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名無しの(仮)ヒーロー

海月三五

無理が通れば道理が引っ込む 1

 
 昨日、朝倉先生の家であった事を思い返すと はにゃにゃにゃ って、なる。
 次、朝倉先生の家に行くときは、お泊りで♡なんて、ふふっ。
 一人で甘い時間を脳内再生させては、ニヤニヤしながら、美優と遊んでいるとピンポーンと玄関のインターフォンが鳴った。
「はーい」と出ると、いとこの紗月だった。

「リンゴもらったからお裾分けだよ」

 ありがとうと受け取り、早速切り分け、美優にすりおろしりんごを食べさせてあげる。
 
「ねえ、あの後、どうだった?」

 と、聞かれた。紗月には、仕事の打ち上げの時に美優を見て貰った事があり、仕事が上手く言った事、朝倉先生が良い人だったことを報告してあった。
あの後とは、その後の進展を聞いているわけで……。

「それが、色々あって朝倉先生と結婚を前提としてお付き合いする事になりました」

と、ちょっと、浮かれて報告した。
紗月は満面の笑みを浮かべて私にハグをする。

「やったね! 結婚を前提としてなんて素敵。で、美優の事もOKなんだよね」

「もちろん。だって、朝倉先生は、なんと、美優の出産の時に立ち会ってくれた人だったんだよ」

 私は、写真立てに視線を送った。

「なにそれ! そんなことってあるの! 運命感じちゃうよね」

 二人でキャッキャッとはしゃいだ後で、私は紗月に相談に乗って貰うべく話を切り出した。

「実は、悩んでいる事があって……」

 それは、元カレ将嗣の事だった。
 偶然出会って、復縁を求められて、美優の認知問題もある。会わないわけにも行かないが気が重い。と紗月にザッと説明する。
 一通り聞き終わった後、紗月から出た言葉は私の考えと違うものだった。

「で、夏希ちゃんは、新しい恋人に気持ちが行っちゃっているから、元カレとの復縁はないってこと?」

「言い方。それじゃあ、私が浮気性みたいじゃない。そもそもは、元カレが結婚していたのを隠して私と付き合っていたのがイケナイんだよ」

「まあね。でも、今、フリーなんでしょう? 元カレのどこがダメなの? 歯医者さんなんて優良物件だし、美優の本当のパパなんだし、子供にしてみたら本当のパパが良いに決まっていると思うんだよね」

 紗月は、イタイところをついてきた。子供の事を引き合いに出されると、将嗣を受け入れず、朝倉先生の事が好きな自分がわがままを言っている浮気女のようにも思えてくる。
 
「でも、一旦終わった恋だったんだよ。裏切られていたのを知って、いっぱい泣いて諦めたんだし。その後、妊娠がわかって、不安な中で出産をして、一人で美優を育てて、大変な時に助けてくれたのが朝倉先生で、朝倉先生の事を好きになるの止めることなんてできなかった」

 感情が高ぶって、涙がブワッとあふれ出した。
「ああ、夏希ちゃん、ごめん。泣かないで、そんなつもりじゃなかったんだよ」

 私は、タオルを顔に押し当て、溢れる涙を拭った。
 母親の感情の乱れを察したかのように美優も泣き出す。
 美優を腕に抱きあげ、なだめながら将嗣の事を思うと複雑な心境だった。

「美優のパパだもん。悪い人じゃないんだよ。でも……」
 
 
 
 

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