嗣のお土産のどら焼きに舌鼓を打つ。

 なに、このカオスな状態。

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