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名無しの(仮)ヒーロー

海月三五

和を以て貴しとなす 7

 
 付き合い始めのこの時期に誤解を生むようなことをしたくないから、かくかくしかじか、美優の父親である正嗣の田舎に誘われている事を正直に話した。
 
「ウチは、両親が既に亡くなっているので、両親が孫に会いたいという話を彼に言われるまで気が付かなかったんです。言われてみると、そうだなって思ったんですけど、元カレとその実家に行くのって抵抗があって返事はしていないんです」
 と、告げた後、朝倉先生は困ったような表情をした。

「夏希さん、あなたって人は、素直すぎますね」
 そう言われても意味が解らず首を捻っていると朝倉先生の言葉が続く。
「離婚した彼の実家に彼とその子供、その母親が行ったら、御両親はどう受け止めますか?」

「孫が来た?」
 私の返事を聞いて、朝倉先生は苦笑した。

「夏希さんの事を彼の両親はどう思いますか?」

「あっ! 新しい嫁が来た?」

「そうですね。良い意味で受け入れられれば可愛がられるでしょうし、夏希さんの本意ではなかったにしろ、不倫の期間があるのですから悪い意味でも受け取られる可能性があります」

 漠然と元カレの実家に行くのが気が重いとは思っていたけれど、そこまで考えていなかった。

「夏希さんの場合は、大歓迎されて、お嫁さん候補と勘違いされたのが、そのままの勢いで結婚まで話が進んでも断り切れずに丸め込まれそうで心配だな」

「やだな、朝倉先生いくらなんでもそこまで私、酷くないですよ」

 そう言った私を朝倉先生の瞳が捕らえた。その真剣は瞳に私は吸い込まれたように動けない。

「夏希さん、私は、結構独占欲が強いんですよ」
 と、優しく頬を撫でられドキッとした。

「私の大切な夏希さんと美優ちゃんに例え本当の父親であっても園原さんに近づかれるのは気が気じゃない。それに彼は夏希さんを狙っているようだし」

 朝倉先生の手の平から熱が伝わる、そして、朝倉先生の瞳の中に写る自分を見つけた。

「例え血がつながらなくても 私は、美優ちゃんの父親になりたいと思っている」

 朝倉先生の瞳が優しくカーブを描き、近付いてくると唇が重なった。
 短いキスを落とし、額と額がコツンと合わさる。

「私の心を動かしてくれたのは夏希さんなんだよ」
 
 ああ、どうしよう。
 こんなキュンの波状攻撃。
 これは、キュン死しそう!

「翔也さん、好きです。大好きです。ずっと憧れていました。12月の道端で助けてもらった時から朝倉先生は私のヒーローなんです」

 ああ、もうテンパって自分でも何を言っているのかわからない。
 
 すると朝倉先生が私を抱きしめた。私も厚みのある背中に手を回した。
 心臓の鼓動が早くなる。
 朝倉先生の胸に耳を当てると、朝倉先生の心臓の鼓動もドクドクと早く脈動していた。

「夏希さん」
 耳元に朝倉先生のイケボが聞こえる。
 耳から蕩けそう……。

 朝倉先生の唇が私の唇に重なった。そして、優しく啄むように何度も甘いキスを落とし、私の心を溶かしていく。
 厚みのある背中に回した手にギュッと力を込めた。
 だんだんと、キスが深くなり、唇の間から朝倉先生の舌が私の口の中に忍び込み、口の中から私を撫でた。
 朝倉先生のキスに溶けて、甘い息が上がり体の力が抜けていくよう。それなのに火照ったように熱くなって、心臓がドキドキとしている。
 
「翔也……さん」

名前を口にすると優しい瞳が私を捉える。
朝倉先生の手が私の後頭部を抑えて、ゆっくりとソファーに倒れ込み。
私たちは、愛を交わした。


 

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